20年11月 処方患者数が再び大幅減 コロナ第3波による受診控えか JMIRI調べ
公開日時 2020/12/16 04:52
6月から回復基調にあった医療機関で処方を受けた患者数(処方患者数)が、11月に大きく減少したことがわかった。前年同月の処方患者数を100%とした場合、11月の処方患者数は前年同月比89%にとどまり、10月(前年同月比96%)から7ポイントの大幅減となった。新型コロナの新規感染者数が増加し、過去最高を更新し続けた11月は、受診控えが再び増えたとみられる。12月に入っても新規感染者数が落ち着く様子はみられず、12月は11月以上に処方患者数が減少する可能性がある。
これは、調剤レセプトベースで実際の処方動向を把握・分析する医療情報総合研究所(通称:JMIRI、読み:ジェイミリ)のデータによるもの。
■新規感染者多い関東地方の減少目立つ
JMIRIデータから処方患者数の月次推移を見てみる。各月の前年同月の処方患者数を100%とした場合、新型コロナの感染拡大に伴う緊急事態宣言下にあった5月は前年同月比81%にまで減少したが、宣言解除後の6月には91%に回復した。コロナ第2波の7月、8月はそれぞれ91%前後で推移。新規感染者数が安定した9月から処方患者数の回復基調が顕著となり、10月には96%にまで回復した。しかし、11月に再び減少に転じた。
処方患者数を地域別にみると、10月までは全国的に前年同月比で95%を超える水準に回復していたが、11月は全地域で処方患者数が減少。なかでも関東地方は前年同月比87%と最も減少幅が大きかった。JMIRIは、「11月は特に新型コロナウイルスの新規感染者数の多い関東地方の減少が目立ち、感染の第2波中の7~8月と同程度の水準になった」としている。
■小児科 患者数の落ち込み大きく
診療科別にみても、処方患者数は全体的に減少傾向をみせた。10月に患者数が大きく回復した小児科も11月に再度患者数は減少し、前年同月比74%(10月は前年同月比82%)にまで落ち込んだ。
JMIRIは11月、12月の市場動向について、「連日過去最多の新規感染者数を記録した11月の第3波は患者の受診動向に大きな影響を与えているようだ」とした上で、「11月時点では変動が見られていない処方日数も、第3波が長期化するようであれば伸びていくことが想定される」と分析した。1回あたりの平均処方日数は7月以降、毎月、前年同月比110%前後で推移している。
■コロナとインフルエンザの同時流行 11月末時点で気配なし
今冬は新型コロナとインフルエンザのダブルパンデミックが懸念されているが、11月末時点でもインフルエンザの流行の兆しは見られなかった。11月の抗インフルエンザウイルス薬の処方患者数は、2015年~19年の直近5年間の11月平均の約28分の1にとどまった。インフルエンザが流行した前年同月と比較すると約60分の1となる。
20-21年のインフルエンザシーズンの抗インフルエンザ薬の処方患者数を振り返ると、9月は直近5年間の9月平均の約60分の1。10月は、9月からはやや増加したものの、約12分の1だった。
JMIRIは、「9月までほとんどみられなかったインフルエンザ患者数が10月にやや増加し、患者数が増えてくることが懸念されたが、11月に流行入りすることはなかった。11月末時点では(インフルエンザと新型コロナの)同時流行の気配は見受けられない」とした。ただ、「少ないながらも前月比では患者数が増加している状況のため、引き続き警戒をしながら状況を見ていく必要はある」との見方も示した。