【有識者会議・9月22日 有識者会議の構成員と製薬業界5団体との質疑 発言要旨(その4・後半)】
公開日時 2022/09/26 04:50
厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の第1回会合が9月22日に開催された。この日は日薬連など製薬5団体から業界の現状と課題に係るヒアリングを行った後に、有識者会議の構成員との間で質疑が行われた。本誌は質疑の内容について発言要旨として公開する。
◎遠藤座長 新たな薬価制度の提案についての質問
遠藤座長:各団体が具体的な薬価制度の提案をしているので、私から提案されている制度について確認をさせていただき、それをベースに次回以降議論したい。新薬との絡み、新薬へのアクセスということで、製薬協がかなり明確に出されているのと、EFPIAが出されているところもある。いくつか質問させていただく。
まず製薬協についてだが、新たな薬価制度の提案ということで、2つ出されている。特許期間中の革新的新薬を改定の対象から除外するシンプルな薬価維持ということ。現在の新薬創出等加算が2010年に施行導入されたときに、薬価制度部会の部会長は私で、中医協の会長も私だったが、これは出たときかなり画期的なものであると思ったし、色々な問題もあるなという風に思った。試行的に導入したということで、その後色々なことがあり、調整がされていて、現在に至っているということだ。当初の頃と比べると厳しくなっているということは間違いない。そこが問題だということで、当初のようなシンプルな形に戻すべきだという風に言われているんだと思うが、ひとつ質問は、革新的新薬を市場実勢価格で調整しないということ。革新的新薬はどのように評価をするのかということで、新薬創出等加算の場合はご承知の通り、平均乖離率を下回る医薬品はマーケットが革新性があると評価しているからだということだ。それ自体が正しいのかどうかという議論もその後出てきたわけだが、ここで言う革新的新薬というのは、決められたら価格が維持されるので相当大きいわけだが、何をもって革新的ということが言えるのか。
その次だが、13ページ。上市後の位置づけの変化等に基づく価値の再評価、製薬協が常々言っていることだと思う。このときの問題は、効果の高い場合には、価格を引き上げるという方向で働くので、そういう声が出てくると思うが、効果が低い場合には、価格を引き下げるということも前提にしているのか。企業が自発的に効果が下がったことはたぶん出さないと思うので、これはどこがやることになるのか。事後的な効果の追認について。これは確認させていただきたい。
17ページ、類似薬の選定の必要性ということでこれは少し読みづらいが、類似薬効比較方式の加算があるが、その加算をもっと多様な価値で評価するということをお書きになっているんだと思うが、それで良いのか。原価計算方式と並べられているが、原価計算方式はむしろやめて、広い意味での類似薬効比較方式に統一する、どんなものでも効果を比較することができるので、そういうことでここに書かれているのか、どういう意味合いで書かれているのか、原価計算方式の扱いをどう考えているのか。
19ページ。ドラッグ・ラグの緊急対応と言うことで日本に上市されていないような海外で上されている薬に対して緊急対応的にインセンティブをつけるという話だと理解したが、それでよいのか。そこでEFPIAとも絡むのだが、資料にページ数がないのだが、参考で3極の資料が掲載されている。日本の先駆的医薬品制度は、日本で最初に上市された場合は高い点数を出すというものだが、これが難しすぎて、条件が厳しすぎてあまり適応の対象になっていないということを書かれている。現行の日本の制度の何が厳しすぎるのか、お分かりになれば教えていただきたい。そのことがわかれば、製薬協が19ページで言われていることのひとつの回答になるのかなと思う。
最後に製薬協への質問に戻るが、医薬品産業政策という話が出ているが、私は薬価基準制度で自国の製薬産業の競争力を高めるというのはなかなか難しいだろうと思っている。私個人的には日本の製薬産業が発展することを非常に望んでいるが、薬価基準制度、社会保障制度というのは外資、内資全く無差別に対応するというものだ。別の仕かけが必要だと思っている。ここに書かれていることも、そういうことを意味しているのかどうか。
◎岡田製薬協会長「革新的新薬はグローバルスタンダードな価値付けをして欲しい」
岡田製薬協会長:最後に指摘された医薬品産業政策について回答する。先生のご指摘の通り、日本の薬価制度について、特に革新的新薬についてはグローバルスタンダードな価値付けをしてほしいということだ。では、それが産業政策かどうかというのは全く別の話だと思っている。革新的新薬について、グローバルスタンダードな値付けをしていただくということはすなわち、国民の皆様にタイムラグなく、画期的な新薬をお届けできるという大きなポイントになってくると思っている。
