薬食審・第一部会 ノバルティスの慢性心不全薬など2製品を審議 メールでの持ち回りで
公開日時 2020/04/20 04:50
厚生労働省は4月17日、新薬の承認可否などを審議する次回の薬食審・医薬品第一部会で、ノバルティスファーマが承認申請した新規の慢性心不全治療薬・エンレスト錠(一般名:サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)など2製品を審議する予定だと発表した。
次回の第一部会は新型コロナウイルスの感染拡大により、電子メールを用いた持ち回りで行う。第一部会が持ち回り開催となるのは初めて。厚労省によると、今回の審議品目の承認可否は5月の大型連休明けに出る見通し。
もうひとつの審議品目は多発性硬化症治療に用いるメーゼント錠(シポニモドフマル酸塩)で、同剤もノバルティスが申請した。なお、次回部会では報告品目はない。
【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽エンレスト錠50mg、同錠100mg、同錠200mg(サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物、ノバルティスファーマ):「慢性心不全」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)と呼称するクラスの新薬。ネプリライシン阻害薬サクビトリルと、ARBバルサルタンを含有し、1日2回投与で、機能不全に陥った心臓の負荷を軽減する。
心臓に対する防御的な神経ホルモン機構(ナトリウム利尿ペプチド系)を促進すると同時に、過剰に活性化したレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)による有害な影響を抑制することで作用を発揮する。既存のACE阻害薬やARBなどの心不全治療薬は過剰に活性化したRAASによる有害な影響の抑制にとどまる。
欧米では、心不全のうち左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)の治療薬として承認されている。日本は世界のように適応が細分化されておらず、既存薬は「慢性心不全」とのカテゴリーで承認されているため、同剤も慢性心不全の治療薬として申請した。
なお、左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)患者を対象としたフェーズ3試験では、主要評価項目の心血管死及び全ての心不全入院の減少の複合エンドポイントについて、「わずかながら統計学的な有意差は認められなかった」(同社)という。日本でも適応範囲が議論されるとみられる。
19年の世界売上は17億ドルで、前年比68%増。日本では心不全領域に強い大塚製薬とコ・プロモーションする。
▽メーゼント錠0.25mg、同錠2mg(シポニモドフマル酸塩、ノバルティスファーマ):「多発性硬化症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体の特定サブタイプに対する選択的免疫調節薬。リンパ球上のS1P1サブ受容体に結合し、リンパ球が多発性硬化症患者の中枢神経系に移行することを防ぐ。これにより、同剤の抗炎症作用が発揮されると考えられている。
希少疾病用医薬品に指定された際の予定効能は、「二次性進行型多発性硬化症の再発予防および身体的障害の進行抑制」となっていた。