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塩野義製薬の新型コロナ治療薬候補・ゾコーバ錠は「継続審議」 第3相パートの成績で再審議 薬食審・合同会議

公開日時 2022/07/21 04:52
厚生労働省の薬食審・薬事分科会及び医薬品第二部会の合同会議は7月20日、塩野義製薬の経口投与の新型コロナ治療薬候補・ゾコーバ錠の緊急承認の可否を審議し、「継続審議」とすることを決定した。5月に施行された緊急承認制度は、安全性が確認され、有効性が「推定」された場合に緊急承認されるが、委員からは現在の申請データでは有効性が推定できないのではないかなど否定的な意見が相次ぎ、現在、塩野義製薬が実施中の第2/3相臨床試験(T1221試験)の第3相パートで得られたデータを踏まえ改めて審議することになった。第3相パートのフルの結果は11月中にまとまる見通し。

厚労省はこの日の合同会議で、新型コロナの感染拡大の第7波が来ていることもあり、同剤に関して、「今後の感染拡大や既存の治療薬の効果が期待できない変異株が発生する可能性も含めたリスク・ベネフィットバランスの観点からの評価」を求めた。仮に緊急承認する場合は、その期限は承認から1年間とすることを提案した。

◎「第3相ではっきりした結果が出るまで、手を出せない」

しかし、主要評価項目のひとつとした新型コロナの症状改善効果で有意差が出ていないなど有効性の面や、さらに、催奇形性リスクや多くの薬物相互作用を考慮する必要があるなど安全性に関して指摘が相次いだ。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の藤原康弘理事長は、自身の呼吸器専門医としての経験も踏まえつつ、12症状それぞれのスコアの推移を補足説明し、「(グラフを)普通に見れば(プラセボと)差がないんじゃないかと、PMDAとして普通に解釈した。ウイルス量は下がっているが、臨床効果はこれぐらいかという正直な判断」と話した。

日本医師会常任理事の神村裕子氏(薬事分科会委員)は、「妊娠の可能性のある方には禁忌という場合、妊娠しているかどうか分からないとなると、とても怖くて使えない。また、同じような薬効のパキロビッドパックが、錠剤の大きさで飲みにくいということはあるが、作用機序が同じならば、なぜそちらでは駄目なのかと考えている。また、CYP3Aの阻害作用が強いということを考えれば、慢性疾患の高齢の患者にも使えないとなると、非常に使える幅が狭くなる」と指摘。「この程度の呼吸器症状の有効性の差が出たといわれても、とても使いたくないと、申し訳ないが素直に感じた」とし、「第3相ではっきりした結果が出るまで、手を出せないと思っている」と述べた。

合同会議の座長を務めた太田茂・薬事分科会長(和歌山県立医科大薬学部教授)が、「提出されているデータから有効性を推定できるとの判断はできないとの意見が多くを占めていた。継続審議としたい。現在実施中の臨床試験結果等の提出を待って改めて審議したい」とこの日の議論をまとめ、異論は一切出なかった。

同剤の第2/3相臨床試験(T1221試験)のうち、軽症/中等症患者を対象とした第2b相パートの主要評価項目のひとつである、4日目(3回投与後)におけるSARS-CoV-2のウイルス力価のベースラインからの変化量が、高用量群、低用量群ともにプラセボ群に比べて有意な減少を示したことから、2月に承認申請された。ウイルス力価陽性患者の割合は両用量群ともに10%未満で、プラセボ群との比較で第2a相パートの成績を上回る減少率となった。

しかし、もう一つの主要評価項目である、新型コロナの12症状の合計スコアの初回投与開始から120時間(6日目)までの単位時間あたりの変化量は、プラセボ群に比べ改善傾向を認めたものの、統計学的に有意な差は認められなかった。ただ、塩野義製薬は、オミクロン株で特徴的な呼吸器症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳、息切れ (呼吸困難))の4項目の合計スコアに限定すると、有意な改善効果が認められたと主張していた。

また、同社は安全性について、「第2a相パートの結果と同質であり、新たに懸念される有害事象等は認められなかった」とした。なお、非臨床試験で催奇形性を示唆する所見が認められている。また、この日公表されたPMDAがまとめた審査報告書によると、同剤はCYP3Aの阻害作用があるため他剤との相互作用に注意が必要となることが明らかになった。

◎PMDA審査報告書 「申請効能・効果に対する有効性が推定できるものとは判断できず」

PMDAはこの日の合同会議に、審査報告書を提出・公開した。それによるとPMDAは、T1221試験の第2a相及び第2b相パートの結果を踏まえると、「本薬によりウイルス量が減少する傾向が認められていることは否定しない」とした。

しかし、主要評価項目のひとつとした12症状合計スコアの推移はプラセボ群と概ね同様で、呼吸器症状を抜き出した合計スコアに対しても「一部の症状スコアの結果から臨床症状の改善効果を解釈することには限界がある」などとして、「申請効能・効果に対する有効性が推定できるものとは判断できず、当該試験の第3相パートの結果等を踏まえて改めて検討する必要がある」と結論付けた。

安全性については、「安全性上の大きな懸念は認められず、一定の忍容性は示されている」とした。承認される場合は添付文書において、催奇形性リスク及び薬物相互作用を含めた注意喚起が必要と指摘した。

◎事後解析に苦言も

合同会議では、12症状から呼吸器症状を抜き出して有意差が出たとの事後解析にも、その方法を含め批判が相次いだ。

山梨大学学長の島田眞路氏(医薬品第二部会委員)は、「呼吸器症状をピックアップしてちょっと有意差があったと言うが、後からエンドポイントをいじるのはご法度。有意差が認められるところをピックアップするというのは、臨床試験としてあってはいけないこと」と批判した。PMDAの藤原理事長も、「塩野義製薬は後から何度も何度も解析しているが、何度も解析すると有意差が出るということはある」とし、「繰り返し解析するときは、有意にするP値をすごく小さく設定することが必要だが、このような調整が行われていない」と苦言を呈した。
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