
アルフレッサホールディングス(HD)の福神雄介代表取締役副社長は5月19日の2024年度決算説明会で、25年度から3カ年の新中期経営計画で掲げた最終27年度の医療用医薬品等卸売事業の売上目標3兆円について、「無理なく達成できる」と自信をみせた。コロナ禍に停滞した新薬開発が再開されて「過去にないほど新製品や適応追加の承認が見込まれる」ほか、「スペシャリティ製品にもバラエティが出てきて、プライマリーマーケットである程度の患者数が見込めるものもある」との認識を示した。そして、製薬企業MRの削減・適正化が進むなか、アルフレッサグループは「営業リソースを多く残し、この状況に備えてきた」と明かし、業界最多2600人強のMSをフル活用してプライマリー市場で“少ないMRを補完する卸機能”を発揮し、収益力の向上につなげる考えを示した。
◎医療用医薬品等卸売事業 27年度売上目標3兆円は「過度な計画ではない」
アルフレッサHDは、医療用医薬品等卸売事業で27年度に売上高3兆89億円(24年度:2兆6400億4800万円)、営業利益389億円(330億5500万円)を目指す。売上高は今後3年間で3600億円以上伸ばす必要がある。なお、27年度の営業利益率は1.29%(1.25%)となる。
福神副社長は、製薬企業のMR数の動向や新薬開発状況を念頭に、「(アルフレッサグループは)営業リソースを多く残し、この状況に備えてきた。新薬上市をより強く受けられる体制をもって、今後3年間を迎える」と述べた。また、「27年度の(3兆円の)売上目標は過度な計画ではない。市場の状況や私どもの営業リソースを考えると、これぐらいの売上成長は見込める」と強調した。
◎荒川社長 「低分子で生活習慣病に対する画期的な製品でてくる」 “ネオプライマリー”と呼称
荒川隆治代表取締役社長は、日本で今後上市される見込みの新薬について、「いまバイオ全盛時代と捉えられがちだが、その中にも低分子のもので、生活習慣病に対する画期的な製品が出てくるであろうと想定している」とし、「我々はこのような製品を『ネオプライマリー』と呼んでいる」と紹介した。福神副社長も、“ネオプライマリー製品”について、「スペシャリティ領域のように非常にシャープな適応をねらっているが、患者がプライマリーマーケットに多くいるタイプの新製品」と補足説明し、「スペシャリティ製品にもバラエティが出てきた」との認識を示した。
◎福神副社長 「プライマリーでしっかりプロモーションできる人的リソースが強く求められてくる」
そして福神副社長は、製薬企業MRが減っているなか、“ネオプライマリー製品”は徹底したターゲティングを行いつつも広く情報提供する必要性が出てくると見通し、「このギャップを埋めるべく、すなわちプライマリーでしっかりプロモーションできる人的リソースが非常に強く求められてくる。ここに当社グループの業界ナンバー1の圧倒的なMS数が差別化になると感じている。ここで収益力を向上させる」と展望を語った。また、製薬企業が強化しているデジタル戦略にも触れ、「デジタルだけで全てをこなせるほど、競争環境は軽くない」と指摘し、「私どもの人的リソースが高く評価されると考えている」と述べた。
◎新中計 トータルサプライチェーンサービスの進化拡大、事業戦略1番手に「MS力の最大化」
新中期経営計画では、医療用医薬品等卸売事業について、「お得意様・メーカー様から選ばれる卸に」なることを明示した。医薬品の開発から承認申請、製造、川上物流、川下物流、販売、市販後調査、ラストワンマイルまでを一貫して担う「トータルサプライチェーンサービス(TSCS)」を進化拡大させる方針を掲げ、グループの総合力を発揮していく考えを示した。
TSCSの進化拡大に向けた具体的な事業戦略の1番手に「MS力の最大化」を挙げた。業界ナンバー1の「圧倒的なMS数」を活用し、開業医市場では、▽ネオプライマリー戦略の展開、▽プロダクト・サービスの活用による営業活動の強化――を図り、「マーケット創造型プロモーション」を展開する方針を示した。ワクチンの普及拡大にも貢献する考え。荒川社長は、「MSの数を安定的に確保できている強みをフル活用する中で、ネオプライマリー製品について積極的な拡大を進める」と説明した。
病院市場では「治療開始前・開始後のプロセスサポート」を積極的に提案していく考え。例えばがん領域において、治療開始前はMSと診断薬MSが協力して情報活動し、治療開始後には薬剤の使用実態などを可視化できる個別化医療支援プラットフォーム「NOVUMN(ノヴァム)」を提案するなどし、「病院トータルソリューションを提案していく」とした。
このほかTSCSの進化拡大に向け、MS力の最大化のほか、▽全国ネットワークの強化、▽ソリューション事業の推進による収益基盤の構築、▽ステークホルダーが求めるロジスティックス体制の構築、▽グループ一体となった人的資本の戦略強化――の計5つの戦略に取り組む。
◎投資計画 3年累計で1200億円規模 新規事業に400億円
なお、グループ全体では27年度に売上高3兆3000億円(24年度:2億9610億円)、営業利益額435億円(同380億円)、3年間累計の営業利益額約1190億円――を目指す。ROEは3年平均で7%以上、投資計画は3年累計で1200億円規模を投じる。投資は、TSCSや再生医療サプライチェーンなど「新規事業」に400億円、メディカル事業/ソリューション事業/医薬品等製造事業の「成長事業」に300億円、物流センターや営業拠点等の改築・新築/システム投資など「基盤事業」に500億円――を投じる。
◎24年度の医療用医薬品等卸売事業 営業利益率1.25%、0.05ポイント悪化
24年度の医療用医薬品等卸売事業の業績は、売上高は前年度比3.9%増の2兆6400億4800万円、売上総利益は5.7%増の1599億3200万円、販管費は7.3%増の1268億7700万円、営業利益は0.1%減の330億5500万円――だった。売上総利益率は6.06%で0.1ポイント改善したが、販管費比率は4.81%で0.15ポイント低下。結果、営業利益率は1.25%で0.05ポイント悪化した。
国内医療用医薬品市場そのものが2.8%成長するとともに、同社の場合、特に新薬創出等加算品・特許品の販売増加で増収となった。利益面は、流通改善ガイドライン(GL)を遵守した適正価格での取引推進など売上総利益改善への取組みを進める一方、24年4月の薬価改定影響や仕入価格の上昇、人件費、物流費、減価償却費等のコスト増により、営業減益となった。
◎カテゴリー別売上構成比 新薬創出等加算品と特許品合計で8割超え
カテゴリー別の売上構成比は、新薬創出等加算品が40.5%(前年度38.9%)、特許品・その他が39.9%(37.9%)――で、特許期間中の製品群の合計で8割を超えた。一方、長期収載品は8.6%(11.3%)、後発品は11.0%(11.9%)――でシェアはさらに低下した。
◎25年度は増収・営業増益を計画
25年度の医療用医薬品等卸売事業の業績予想は、売上高は5.1%増の2兆7760億円、売上総利益は3.6%増の1657億円、販管費は4.1%増の1321億円、営業利益は1.6%増の336億円――とした。売上総利益率は5.97%で0.09ポイント低下、販管費率は4.76%で0.05ポイント低下となり、営業利益率は1.21%で0.04ポイント悪化すると予想した。
クレコンによる国内成長率3.4%を超える、5.1%の増収を目指す。物流センター新設による減価償却費や人件費、物流費等の販管費は増加するものの営業増益となる計画を立てた。