卸談合事件は「国民生活に影響及ぼす悪質・重大なもの」 東京地裁判決
公開日時 2021/07/02 04:50
「今回の受注調整行為は、国民生活に広範な影響を及ぼす悪質かつ重大なもの」—。医療用医薬品の入札をめぐる談合事件で、独占禁止法違反の罪に問われたアルフレッサ、スズケン、東邦薬品の卸3社と業務に従事していた7人に対する6月30日(
関連記事)の判決で、東京地裁はこう指摘した。3社が2003年にも受注調整していたことを挙げ、「根深い談合体質」とも述べた。大手卸が関連した一連の事件に対し司法は、法人としての3社にいずれも2億5000万円の罰金刑、7人に対しては、立場などに応じて懲役1年6月~2年、いずれも執行猶予3年が付いた有罪判決を言い渡した。
◎受注調整行為は“根深い談合体質”に基づく
判決では、「今回の医薬品購入は、全国57病院が使用する2年分の医薬品にかかっており、落札価格の合計も1400億円を超える大規模なもの。受注調整行為は医療機関に対する販売価格(納入価)を高止まりさせるもので、薬価改定にも影響を及ぼし得るものだ」と指摘。このため「医薬品卸売業におけるもともとの利益率が低く、医薬品購入契約における被告会社らの利益率との差がせいぜい数パーセントであることを踏まえても、今回の受注行為は国民生活に広範な影響を及ぼす悪質かつ重大なものである」と述べた。
そのうえで、「今回の受注調整行為は事業活動の相互拘束性が強く、公正かつ自由な競争を大きく阻害するものだ」と非難。さらに事件に関わった4社を含む卸9社が2003年、受注調整行為について課徴金納付命令を受けていたことについても触れ、「今回の受注調整行為はいずれも被告企業など4社の根深い談合体質に基づいてなされた」と言及した。
◎業務統括の最終責任者、指示を受けて行為に関与する立場-懲役刑に幅
一方7人に対しては、「従前から社内で受注調整行為が繰り返されていたなかで、自ら今回の行為をしないと決断するのは容易ではなかったと考えられる」などと判断。その業務を統括する最終責任者や、指示を受けて行為に関与するといった立場などに応じて、懲役刑に幅をもたせた。
このため▽東邦薬品の元病院統括部長の笠原次男被告とスズケンの元病院統轄部長の中原岳志被告に懲役2年、執行猶予3年(求刑:懲役2年)、▽スズケンの元病院統轄部副部長の伊藤哲也被告と元同部広域病院課統轄課長の大島克彦被告、アルフレッサの元病院統括部長の五味信幸被告、同元部長の吉田和正被告、元営業グループ長の鍋嶋明被告それぞれに懲役1年6月、執行猶予3年(求刑:懲役1年6月)—を言い渡した。
判決によると3社と7人は、談合を自主申告したため立件が見送られたメディセオを含む4社が共謀の上、2016年6月と2018年6月、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)が運営する全国57病院用に発注した医療用医薬品の入札で、事前に受注予定比率について合意するなどして、受注予定事業者を調整していた。