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岸田内閣発足 社会保障に精通した鈴木俊一氏を財務相に起用 「新たな資本主義実現」内閣がスタート

公開日時 2021/10/05 04:52
岸田文雄内閣が10月4日発足した。岸田首相は官邸で記者会見に臨み、内閣として「新たな資本主義の実現」に取り組む決意を表明した。「成長戦略」と「分配戦略」の2軸がカギになると岸田首相は強調する。その成長戦略の筆頭に科学技術とイノベーションを掲げ、AIやバイオ分野の研究開発に「大胆な投資」を行うと明言した。成長戦略の一翼を担う製薬産業にとって追い風と言える。一方で分配戦略では、「公的価格のあり方の抜本的見直し」を掲げ、医師、看護師、介護士などの働き方改革による所得向上策に取り組む方針を明示した。さらに「財政の単年度主義の弊害是正」をぶち上げた。コロナ後を見通した社会開拓実現内閣がスタートした。

◎鈴木財務相 税と社会保障分野の重鎮であり、良き理解者

岸田内閣の顔ぶれをみると、財務相には鈴木俊一・前自民党総務会長が就任した。鈴木財務相は、1996年の第1次橋本内閣で厚生政務官に就任、その後、98年に自民党社会部会長(現厚生労働部会長)、2006年に党社会保障制度調査会長を歴任するなど、年金、医療、介護など社会保障分野の問題に精通している。この時期の取材で、自民党厚労関係議員の幹部会メンバーとして各方面との調整に汗をかく鈴木氏の姿をみる機会が多かった。厚生労働関係のベテラン議員の多くが政界引退を表明する中で、鈴木氏は、自民党における税と社会保障分野の重鎮であり、良き理解者でもある。高齢化のピークを2025年に控える中で、高騰する社会保障費の問題を財務大臣としてどう切り盛りするか注目されるところだ。

◎後藤厚労相 次期22年度薬価・診療報酬改定にどう臨むか

厚労相には後藤茂之・前自民党政調会長代理が起用された。後藤氏は、大蔵省出身で2000年に初当選した。自民党では、人生100年時代戦略本部幹事長代行、社会保障制度調査会事務局長、介護委員会委員長などを務め、直近では新型コロナウイルス感染症対策本部座長として手腕を発揮した。元財務官僚でありながら、岸田首相の掲げる科学技術振興やイノベーションにも理解がある。直近の課題では、次期2022年度予算編成の目玉である薬価・診療報酬改定に取り組む。医師会や健保連など関係団体との調整にどう臨むかも注目ポイントだ。

◎山際経済財政担当相 「新たな資本主義の実現」に最も理解ある閣

一方、新型コロナ関係大臣のポストには、経済財政担当相(新型コロナ担当・健康危機管理担当)として山際大志郎・自民党政調会長代理を任命した。同氏は首相が党政調会長時代に政調会長代理として岸田氏を支えてきた。岸田首相の「新たな資本主義の実現」に最も理解ある閣僚として今回の閣僚人事で経済財政担当相を拝命した。「新しい資本主義担当大臣」としての手腕が期待されるところ。なお山際担当相は全世代型社会保障改革も担当する。

◎堀内ワクチン担当相 当選3回で初入閣も、厚労大臣政務官や環境副大臣を経験

新型コロナのワクチン担当相には堀内詔子・前環境副大臣が就任した。堀内氏は、2012年初当選で当選回数は3回。16年に厚労大臣政務官、20年には環境副大臣兼内閣府副大臣を務めた。なお、後藤厚労相、山際経済財政担当相、堀内ワクチン担当相ともに初入閣となる。3大臣は、さっそく岸田首相に呼ばれ、「新型コロナ対策の全体像を国民に示して欲しい」と要請を受けたことを明らかにした。

【FOCUS】これまでの社会保障政策の系譜と新資本主義のミックスで生まれるコロナ後の社会

岸田内閣の閣僚人事を診る限り、医療や介護など社会保障分野については、鈴木財務相を筆頭に初入閣の3大臣を含めて、課題認識や政策の方向性などについては、これまで掲げた税と社会保障改革の路線や全世代型社会保障改革の系譜が受け継がれるものと想像できる。ただ、注目すべきは、岸田首相の掲げる「新たな資本主義の実現」にどうアプローチするかだ。

◎首相秘書官に財務省の宇波弘貴主計局次長を起用


もう一つ注目される人事がこの日発表された。首相秘書官に財務省の宇波弘貴主計局次長が起用されたことだ。この内閣にとって社会保障制度改革の方向性に一切のブレが生じないということを感じるものだ。

◎新しい資本主義を実現する車の両輪は「成長戦略と分配戦略だ」 岸田首相


岸田内閣にとっては、日本の高齢化問題や2030年以降に迫る労働生産人口の減少と地域社会の再生など、社会構造や社会システムの課題が目前に控えており、こうした環境要因にどう政策の楔を打ち込むかが各閣僚に求められる。単なる財源論に終始することなく、新たなテクノロジーを見据えたイノベーション評価やデジタル活用に伴う生産性の向上(DX推進)などを、社会保障制度改革の議論と絡ませながら実効性ある政策を打ち出せるかが課題となろう。

「新しい資本主義を実現する車の両輪は“成長戦略”と“分配戦略”だ」-。岸田首相は官邸での会見でこう強調した。成長と分配の好循環を見いだす改革の実現こそがこの内閣の命題であると言っても間違いない。岸田首相は、「コロナを経験したことで、なかなか進まなかったデジタル化の加速など、新型コロナは社会変革の芽をもたらした。この芽を大きく育て、コロナ後の新しい社会の開拓を実現する」と強調した。その上で「ポストコロナ時代の経済社会ビジョンを策定し、具体的な政策を作り上げる」と述べ、まずは直面するコロナ対策に注力し、短中期的に新資本主義を実現する様々な施策を繰り出すという二段構えの姿勢を鮮明に示した。製薬産業にとっても岸田内閣へのアプローチの仕方を十分に吟味する必要がある。成長戦略におけるイノベーション評価が一つの突破口になることは間違いない。一方で、新資本主義の姿を踏まえながら、新しいテクノロジー(AIやビッグデータ)などを活用したヘルスケア全体としてのアプローチも求められよう。きたるべき衆院総選挙の争点となることは間違いない。(沼田佳之)

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