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共和薬品の法令違反を追う 製造部門の「ブラックボックス化」は何故起きた 特別調査委員会報告書から

公開日時 2022/03/30 04:53
「重大な不備である」-。2021年3月、共和薬品のSQA課の担当者は、苦情処理報告書の原因欄に書かれた一文に眼が止まった。担当者は三田工場の品質保証部長に相談。部長はそこで初めてアルファカルシドール錠の打錠工程で外部滑沢装置が用いられ、承認書に記載のない成分のステアリン酸マグネシウムの外部滑沢が行われていた事実を知る。その内容は、信頼性保証本部長を通じ、4月8日には総括製造販売責任者(総責)のK氏に届く。共和薬品が3月28日に公表した外部有識者による特別調査委員会「調査報告書」から法令違反事案の真相を追った。

共和薬品の角田礼昭社長への問題事案の正式な報告は21年5月6日だった。角田社長は総責のK氏から三田工場で承認書と異なる製造を行ったアルファカルシドール錠の生産を中止する旨の報告を受ける。5月11日の経営会議で角田社長は、社内調査委員会を設置し、全社をあげて実態解明を行うよう指示が飛んだ。「重大な不備」を現場で認識してから約2か月が経過しようとしていた。共和薬品は5月13日に厚労省、翌14日に大阪府健康医療部生活衛生室薬務課にこれらの内容を報告。さらに、7月20日にアルファカルシドール錠の製造過程で承認書と製造実態に齟齬があったことをメディアや医療関係者に公表し、当該製品の出荷を停止した。

◎内部滑沢か外部滑沢か 滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを使用


ただ、この法令違反につながる問題の根幹は、2000年以前にまでさかのぼる。共和薬品がアルファカルシドール錠の承認取得者(X社)から承認を承継したのは1998年のこと。X社から承継後は、三田工場の製造においてステアリン酸マグネシウムを内部滑沢剤として使用(ただし、当時の製造記録等は存在せず)し、その間、製品標準書および製造指示書に内部滑沢剤としての使用が記載されていた。ところが、2000年頃、この文言が削除される。

当時、製造標準書の様式の改訂に伴う見直しの際に、「承認書通りに製造する必要がある」との判断のもと、記載の変更を行ったと特別委員会の調査報告書に記録されている。一方で、「承認書どおりにステアリン酸マグネシウムを使用せずに製造を試みたところ、スティッキングの打錠障害が生じ、何度か試作を行ったが、特に実生産スケールの製造においては、打錠障害の改善はできなかった」として、ステアリン酸マグネシウムを追加する一部変更承認を受けることなどの相談が、生産技術担当者から三田工場長のB氏(故人)にあがった。

これにB氏は、「一部変更承認を受けることは困難(その理由は不明)、無水乳糖の微粉末を除去する方法は収率が低下するためコスト的に困難である」とし、抜本的な改善は行われないまま放置される。

その後、2011年の終わりから2012年にかけて、ステアリン酸マグネシウムの内部滑沢をやめて、外部滑沢の導入を検討する動きが製造部門内で出始める。これは当時の工場長であるC氏の指示で行われた。ただ、外部滑沢では打錠障害を解消することは困難とされ、引き続きステアリン酸マグネシウムを内部滑沢する方法を継続することを判断している。

◎B氏「ステアリン酸マグネシウムを外部滑沢で使いたい、認めてもらえるか」

実際に外部滑沢の導入に舵を切るタイミングは2017年10月頃にあった。当時、製造管理者だったJ氏は、生産本部長及び工場長だったB氏に呼び出され、本部長室で「ステアリン酸マグネシウムを外部滑沢で使いたい、認めてもらえるか」との相談を受ける。これにJ氏は、「ステアリン酸マグネシウムは承認書に記載されていない成分である」と述べ、「難しい」と返答する。数日後に再びJ氏はB氏に呼び出され、「総括製造販売責任者であるK氏に相談し、ステアリン酸マグネシウムの外部滑沢について了解を得た」と告げられる。

この決定には伏線がある。ちょうど同じタイミングで三田工場の作業員が、職場における人間関係の不満を本社の法務部担当者に打ち明けている。その際に、この内部通報者は、ステアリン酸マグネシウムを内部滑沢していることを法務部担当者に伝えている。この行動がどんな意図を含んでいるか分からないが、この内部通報者のもたらした情報はB氏を通じて製造一部部長のL氏に伝えられ、同時に、ステアリン酸マグネシウムを外部滑沢する製造方法とするよう指示が飛んだ。

