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製薬協・岡田会長「薬価差の透明性・妥当性に課題」 市場実勢価に基づく薬価改定方式の抜本見直し要求

公開日時 2022/08/31 04:52
日本製薬工業協会(製薬協)の岡田安史会長(エーザイ代表執行役COO)は8月30日の記者会見で、現行の薬価改定方式について、「薬価差の透明性・妥当性には課題がある」との問題意識を表明した。そのうえで、「薬価差は国民負担となっている」とし、「市場実勢価格に基づく薬価改定方式の抜本的見直しを検討すべき」と強調した。こうした議論が調整幅の見直しにつながるとの見方も披露した。一方、革新的新薬には、“グローバルスタンダード”の観点から適正な価格の必要性を強調。革新的新薬について、市場実勢価格に基づく価格改定から除外し、特許期間中薬価を維持するなど、新たな仕組みの導入を提言した。

◎市場実勢価改定が「日本の魅力低下と医薬品の安定供給問題長期化につながっている」


「薬価を上限として医療機関・薬局と卸が取引をされる仕組みだ。上の天井は決まっていて下は自由競争で、必ず薬価差が生じる仕組みだ。つまり、薬価改定の頻度をあげれば加速的に薬価が下がっていく仕組みだ」-。岡田会長は市場実勢価格に基づく薬価改定方式の課題について、こう表明した。続けて、「この仕組みは日本特有のもの」と表現しながら、「何とかこれを維持してきたのは事実だが、いま足下で起きていることは日本市場の魅力低下と医薬品の安定供給問題の長期化につながっているのではないか」との課題認識を示した。

◎薬価差は「最終的に国民負担」 薬価制度の透明性の必要性を強調


この日の会見で岡田会長は「薬価差」についての問題意識を表明した。「医療機関や薬局にとっては薬価差から得られる収益が経営の極めて重要な要素となっている現状だ。一方で、その薬価差に関する“透明性・妥当性には課題がある”との指摘は長年の議論を経てもなくなることは一切なく、増すばかりだと思っているところだ。最終的に薬価差は、国民負担となっている。それがどこに還元されているかは別として、国民負担となっていることを踏まえれば、国民にとってもわかりやすい透明性のある仕組みとして根源的な課題である市場実勢価格に基づく薬価改定方式の抜本的見直しを検討する時期にまさしく来ている」と論じた。

岡田会長は、「(薬価差について)悪だという風な指摘がなかなか消えない」とも説明。「透明性・妥当性の観点から、薬価差は問題ではないか、という議論がなかなか払しょくできていない」と述べた。「薬価差の透明性」とした意図を問われ、「透明性についての議論は様々あるが、薬価を100として乖離率は8なら大きい、5なら小さいというのかという議論もある。調整幅の2%の妥当性を含めて、何%だったら薬価差は容認されるのかという議論があるわけではない」との見解を披露し、薬価改定方式の抜本的な見直しの必要性を強調した。

◎特許期間中の革新的新薬は薬価維持を 薬価算定は「透明性の高い仕組みにすべき」

会見で岡田会長は、“特許期間中の新薬”に係る薬価制度に関する提言骨子を示した。具体的には、新規性、医療ニーズが極めて高い新薬を対象に、価値を客観的に評価する「評価報告書(仮称)」を作成し、算定する仕組み。新たな価値評価プロセスを経た医薬品は、市場実勢価格の価格改定から除外し、特許期間中薬価を維持する。市場拡大再算定の対象から除外することも提案した。ただし、上市後一定期間経過したのちに、新たに得られたエビデンスや環境変化をもとに再評価を行い、引下げを含めた薬価を改定を行うとした。なお、価格評価プロセスに際し、類似薬は、臨床的位置づけ等の医療実態を含めて総合的に設定する。

岡田会長は、「ポイントは、製薬企業が主体的に医薬品の価値を説明し、第三者機関が妥当性を評価し、またその報告書を公開するところだ」と説明。「薬価算定はブラックボックスではなく、透明性の高い仕組みにすべきだ。まさにそういった時期だと思う」との見解を示した。そのうえで、「これらを一体的に改革することで、国民により早く革新的新薬を届けるための日本の薬価制度に再構築すべき」と主張。「革新的医薬品には価値に基づいて適切な価格がグローバルスタンダードの観点からつけられる。そうでないものはそれなりの価値が算定される、メリハリある制度への再構築をお願いしたい」と述べた。

◎「特許期間中、価値が守られるグローバルスタンダードな制度の構築が必要」

提案に至った背景について岡田会長は、「近年ドラッグ・ラグが増加し、ドラッグ・ロスの兆しがあるという現状に早急に手を打つべき。革新的新薬の早期アクセスを実現するためには、イノベーションをしっかり評価することが重要だ。臨床的・科学的な評価が変わらない限りは特許期間中、イノベーションの価値が守られるというグローバルスタンダードな制度の構築が必要だ。医薬品の持つ様々な価値を、客観性をもって適切に評価する仕組みが必要だ」と説明した。新制度導入には5年以上の議論を覚悟する必要性も指摘されるところだが、「様々なステークホルダの議論にもよるが、5年も6年もかけて制度化するという認識は持っていない」とも述べた。

 革新的新薬を評価する仕組みとしては新薬創出等加算があるが、「新薬創出等加算が目指した初期の役割はほぼ果たしつつある」との見解を表明。「次に何を目指すのかを明らかにしたうえで、制度をよりシンプルでわかりやすいものにアップデートする。そういった時期であると強く思っている」と話した。ただ、提案した新たな制度については新薬創出等加算の併用を視野に入れているという。


◎有識者検討会 「”なぜ日本市場だけ魅力がないのか”十分に検証いただきたい」

厚労省は8月31日、「医薬品の迅速かつ安定的な供給のための流通・薬価制度に関する有識者検討会」の初会合を開く。岡田会長は、日本市場の新薬・長期収載品・後発品などの構成比率を欧米諸国と比較したデータを示しながら、「いまの日本市場の状況はグローバルスタンダードと言える状況に達しているかどうか、今後有識者会議のなかでも大きな論点にしていただきたいと思っている。革新的新薬のアクセスを確保していくためには、医薬品の分類や役割に応じて、グローバルスタンダードの観点から適切な価格を設定する。さらなるメリハリを実現し、革新的新薬の上市を促す、魅力のある市場を形成していく必要がある」との見解を表明した。

この日の会見でも岡田会長は、”日本市場は魅力がない”と再三、強調。「多くの先進国でも日本同様に少子高齢化は進み財政が厳しいのは同じ状況だと思う。なぜ、日本だけが魅力のない市場になりつつあるのか。私が申し上げるよりも、有識者検討会等々で様々な角度からぜひ十分に検証いただきたいというポイントだ」などと述べた。





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