産業政策ということで見ると、いまや科学技術、イノベーションに関する競争は、企業間はもちろんあるが、国家をあげて様々な支援をしているというなかで動いている。国家支援の観点が必要だという風に思うし、いわゆる芦田先生のおっしゃった日本におけるイノベーションのエコシステム構築という観点がある。健康医療ビッグデータを含めたデータの利活用、いくつかの要素によって、産業政策というのは講じられていくと思う。おそらく内資系企業も、長期的に見ると、決してオプティミスティクとは言えないような日本市場だけで産業が成立していくのかというと非常に難しいと思っている。
まさに世界で勝てるというか、医薬品という商材はボーダレスであるので、日本への貢献はもとより、国家の経済成長の牽引となりますと、米国をはじめとする世界の市場でいかに我々のスタンスを発揮できるかというところが一番大きいところではないか。
◎赤名日薬連薬価研委員長「早期上市インセンティブは緊急性の高いドラック・ラグの対策として適用」
赤名日薬連薬価研委員長:薬価維持制度の対象品目についてだが、我々が今イメージしているのはいまの新薬創出等加算の品目要件、それが準用されることを想定している状況だ。後段にあった早期上市インセンティブの品目についても維持すべきだと考えている。品目用件を現状から大きく拡大するというようなことは考えていない。
再評価についてだが、維持と再評価はセットであるというコンセプトで出している。再評価のタイミングだが、何らかの評価、新しい薬が入ってきてガイドライン上の位置づけが下がったとか、新たなエビデンスが出る、事前に企業と合意したタイミング等で速やかに行うということで、先生おっしゃられた通り、上市後に得られたエビデンス、ガイドライン、位置づけの変化に基づいて引き上げもあるが、当然引き下げもあるということを想定している。
早期上市インセンティブだが、透明性・納得性の高いプロセス、これについては広く適用すべきと考えているが、まずは緊急性の高いドラック・ラグの対策としてこういったものを設定している。まずはそこから始めたいと考えている。具体的にどういうものかということだが、値付けの難しい品目、つまり日本で評価することが困難、適切な類似薬の選定が難しい品目だ。患者アクセスの観点から、それに対してこのプロセスを適用する必要があるということで、具体的にいうと、例えば欧米から1年以内に収載される品目や、薬理作用が既存薬と比べて特性が大きく異なる品目をイメージしている。
多様な価値の点だが、今後詳細な検討が必要かと思うが、社会保障の負担の軽減になるようなものに関しては積極的に評価すべきではないかと考えている。具体的な価値をどう定量化するか、価格にどうやって反映するかについては多くの課題があるということは我々も認識している。様々な価値を評価するというなかで、柔軟な類似薬の選定に生かしていくという考え方もあるのではないかと考えている。また。仮にこのすべての価値が価格に反映されるとなった場合にあっても、出来上がった価格に対して国民への説明責任を果たす要素にはなるのではないかと考えている。原価計算についてだが、これも類似薬を柔軟に選定するようになれば、原価計算方式で算定される品目は少なくなると考えている。ただ一方で全てなくしていいのかということについては、まだそこまで我々も考えていない。ルール上、選択肢からなくして良いとは考えてはいない。
◎岩屋EFPIA会長 先駆的医薬品制度 4つの指定要件全てを満たすことがハードル
岩屋EFPIA会長:先駆的医薬品制度のどこが厳しいかということだが、私自身も網羅的に全てわかっている状況ではないが、4つの指定要件全てを満たすとなっているが、ここがまず1つは目のハードルとして非常に厳しいという感覚でいる。
特に対象疾患の重篤性については、米国のブレイクスルーセラピーや欧州のプライムでは、あまり見られていない点だと思う。そういったことも含めて要件が厳しいということと、優先審査に乗るのは素晴らしいと思いつつ、優先審査の審査期間以外でも、審査前で色々な準備をしている部分があったり、審査期間が9か月から6か月に短縮されるが、感覚的には何かプロセスを簡略化して6か月にするというよりは、9か月かかっているものをとにかく皆で努力して6か月にしようという部分があって、非常に負担が重いというのがあるかなというふうに考えている。そこまでする割には薬価の加算が少ないというところも含めて、メリットがあまり感じられないという実態がある。
◎遠藤座長 製薬協の緊急対応策 「モラルハザードを起こすのではないか」
