日医・松本会長 参院選は「我が国の医療・介護・福祉の未来を問う選挙」 医療財源の確保に決意
公開日時 2025/06/23 07:01

日本医師会の松本吉郎会長は6月22日に開かれた定例代議員会で、「今回の参議院議員選挙は今までの選挙と異なり、我が国の医療・介護・福祉の未来を問う選挙と認識している」と医療関係団体の長として選挙にかける想いを語った。急激な物価高騰、賃上げへの対応に迫られ、医療機関経営が厳しさを増すなかで、医療財源の確保が急務であると強調。「今回の骨太の方針を確実に実施できるよう、夏の参議院選挙、その後に行われる見込みの秋の25年度補正予算編成、さらには年末に向けた予算編成過程における26年度診療報酬改定の財源確保が極めて重要」と意欲を示した。
政府が6月13日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)では、社会保障関係費について「高齢化による増加分に相当する伸びにこうした経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と明記された。原案段階では、経済・物価動向等も高齢化などと同様に自然増に含まれていた。
◎骨太方針 高齢化分とは別枠で賃金対応分を加算に「診療報酬改定に期待ができる書きぶり」
松本会長は、「歳出改革の中での“引き算”ではなく、物価・賃金対応分を“加算する”という“足し算”の論理となったことが非常に重要なポイントであり、年末の予算編成における診療報酬改定に期待ができる書きぶりとなった」、「日本医師会が求めてきた賃金・物価の上昇に応じた公定価格等への適切な反映が明記された。高齢化分とは別枠で賃金対応分等を加算するという意味だと理解している」と述べた。
今春以降松本会長は、自民党や公明党の社会保障制度改などで日本医師会としての訴えを繰り返したことを振り返った。これを受ける形で、国民医療を守る議会の決議採択にもつながった。石破首相にも医療現場の窮状を訴えるなどしてきた。日本医師会の主張が浸透する中で、原案公表後の自民党政調全体会議や公明党など与党内で、「医師会の要望に沿った議論が行われ、社会保障関係費に関する記載が修正された」として、「原案段階から劇的な前進となった」と強調した。
◎春闘の平均賃上げ率5.26%明記で「次期診療報酬改定において念頭に置かれるものと認識」
骨太方針には、「医療・介護等の現場の厳しい現状や税収等を含めた財政の状況を踏まえ、これまでの改革を通じた保険料負担の抑制努力も継続しつつ、2025年春季労使交渉における力強い賃上げの実現や昨今の物価上昇による影響等について、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、的確な対応を行う」とされた。注釈には、2025年春季労使交渉の平均賃上げ率「5.26%」等の数字が明記された。松本会長は、「この数字は次期診療報酬改定において念頭に置かれるものと認識している」と述べた。“税収等を含めた財政の状況を踏まえ”と明記されたことについても言及。「日本医師会が“経済成長の果実の活用”として求めていた税収等の上振れ分の活用の視点が盛り込まれた」との見解を示した。
松本会長は、「著しく逼迫ひっぱくした医療機関の経営状況を改善するため、診療報酬だけでなく、補助金での対応も不可欠。今回の骨太の方針を確実に実施できるよう、夏の参議院議員選挙、その後に行われる見込みの秋の令和7年度補正予算編成、更には年末に向けた予算編成過程における令和8年度診療報酬改定の財源確保が極めて重要だ」と強調した。
◎25年度診療所緊急経営調査への協力呼びかけ「診療報酬改定の強力なツール」
また、診療報酬改定に向けて、日本医師会として25年度診療所の緊急経営調査を実施していることも明らかにした。「本調査の結果は診療報酬改定の議論における強力なツールとなる」として、調査への協力を求めた。
◎日医・江澤常任理事「参院選は分水嶺となる天下分け目の決戦」 26年度改定は「プラス改定強力に求める」
日本医師会の江澤和彦常任理事は代表質疑で、「来たる参議院選挙は、分水嶺となる天下分け目の決戦」と重要性を強調した。医療機関経営が厳しさを増す中で、江澤常任理事は「まずは24年度補正予算を早期に執行するとともに、さらには診療報酬の引き上げのための安定的財源を確保しなければならない。現在の経営危機による医療崩壊を防ぐべく、日本医師会として強く主張する」と述べた。参院後には、「新たに25年度補正予算での対応や期中改定も必要な状況であり、補助金と診療防止の両面からの対応を要望する。さらに、年末に向けて26年度診療集会制の議論が本格化するが、医療経営の危機を打破すべく、予算編成過程において物価高騰、賃金上昇も踏まえたプラス改定を強力に求める」と述べた。
そのうえで、「骨太の方針を踏まえ、参議院選挙、25年度補正予算、予算編成過程における26年度診療報酬改定の財源確保のプロセスが極めて重要であり、全身全霊で取り組む」と強調した。
江澤常任理事は、「診療所も病院も過去に経験のない厳しい経営状況に置かれている。しっかりと医療提供体制が維持できるよう、ひいては、国民の命と健康を守るために直結するため、継続的に取り組む」と説明。「まずは目の先にある参議院選挙を全力を挙げて乗り切って、今後につなげていきたい」と表明した。北海道の野中雅代議員に対する答弁。
このほか、代議員から「釜萢副会長を国政に届けないと明るい未来は見えてこない。30万票と言わずに50万票を目指して一緒に頑張っていこう」などの声があがる場面もあった。