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日医工・今井製剤技術副本部長 富山第一工場のOOS発生確率は現在0.5% 「まだ改善の余地がある」

公開日時 2022/08/08 04:52
日医工の今井啓二製剤技術本部副本部長は8月6日、第16回日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会で、富山第一工場における品質問題の根本原因を報告した。GMP遵守の欠落、出荷最優先主義、コンプライアンスの完全な欠如-。「この原因を突き詰めると、製造法、試験法の設定や指図が不適切だった。さらに作業者、試験者の技能の低さが重なり、アウト(規格外試験:OOS)が次々にでた」と説明した。同工場で生産する422品目のうち4割が製造再開不可となり、いまも製品整理と適正人員による生産に注力していると説明。生産品質技術マネジャーの多くを先発企業の経験者に入れ替えたことも明らかにした。質疑では現時点の「富山第一工場のOOS発生確率は0.5%」と明かし、「まだ改善の余地がある」と強調した。

今井副本部長は、藤沢薬品、アステラス製薬の製剤研究所で長年にわたり製剤研究に携わった。2012年にテバ製薬で生産技術部長に就任、武田テバ時代を経て2021年2月に日医工が武田テバの岐阜工場を完全子会社化した際に日医工岐阜工場の生産技術統括部統括部長となり、現在は製剤技術本部副本部長を務めている。

◎OOSのロットをロットアウトと認めず出荷させるよう上層が指示

「本来出荷できないOOSのロットをロットアウトと認めず、なんとかして出荷させるよう上層が指示したということが原因だった。GMPに違反するような措置を講じてでも、可能な限り欠品を回避しなくてはならないという想いがあったと聞いている」-。続けて、「安定性試験の未実施については、生産される製品の品目が非常に多いということと、出荷重視の風土ゆえに、出荷に必要な試験に、人員や設備というものが割かれることができないということで安定性試験およびモニタリングが後回しにされていた」-。富山第一工場での品質問題の根本原因を今井副本部長はこう解説した。

◎過剰な生産計画と人員・設備の不足 ミスがミスを生む


「この過剰な生産計画と人員・設備の不足は、余裕のないスケジュールで製造ミスや試験ミスが起き、OOSの発生件数の増加につながっていた。さらに製造ロットの廃棄が生じると在庫不足や原薬不足で直ちに欠品になってしまう。生産計画にも余裕がなかった」-。富山県から日医工の富山第一工場が32日間の業務停止処分を受けたのは20年3月のこと。すでに2年を経過したが、生産・品質・出荷過程で生じた問題は、いまもなお安定供給などに多大な影響を与えている。同社は20年~21年に64品目を自主回収した。64品目の内訳をみると、出荷試験の繰り返しが43%、安定性試験でアウトになっているのにそのままにしたものが25%、承認書に記載のない工程・手順違反が15.6%-。

◎製品数の整理と適正人員による生産にシフト 生産品質マネジャーは「殆ど入れ替え」

こうした状況を踏まえ、同社は品質総点検を行っている。今井副本部長は、富山第一工場の現状について、422品目中6割に相当する264品目が製造可となり必要に応じてバリデーションを行っていると説明。一方で約4割に相当する158品目は製造再開不可品となり、うち2割強は品質改善して供給再開を目指すものの、残り8割は他社代替や製品統合などを検討していることを明らかにした。

「(422品目は)一工場では製品数が多すぎるということで、製品数の整理と適正人員による生産を行っている」と指摘する。加えて、今回の品質問題の原因となった生産・品質部門に関わる部門のマネジャーのコンプライアンス欠如については、「生産品質技術のマネジャー層は殆ど入れ替えた。かなりの人間が先発企業からきた。コンプライアンスを改善している」と今井副本部長は明かしてくれた。さらに、品質管理システム(PQS)が機能していないという指摘に対して、「再構築し、品質会議で上級管理職に報告するシステムができた」と説明した。

◎恐らく0.5%どころじゃないOOSが出ていたのではないか

講演の質疑では同社の取り組みを踏まえた富山第一工場の現状が問われた。今井副本部長は、「OOSの発生確率は0.5%」と説明。参考値として岐阜工場の固形製剤のOOS発生率0.25%を示したが、同氏は、「恐らく、以前は0.5%どころじゃないOOSが出ていたのではないか。0.5%であれば、それほど出荷には影響しない。(品質問題以前は)沢山のOOSが出ていたので、正式な記録として集計できない。無理やり出荷していたのではないかと思う」と述べた。

◎風通し良く、ヒトを育て、情報共有できる企業が安定生産を達成し、製造業で生き残る

さらに質疑では品質問題に絡めた企業風土の違いについての認識が問われた。今井副本部長は、「企業風土とは(従業員間で)風通しがよく、ヒトを育て、情報を共有するということ。企業間で手段やレベルに違いがあるが、それを達成した会社は最後に安定生産を達成して、この製造業において生き残れると私は確信している」と強調した。後発品特有の問題か?との質問に対しては、「今回の品質問題は先発ではまず起きない問題だと思う。根本の原因は、やはり多品種を沢山供給しなくてはならないというところ。ヒューマンリソースもそのレベルもすべてが追い付いていないところが問題だ」と指摘した。また、「後発品メーカーは企業規模も小さいが、先発メーカーよりも多くの開発品を抱えている。その意味でいうと、沢山の会社が同じ医薬品を開発することが国策として良いのだろうか? 海外のように、GEメーカーも規模を大きくして、それなりの品質を確保した会社が後発品を供給するというのがより良い道ではないか」との見解を示した。

これまでの取り組みに対する評価を問われると、「かなり疲弊していることはある。自分から当然情報を共有するとか、上下関係なく「~さん」付けでなるべくやっていこうとしているが結構役職で呼ばれるなど“壁”がある。まだまだできていないのかな、と思うところもある」と吐露する場面もあった。
 
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