当時、L氏は、他の製剤で外部滑沢を行っており、外部滑沢装置のバリデーションはできていた。しかし、アルファカルシドール錠のバリデーション及び変更管理は行っていないことを問題視したB氏は、「打錠障害を回避するためであれば外部滑沢は問題ないことについて総責のK氏に確認し、また、薬事手続を行っていると時間がかかるため、早急に外部滑沢を開始するよう指示された」との認識をL氏に伝えたという。ただ、気がかりなのは総責のK氏がこの一連のやり取りについて、「B氏から、ステアリン酸マグネシウムを内部滑沢から外部滑沢する製造方法の変更について相談を受けたとは認識していない」と調査報告書の中で表明していることだ。

一方で総責のK氏は、「ステアリン酸マグネシウムの外部滑沢は、打錠性を向上させるための臼杵への噴射であり、製品には付着しないか、安全性の高い成分がごく微量付着するに留まり、また、アルファカルシドール錠の先発品においては、ステアリン酸マグネシウムが使用されていることから、健康被害が生じる恐れはないと考え、外部滑沢を行わない製造方法への変更が早期になされるとの認識の下、一時的に外部滑沢によることを許容した」と述べている。

◎製造行為に関する不備を製造部門内で解決しようとする姿勢

関係者間の認識に齟齬が認められる部分だ。調査報告書では、「内部通報を契機として、B氏において、製造管理者及び総括製造販売責任者とのコミュニケーションを経て、ステアリン酸マグネシウムを外部滑沢する製造方法への変更が主導されたものと認められる」と指摘する。一方でB氏は、同時にステアリン酸マグネシウムを使用しない製造方法の検討も部下に指示していたが、多数(31件)の変色の苦情が発生したことから、当該製造方法によることを断念し、総責のK氏から生産本部長である C 氏への指示により、再度、外部滑沢による製造に戻されたという。

こうした経過を経て、2017年12月、アルファカルシドール錠への承認書に記載のない成分のステアリン酸マグネシウムの外部滑沢が開始された。ここで明らかになったのは、総括製造販売責任者のK氏も、2017年段階で問題となった外部滑沢について認識していたという点だ。他にも、製造管理者のC氏は内部滑沢について2009年または2010年に認識、製造管理者のJ氏も2017年10月には認識していたことが調査報告から明らかになっている。

◎製造部門のブラックボックス化 絶対的な発言力、意向に反することは事実上困難


一方で調査報告書では「製造部門のブラックボックス化」と題し、三田工場長を経て生産本部長を務めたB氏について触れている。「B氏により、製造部門が排他的に取り仕切られることにより、製造部門は他部門からのブラックボックス化を深めていった」と記した。さらに、「B 氏の根底にある製造管理の考え方は、製造においてエラーが発生した場合は、原因を究明の上、手順に反映し、適正な製造管理を行う、というものであったと伺われ、その豊富な知識及び経験に裏付けられた“正しさ”と、部下に対する厳しい指導方針により、製造部門内において B氏は絶対的な発言力を有し、B氏の意向に反することは事実上困難な状況にあったものと認められる」とまで言い切っている。

報告書では、「こうした体制は、B氏の死去による生産本部長、工場長の変更後も、B氏のような絶対的な発言力を有する者は存在しない中で、事実上継続しており、作業マニュアルどおりの製造記録を行う慣習は継続され、品質保証部や本社(製造販売業者)からの監督が及びにくい状況となっていた」と結んでいる。

◎共和薬品 3か⽉ごとに特別調査委員会の GMP監査を受入れ 改善状況はHPで公開

共和薬品は3月28日、今回の行政処分について、「この度の処分内容である業務停⽌命令及び業務改善命令を厳粛に受止め、このような事態を⼆度と引き起こさないため、⾏政当局のご指導及び特別調査委員会の提⾔を踏まえ、“再⽣への取り組み”を開始しております。当該取り組みを通じて、法令遵守を徹底し、確かな品質の製品を供給することで、皆様からの信頼回復に誠⼼誠意努めてまいります」とのコメント。当⾯の間は3か⽉ごとに特別調査委員会による GMP 監査を受け、その監査結果を踏まえて、責任役員において、リソースが適切に配分されているかを含めた確認、評価を行い、継続的な改善の加速化と⾒える化に努めるとした。改善の取り組みの進捗は同社のホームページ上で公開するとしている。

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