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日医・松本会長 「OTC医薬品の原理・原則を軽視し、経済性に過度に偏った施策は許されない」と表明

公開日時 2025/06/23 07:00
日本医師会の松本吉郎会長は6月22日の定例代議員会で、「医療費適正化の目的のみの、過度なセルフメディケーションやスイッチOTC化を進めることは反対だ」と改めて表明した。「国がセルフメディケーションの旗の下に、最も重要である患者、利用者の安全性やOTC医薬品の原理・原則を軽視し、経済性に過度に偏った施策を行うことは許されない」と断じた。OTC類似薬の保険給付をめぐる質疑の中で、方針の異なる医師会があるとの指摘を受けた東京都の土屋淳郎代議員は、「東京都医師会としてまず、医療費抑制のための手段としてのセルフメディケーションについては明確に反対。ヘルスリテラシーの向上が大前提」と述べた。そのうえで、OTC類似薬の保険給付の見直しによる医療機関経営への影響にも言及。「理念的な話と経営の話ははっきり分ける」必要性を指摘した。

OTC類似薬の保険給付の見直しをめぐっては、自民、公明両党と日本維新の会の3党合意を踏まえ、経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)にも「25年末までの予算編成過程で十分な検討を行い、早期に実現が可能なものについて、26年度から実行する」とされている。

◎「セルフメディケーションは、セルフケアの一つの手段であり、ヘルスリテラシーと共にあるべき」

松本会長は、「スイッチOTC化やセルフメディケーションを拙速に進めることは、自己判断による誤用で重篤な疾患の発見が遅れる恐れがある。特に、高齢者などでは、医師との対話の機会が減少し、病歴や服薬歴の記録が途切れ、診療の精度が落ち健康リスクが高まる」と指摘。また、「適正使用されず、乱用の増加も懸念される。セルフメディケーションは、セルフケアの一つの手段であり、ヘルスリテラシーと共にあるべき。国においては、国民の安心・安全を第一に考えて進めて行っていただきたい」と述べた。

そのうえで、「OTC類似薬を保険適用から除外すると、例えば院内での処置等に用いる薬剤や、さらには薬剤の処方、また在宅医療における必要な薬剤使用に影響することが懸念される。これは絶対に避けなければならない」と強調。さらに、「医療機関にアクセスできても地方やへき地等で市販薬に簡単にアクセスできない地域もあり、十分な留意が必要」と述べた。松本会長は、「日本医師会として、わが国の世界に冠たる国民皆保険制度を歪めることがないよう注視する」と述べた。

◎宮川常任理事 やみくもなセルフメディケーション推進反対の3つの理由示す 

代表質疑では、宮川政昭常任理事が、「一般用医薬品とセルフメディケーションについて、一貫して使用者と国民全体にとって安心・安全であることが最も重要だ。社会を蝕むようなやり方には日本医師会としては反対している。国会議員にも説明し、理解をいただいている」と強調。「日本医師会としては、引き続き、国や製薬関係団体の取り組みを注視し、医会や学会と緊密に連携を取りながら、適切に対応していく」と強調した。

宮川常任理事は、「やみくもなセルフメディケーションの推進、社会保険料の削減を目的としたOTC類似薬の保険適用除外やスイッチOTC化を進めることは、必要な時に適切な医療を受けられない国民が増え、国民皆保険制度の根幹を揺るがしかねないと危惧している」と姿勢を鮮明にした。

問題点としては、①医療機関の受診控えによる健康被害が増加すること、②国民の経済的負担が増加すること、③薬の適正使用が難しくなること―をあげた。

医療機関の受診控えにより、「自己判断で市販薬を選択し、診療を受けないことで、重篤な疾患の早期発見や適切な治療の機会を失って、結果として重症化、慢性化するリスクというものが高まる。これにより、医療費全体の増加につながる可能性は明らかであろう」と指摘した。市販薬が処方薬よりも価格が高いことで、「特に経済的に困窮されている人の負担が増えてしまう。子育て世代への影響も懸念される。医療アクセスが制限されることで健康格差が広がり、結果的に社会全体の健康水準が低下する恐れがある」とも述べた。

また、日本のヘルスリテラシーが国際的に相対的に低いとの調査結果を引き合いに、「医師の診断なしに市販薬を用いることは、誤った薬の使用、健康被害の危険性が高まる。特に高齢者や基礎疾患を持つ人は複数の薬を使用していることが多く、相互作用や副作用のリスクが増大してしまうこともある。また、在宅医療にも様々な影響が出る」と指摘した。

これらに加え、「市販薬の乱用の懸念は非常に重要な社会問題」。日医が国の審議会で一貫して主張した結果、5月に成立した改正薬機法で乱用のおそれがある医薬品の販売方法を見直し、若年者には適正量に限って販売することなどを義務付けることになったが、「問題点はまだ多くある。今後もしっかり対応していきたい」と述べた。

◎高知県・藤田代議員 医師会により異なる方針を指摘「足並みを揃えていくべき時期」

高知県の藤田泰宏代議員が「社会を蝕むセルフメディケーション」と題した質問に対する答弁。藤田代議員は、「日本医師会としてセルフメディケーションに反対するのか、賛成するのか、いま一つはっきりしないために医師会によってはセルフメディケーションを推進するという方針の医師会もある。足並みを揃えていくべき時期だ」と指摘した。

◎東京都・土屋代議員「都医はちょっと誤解されている節がある」 医療費抑制の手段としては明確に反対

東京都の土屋淳郎代議員は、「東京都医師会は、ちょっと誤解されている節があるので、少しコメントしたい」と切り出した。「まず、医療費抑制のための手段としてのセルフメディケーションについては明確に反対する。ヘルヘルスリテラシーの向上が大前提にある話だと認識している」と表明。「国民の健康への意識の高まることは、医師たるものすべての人が望むところだと思っています。国民1人1人の自己実現、自己決定権の話だと思っている」と続けた。そのうえで、「問題は、医療機関の経営に影響するかどうかというところだと思う。そのあたりはもちろん、慎重に議論しなければいけない」とのべた。「ポイントとしては、理念的な話と経営の話ははっきり分けて考え、話していかなければいけない」と強調した。

東京都の川上一恵代議員は、「日本医師会としてはそのヘルスリテラシーを広く一般に、広めるための活動というようなことは、何か計画されているのか」と質問。日本医師会の宮川常任理事は、「学校保健担当と今、計画している。薬剤師会だけではなく、日本医師会が関与しながらやることを考えている」と述べた。

これに対し、川上代議員は、「ヘルスリテラシーは基本、どういうところにあるかというご存知でしょうか」と指摘。「ヘルスリテラシーといった時には、やはり野菜を多く食べるとか、生活リズムを整えるとか、それからタバコを吸わないなど、色々な教育がある。決して学校保健だけではない」と指摘。「一般の人に向けて、しっかりとした健康教育というものをするのも、日本医師会の役割ではないか」と述べた。

宮川常任理事は、「東京都医師会のご指摘の通り、先生方からのまたお知恵をいただきながら、しっかりと対応していくので、またお教えいただきたい」と応じた。

なお、東京都医師会の尾﨑治夫会長は会見などを通じ、国民皆保険の維持に向けてOTC医薬品の活用などセルフメディケーション推進による医療費削減の必要性を再三にわたって指摘。6月10日の定例会見でも、医療課題の解決に向けた対策の一策としてスイッチOTCの活用も掲げた。適正化された医療費について初・再診料や入院基本料などの基本料引上げに活用することで、「本当に必要な人をきちんと診ればやっていけるような診療の体制ができるのではないか」と話していた。


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