PhRMA・リックス会長 アウトカム向上の医療システム構築に協力 イノベーション・エコシステム実現へ
公開日時 2022/01/31 04:50
米国研究製薬工業協会(PhRMA)のデイビッド・A・リックス会長(イーライリリー会長兼CEO)は1月28日、記者会見に臨み、日本の医療システムを持続可能でより強靭なものとする「イノベーション・エコシステム」の実現に全面協力する姿勢を表明した。治療アウトカムの向上を主眼に、革新的新薬の創出とアクセスを確保し、それに伴う患者ケアをデジタルで管理・評価する。そのエビデンスを医療予算の配分に適応するというものだ。現状の薬剤費10兆円については「成長を望む」と指摘するリックス会長だが、「日本の医療システムにはレガシーがある」と述べ、「長期収載品やOTCへの対応等を通じた改善もできる。両方の方向性を追求すべきだ」と強調した。
この日の会見でリックス会長は、日本政府に対し、「バイオ医薬品イノベーション・エコシステムを強化すべき」と提案した。具体的には、①イノベーションに報いる予見性・透明性の高い薬価制度の確立、②承認審査の迅速化および新たな迅速承認制度の創設、③デジタル技術とリアルワールドデータ(RWD)の導で医薬品開発のスピード・予見性を向上させ、アクセスを確保する、④官民連携を進め、産学官の対話を進め、そして共有の目標に向かう―というもの。
こうした提案の背景には、2015年以降の薬価制度改革に伴う「バイオ医薬品市場の不安定化」があるとリックス会長は指摘する。会見に示した資料では、研究開発投資(2015年~20年)の年間成長率がグローバル平均の33%増に対し、日本は9%減だった。リックス会長は、「我々は売上の25%を研究開発に充てている。研究開発費が伸びないとバイオ医薬品業界に繁栄はない。また、この業界の再活性化にもつながらない」との懸念を表明した。
◎薬剤費10兆円 拡大と再分配の「両方の方向性を追求すべきだ」
一方で「日本には医療システムのレガシーがある」と指摘。「短期、中期的な財政的制約のあることはわかっている」と日本政府の立場にも理解を示す。必ずしも欧米や中国と同じ市場環境にないとの認識だ。その上で医療費40兆円に占める薬剤費10兆円の考え方については、「医薬品市場は拡大すべきだ」との立場を堅持しながらも、「医薬品は長期的な投資として最も効率的だと考えている。10年~12年経てばGE品が安く手に入る。長期的にみれば低コストで疾患を管理できる。逆に医療機器や手技はコストが高騰する可能性を含んでいる」と指摘。「(拡大と再分配の)両方の方向性を追求すべきだ」との認識を強調した。
◎医療システムの改革「現在のリソースを効率的・効果的に配分できるか考えるべき」
リックス会長は、「日本政府は包括的な医療制度改革を行う必要性がある。現在のリソースをいかに効率的・効果的に配分できるかということを考えるべきだ」と日本政府に促した。さらに医療システムの改革にあたっては、「最適な患者ケア、最も効率的に健康なアウトカムを実現することを考えないといけない」と述べ、革新的な医療へのタイムリーなアクセス確保を前提に、医療リソースについては「効率的に柔軟でエビデンスに基づく形での配分が求められる」と強調。医療コストの適正化を目的とした予算配分などでコンセンサスを得る必要性に言及し、こうした取り組みに対しPhRMAとして全面的に協力する姿勢を示した。
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