AMED・製薬協「AND-E」始動 産業目線の実用化戦略で“魔の川”越える革新的新薬創出へ
公開日時 2026/01/20 06:00

日本医療開発研究機構(AMED)と日本製薬工業協会(製薬協)は1月19日、シーズの実用化加速に向けた両者の新たな連携「AND-E(あんでぃ、AMED IND ENGINE)」が始動したと発表した。製薬協から、創薬経験が豊富な研究者が出向。産業目線の目利きにより、アーリー段階で創薬の原石を見極め、早期から実用化・事業化に向けた戦略的な方向性を示す。AMEDと製薬協がタッグを組むことで、いわゆる“魔の川”を乗り越え、革新的新薬創出につなげていきたい考えだ。AMEDの理事長特任補佐(革新的新薬創製担当)に就任した上野裕明氏(元製薬協会長・元田辺三菱製薬代表取締役)は同日の会見で、「アカデミア単独の発明・発見だけで、革新的新薬創出につながることがますます難しくなっている。魔の川をいかに乗り切るか、AND-Eでチャレンジしたい」と意気込んだ。
◎疾患ターゲット、最適なモダリティ、対象疾患の組み合わせが重要に
革新的新薬創出に向けて、アーリー段階の“魔の川”、非臨床から臨床の狭間にある“死の谷”と呼ばれる大きなギャップを克服することが命題となっている。AND-Eは、製薬協から、創薬経験が豊富な研究者が出向。ノウハウや経験を生かし、実用化の道筋がつけられていない原石を見極め、製薬企業に蓄積されている英知と経験を活用することで、いわば魔の川に橋を架け、シーズの実用化を加速させることを狙う。
上野理事長補佐は、mRNAを例に挙げ、複数のイノベーションが組み合わさって、実用化に至っていることを紹介。「薬になるためには、対象とする疾患ターゲット、それに対する適切なモダリティ、対象疾患の組み合わせが重要だ。この適切なみ合わせがないばかりにバリューを毀損しているものがあるのではないか。初期段階から、最適な組み合わせを考えながら創薬に仕立てていく。これが基本的な考えだ」と話す。このためには、アーリー段階からの“産業目線”を踏まえることが重要との考えを示す。AMEDの中釜斉理事長も、適切な標的やモダリティ・適応症の組み合わせを念頭に、「創薬研究テーマを作り、製薬企業のプロセスに載せることが重要だ」と今回の取組みの意義を強調する。
◎製薬協・宮柱会長「25年度は“真の共創”による実用化に向けた取組みの好機」
製薬協の宮柱明日香会長は、「2025年度は 第3期健康医療戦略、そして第3期AMED がスタートし、政府も官民協議会や日本成長戦略会議を設置し、日本を創薬の地とすることを宣言している。日本の創薬エコシステム元年とも言える今こそ、真の共創による実用化の加速に向けて、さらに踏み込んだ取り組みを行う好機とも我々は捉えている」と話す。
これまでも製薬企業の人材が出向するケースもあった。ただ、すでにスタートしているプロじぇうとの助言や支援がメインだったという。製薬協の宮柱会長は、「企業人材がAMEDに入って、適切な形で企業の求めるレベル、あるいは方向性の創薬研究を立ち上げ、実施することを目指している」という目的と方法が違うと説明する。
AMEDの中釜理事長は、「すでに存在する事業が成長するよう、開発がうまく進むよう、事業の着実な進捗について支援していただいていた。これは、研究者の発想ありきだったが、今回の取組みでは場合によっては、研究者が想定してないようなアプローチ、ターゲットを求めることも念頭に置きながら進める」と説明した。
◎スタートアップ設立、企業導出に期待 AMED・中釜理事長「グローバル展開できる新薬を」
「今後はスタートアップの設立、企業への導出などの展開も期待される。AND-E が単発的な取り組みで終わらないよう、これをきっかけに産業的視点を持った創薬研究が定常的にAMEDで行われるようになることも期待している」-。製薬協の宮柱会長はこう話す。「AND-E を通じて日本発の革新的新薬創出につながる研究が動き出すだけではなく、産業界のノウハウがエコシステムの中で循環し、人材交流が促進されることを大いに期待している。製薬産業としても、その実現に向けて継続的に貢献し、価値の共創を続ける」と期待をよせた。
AMEDでは第2期中期目標期間(20~24年度)にシーズの企業導出が538件、薬事承認は56件が至った。一定の成果が認められた一方で、「適応拡大が多く、いわゆる新薬に関しては、まだAMEDの活躍の可能性があるのではないか」とAMEDの中釜理事長は話す。「新薬をできるだけ増やし、グローバル展開できるような、市場性があるものを目指したい」と意欲をみせた。
◎革新的新薬創製に特化した出向は初めて 定期的な進捗確認する体制
AMEDと製薬協昨年10月1日付で、連携協定を締結した。具体的には、創薬プロジェクトの立案・採択経験、創薬プロジェクトのリード経験、高度な創薬知識を有するなど、創薬経験が豊富な専門人材が製薬協からAMEDに出向。AMEDの研究課題の中から創薬の原石を見極め、実用化・事業化への道筋を示す。AMED出向後は、AMEDのチームに入り、AMED内の連携を深める。
まずは、事業化・社会実装の観点から創薬の可能性を評価するほか、TPP(Target Product Profile;目指すべき製品像を明確化した指針)を意識した仮想研究シナリオ設計、IND(Investigational New Drug;臨床試験に入る前の段階)到達を見据えた開発ロードマップの作成に取り組む。これまでも製薬企業からAMEDに出向しているケースはあったが、製薬協から、革新的新薬創製に特化した出向は初めてという。AMEDと製薬協の両者の対応チームが定期的に進捗を確認し、方針を協議する体制を構築したのも新たな試みという。
今後については、段階的な活動計画を立てる。第1段階では、AMED内の課題を見渡し、創薬につながりそうな課題を選定。将来的なバリューチェーン構築を念頭に、既存の創薬支援事業の取組み内容を確認し、それらとの連携を模索する。第2段階では、選出したAMED課題を起点に創薬研究計画、支援内容を立案し、産業目線で創薬研究、支援を開始する方針。