薬粧連合 骨太方針に向けて要望書 適切な価格転嫁が可能な薬価制度への抜本的見直し求める
公開日時 2025/05/29 04:48

医薬化粧品産業労働組合連合会(薬粧連合、松野泰士会長)は5月28日、骨太方針2025に向けた福岡資麿厚労相宛ての要望書を鹿沼均保険局長に手渡した。要望書では、「足下の物価上昇局面に即した、労務費も含めた適切な価格転嫁が可能な薬価制度への抜本的な見直し」を求めた。特許期間中の新薬の薬価維持も要望した。また、社会保障関係費の伸びを高齢化の伸び相当分とする政府方針を「見直すべき」とし、「医療の高度化や安定的な物価上昇が続く成長型経済に対応した、新たな社会保障システムの構築」を求めた。
薬粧連合は、製薬産業が我が国の基幹産業として成長することの重要性を強調したうえで、「日本の製薬産業は依然として厳しい状況に置かれている。その最たる要因は薬価」との見方を示した。社会保障財源のほとんどが薬剤費の抑制から捻出されてきたと指摘。2018年以降、薬価改定が毎年実施されるなかで、「かつてないペースで薬価が引き下げられている。その結果、公定価格に縛られた製薬企業は体力を失い、創薬力の低下や医薬品の供給体制の不安定化を招いているだけでなく、“人への投資”とは真逆の、人員の削減や賃上げの低迷といった状況に陥っている」とした。
現行の薬価制度が「物価・賃金の上昇を反映できる構造でないことも、製薬産業の逆風となっている」と指摘。「長年に渡って薬価が抑えられてきた上に、物価上昇分の上乗せも認められない現行制度のもとでは、製薬産業は成長できないどころか、国内産業を維持することさえ難しくなる。実際に、多くの企業が生産拠点を海外に移転させており、国内の従業員数が減少している。これらは、国民の命と健康を守る製薬産業に勤める一員として、また働き手を守る労働組合として看過できない問題である」と指摘した。
そのうえで、製薬産業を基幹産業するために、「第一に、これまでのデフレ経済に適合した社会保障費のあり方と薬価制度の考え方を改め、インフレ経済に適した制度の実現が必須」と強調。①企業の投資余力の確保、②研究開発支援、③適切な薬価評価、④持続可能な社会保障システムの整備-を行うことが不可欠としている。