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製薬協・宮柱会長「日本市場の魅力度高め、投資呼び込む」 26年度薬価改定でカテゴリー別実現を

公開日時 2025/05/23 06:29
日本製薬工業協会(製薬協)の会長に就任した武田薬品の宮柱明日香ジャパン ファーマ ビジネス ユニット プレジデントは5月22日、会見に臨み「日本市場の魅力度を高めて投資を呼び込むことが重要だ」と述べた。産業を取り巻く課題として、創薬力の低下、経済安全保障リスク、市場の予見性の低さをあげ、「それぞれの課題に対して、Co-Creation(共創)で取り組み、解決していく必要がある」と述べ、ステークホルダーとの対話を深めることで、課題解決につなげたい考えを示した。「あるべき医薬品市場としては、カテゴリー別にメリハリのある資源配分と、医療の高度化を考慮する必要がある」とも述べ、2026年度薬価制度改革でカテゴリー別の薬価制度を実現する意欲をみせた。

◎“不易流行”という言葉を大切に 受け継がれた伝統と価値観、変化への対応を

「私は“不易流行”という言葉をとても大切にしている。 脈々と受け継がれた伝統、そして価値を大切にしながら、時代や状況の変化に新しいものを取り入れながら対応していくこと。 今まさに製薬企業、そして私たちに求められているものではないかと考えている」-。宮柱会長は会長就任に当たってこう話し、継承と変革の両面が必要との考えを示した。

目指す姿は、「世界をリードする日本型医療モデルの共創」だ。日本の医療のあるべき姿として国民皆保険制度を堅持したうえで、「超高齢社会による医療ニーズの増加と人口減少による働き手の減少、限られた医療資源をより効果的にかつ公平にどう再分配していくべきか。さらに、科学技術やデジタル技術といった目覚ましいテクノロジーの革新に伴い、医療が高度化する一方で、地域や経済格差による医療の格差の拡大が顕在化する中で、がんゲノム、再生医療、またAI診断など最先端の医療をどう速やかに国民に届けていくか」と課題認識を“表明。日本型医療モデル”の再構築に向けて、「超高齢社会である日本が未来のあるべき医療の姿について深い議論を行うことで、世界をリードする立場になれると信じている」と述べた。

こうした中で、医薬品産業は、革新的新薬を通じた国民の健康増進に加え、日本経済への貢献、社会的な貢献ができるとの考えを示した。医薬品産業は製造産業の中でも国内粗付加価値(GVA)額が高いとのデータを示し、「高付加価値の医薬品産業への投資は、日本経済を牽引しながら、医療の進歩を支える国家戦略として高い意義を持つことを改めてお伝えしたい」と述べ、国として医薬品産業に投資する意義について言及した。

◎「いま、日本に投資を呼び込む機会」と訴え 予定性などに課題も「ポジティブな面も」

そのうえで、創薬力強化や国内の製造能力強化に向けて、日本に投資を呼び込むことが重要との考えを示した。宮柱会長は、「企業が国内で投資する上で、重要な指標の一つが革新的な新薬の価値が反映され、市場の魅力があるかということ」と表明した。米トランプ大統領が最恵国待遇価格としての薬価引下げを打ち出すなど、欧米諸国における医薬品市場が厳しさを増すなかで、日本市場については、「予定性などの薬価政策プロセスには課題がある。一方で、従前より日本が誇る薬価収載までのスピード、皆保険により必要となる医療へのフリーアクセスなど、ポジティブな面も多く持っている」と説明。「いま、日本に投資を呼び込む機会として、私たちは捉えることができるのではないか」として、制度改革を進める機会であると強調した。

◎社会保障費の“シーリング”を問題視 革新薬の維持を困難にする制度「関係者と議論したい」

特に問題視したのが、社会保障費が高齢化の伸び相当に抑制されている点だ。宮柱会長は、、経済動向や物価が反映されていないことに加え、社会保障費の削減額の7割以上を薬剤費から捻出している状況にあるとして問題意識を示した。また、「薬剤費の削減のみならず、不規則な制度変更は市場の予見性を低下させ、投資の魅力度を損ねる原因となっている。16年以降、特例拡大再算定や費用対効果評価、中間年改定の実施など、業界に対するネガティブインパクトのある制度変更が継続し、またその詳細な内容も直前で決まるなど、投資判断を鈍らせている。2024年においてはイノベーションを促進する制度が導入され、革新的な新薬の価値が一定程度認められ、薬価に反映されているが、25年は中間年改定の実施など、日本はまだまだ予見性が高いとは言い難い状況にある」との見方を示した。

また、新薬創出等加算品の薬価維持、市場拡大再算定の特例廃止、費用対効果評価制度の抜本的な見直しを例にあげ、「革新的な医薬品の薬価維持を困難にしている制度の見直しについて、関係者と議論したい」と話した。

このほか、医療DXについて「ヘルスケアエコシステムを構築する各ステークホルダーにおいて、効率化、そして質の向上に位置するもの」として改革を加速させる必要性を強調。「製薬協としては、特に創薬や育薬、医薬品の生産効率や品質の向上のために、医療DXのさらなる活用を行い、限られた財源の中でより良い医薬品をお届けしながら、国民の健康に貢献できる環境を作り出していく」と語った。

宮柱会長は、「医療全体の好循環を実現するためには、製薬企業のみではなかなか達成することができず、医薬品業界を超えた企業、行政、そして国民の皆様と共にCo-Creationしていく」必要性を強調。「この目的を達成するためには、産官学、国民の明確な役割分担が必要であり、ステークホルダーの皆さんとの対話を通じて価値共創に向け、活路を見いだしていきたい」と意欲をみせた。

なお、同日開いた製薬協の総会、理事会では副会長として、奥田修氏(中外製薬社長CEO)、安川 健司氏(アステラス製薬会長)、岡田安史氏(エーザイ代表執行役)、手代木功氏(塩野義製薬会長兼社長 CEO)、木村徹氏(住友ファーマ社長)、眞鍋淳氏(第一三共会長)、上野裕明氏(田辺三菱製薬代表取締役)が選任された。


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