製薬協・宮柱会長 26年度薬価制度改革は“カテゴリー別”実現に意欲 「限られた財源配分の議論に臨む」
公開日時 2025/06/03 05:30

日本製薬工業協会(製薬協)の宮柱明日香会長は6月2日に開いたメディアラウンドテーブルで、骨太方針決定を前に「革新的な医薬品をドラッグ・ロス/ラグなく持ってくるための視点」で社会保障関係費のシーリング拡大を訴える姿勢を強調した。一方で、「財源が逼迫しているのは理解をしている」との認識を表明。2026年度薬価制度改革では「カテゴリー別の薬価制度の構築」の実現に意欲を示し、メリハリの必要性も認めた。宮柱会長は、「限られた財源の中でどう配分していくかという議論をしっかりとやっていきたい」と、ステークホルダーとの対話に意欲を示した。高齢化を背景に医療費が増大するなかで、医療DXの推進による効率化と価値の再配分の必要性にも言及した。
◎長期収載品の選定療養など 特許切れ後の後発品への流れ「受け入れなければいけない部分」
製薬協は、骨太方針決定を前に社会保障関係費のシーリング拡大を訴えているが、「我々は、薬価について革新的な医薬品をとにかくドラッグ・ロス/ラグなく持ってくるための視点で申し上げている」と理解を求めた。「一番やりたい、実現しないとしけないことは、顕在化しているドラッグ・ロス/ラグ問題も踏まえて、いかに我が国で革新的な新薬が速やかに上市され、いち早く日本の患者さんにお届けできるか。そこにはこだわりたい」と話し、財源確保が必要との考えを示す。
一方で、「限られた財源のなかで、カテゴリー別の薬価制度でメリハリというところの議論をしっかり行い、薬価制度に落ちていく。そういったことに向けてやっていくべきだと思っている」と述べた。
26年度薬価制度改革の議論では、カテゴリー別の薬価制度実現に重きを置く。革新的新薬では類似薬がなく、原価計算方式で算定されるケースが多いことに問題意識を示し、「実際にその薬がもたらす臨床的効果はもちろん、それ以外の価値を測るような仕組みにはなっていない。特に革新的な新薬が、よりわかりやすく評価される仕組みが必要になってくる」との見方を示した。特許期間中を薬価を維持したうえで、「その後はメリハリ」が必要との考えを表明。長期収載品に選定療養が導入されたことを引き合いに、「しっかりと後発品の流れにするいうところは、我々としては受け入れなければいけない部分かなと考えている」と述べた。
◎費用対効果評価 現行制度のままでの拡大は「断固反対」 評価のあり方見直しを
費用対効果評価については、対象薬剤の範囲や価格調整範囲拡大、保険償還の可否などへの活用をめぐって議論がなされていることについて反対姿勢を鮮明にした。費用対効果評価制度について、「医療財源が逼迫している中で、価値を生み出す薬剤や医療に対して、その資源を配分していくという観点でも、非常に重要な制度」と理解を示したうえで、「今の費用対効果評価制度のやり方を拡大することには、我々としては断固反対だ」と述べた。
「薬価がいわゆる特許期間一定程度保持されることが我々の呼んでいる予見性」としたうえで、「費用対効果評価制度自体が予見性を失わせているのが事実」と指摘した。現行の費用対効果評価制度で用いられるデータは、「本当にリアルワールドなデータではない。果たして本当に費用対効果が測れてますか?と疑問を呈している」として、評価のあり方にも一石を投じたい考えを示した。
◎医療DX「医療全体の効率化と価値の再配分が必要」 ユースケース発信に意欲
持続可能な社会保障制度の実現に向けて、医療DXを通じて「医療全体の効率化と価値の再配分が必要」との考えも示した。主幹組織立上げ、まずは製薬協内で議論を深める考えだ。宮柱会長は、「まずは、製薬協として一枚岩になることだと考えている。医療DXを取り巻く現状と課題、我々のあるべき姿をまずクリアにすべきだ。研究開発型企業として、医療DXを通じた患者さんへの真の意味での貢献、経済価値、社会的価値をクリアにしたいと考えている」と述べた。さらに、政府や医療関係者などステークホルダーとともに課題解決に挑む必要性を指摘し、次の段階ではステークホルダー横断の議論を行う必要性も指摘した。
宮柱会長は、製薬協としても、「ユースケースは、出していかないといけない」と意欲をみせた。ただ、何をもって効率化したかという軸も大事だ。そのあたりも目線合わせしながらディスカッションしていくべきだと思う」とも述べた。一方で、医療DXの成果や価値はプラスにもマイナスにも想定通りにはいかない可能性を指摘。「制限はかけずに、まずはやってみてユースケースを共有する。そこから一体、インサイトとして何が生まれたのかという話を含めた議論が必要だ。そういった意味で、ユースケースを中心に出していけたらいいと考えている」と述べた。
◎「アクションプランの実行とともに前に進んでいる姿を見せたい」
宮柱会長は製薬協会長の期間中に実現したいこととして、ステークホルダーとの対話を通じた役割の明確化を行い、①日本特有の創薬エコシステムの強化、②主にバイオ医薬品を対象とした生産機能誘致、③予見性改善と医薬品の価値に応じた薬価制度、④グローバルの規制調和、⑤新しい財源再配分モデルの導入方針の策定-を掲げる。
宮柱会長は、「アクションプランで書かせてもらったところは、全力で取り組んでいく。我々としてはアクションプランの実行とともに前に進んでいるという姿を是非お見せしたいと思っている」と意気込んだ。