遠藤座長:(製薬協のドラッグ・ラグの緊急対応案について)意図的に、このような加算を取りたいために、わざと上市を遅らせるようなモチベーションを与えてしまうことはあり得ないのか。日本への上市をわざと遅らせてこの適用をということになるモラルハザードを起こすのではないか。
◎坂巻構成員「価値評価によって、果たして高い薬価になるのか」
坂巻構成員:日本の薬価が安い、特に原価算定において安いということは菅原構成員のプレゼンでもわかったが、なぜ安いのか。安いことについて、価値が評価されていないことによって安いのか、あるいはそれ以外の理由なのか、ということを確認したい。きちんと価値評価すれば高い薬価になるのか、もややわかりづらいのでと感じている。特に製薬協では価値評価を今後、より幅広く行うということをおっしゃっているが、価値評価によって、果たして高い薬価になるのかどうかを確認したい。
◎赤名薬価研委員長「間接的な価値の評価もある。値段を高くするだけとは考えていない」
赤名日薬連薬価研委員長:先ほど申し上げた通り、価値をどのように定量化していくか、価値をどう反映していくかということについては議論があると思うが、単に値段を高くすることもあるかもしれないが、むしろ価値を類似薬の選定に柔軟にどう活かしていくのかといった間接的な価値の評価もあるのかなと考えている。直接価値を積み上げることで値段を高くするだけとは考えていないという状況だ。
◎坂巻構成員 イノベーションをどう評価すべきか
坂巻構成員:価値とイノベーションという言葉がよく並列的に出てくる。かなり同じようなことを言いつつも、違っているところもある。イノベーションのなかには、連続生産など製造技術の革新によってむしろ原価が下がって、価格としては安くさせる方向に働く部分もある。そういったこと部分をどう評価するのかということをいつも悩んでいるのだが、どのように考えているのか。
遠藤座長:難しいですね。
◎眞鍋日薬連会長「出荷価格をどうやって下げられるかという努力まですべきだと思っている」
眞鍋日薬連会長:例えば、きょう私の提案の中で、出荷価格を示した。それについても、将来的にはメーカーとして、出荷価格をどうやって下げられるかという努力まですべきだと思っている。ここで原価(COGS)が下がれば、反映できるようなもっとオープンなシステムが必要だと思っている。どうして価格がついて高いのか、下げられるのかということを情報として提供できるシステムがよいのかな、と思っている。
◎坂巻構成員「ディスインセンティブにならないような価格設定について議論したい」
坂巻構成員:そういった技術革新が、薬価が下がることによってディスインセンティブにならないように、どういった価格設定にすれば良いのかという議論は、これからぜひ一緒にさせていただきたい。
石牟礼日薬連薬価研:イノベーションの評価という部分に関してだが、現状新薬の算定の際に見られているのは、患者さんにとっての価値、患者さんにとってどういう医療的なベネフィットをもたらすのかという部分を中心に評価をされていると認識している。例えば製造のイノベーションについては評価しづらい部分であることは間違いないと思っている。
特に国内生産をしているものに関しては、原価の中身というのは詳細に見ることができるので、そういったものに対してむしろ、これが必要なのか不要なのかと厳しく見られる状況がある。一方で、最近は海外から先に上市したものについて、日本で類似薬がないので原価で算定するという場合であると、外国の価格をベンチマークに見て算定しているという実状もあるのではないかと結果的には見ることができる。結果として、菅原先生が発表されたような内容の一因でもないかと思っている。
坂巻構成員:価値を「患者にとっての価値」とおっしゃったが、もちろん社会、医療システムに関する価値というものもあると思う。そういったことをきちんと評価していくということは大賛成なので、具体的にどう評価するのか、どう薬価に反映するのかということに関しては、重要な議論だと考えている。
◎菅原構成員 イノベーションを原価計算方式で評価することに違和感
菅原構成員:価値についてだが、イノベーションは原価計算方式で評価することに関しては違和感を覚えている。いまの医薬品の開発は、昔ながらの垂直統合ではなく、水平展開、色々なところからシーズを買ってきて、探索・発展させ、最終的にマーケティングまで行う。そういう市場になってきている。原価まで詳らかに持ってきて、原価の中で薬価をつけていくというのは難しくなってきているし、実態にも合っていない。かつ膨大な人件費や時間を投入していることに対するリスク負担などは明示的に原価のなかで評価されていない。これも実態に合っていない。最終的に、イノベーションはどこで評価しているかというと、あえて言えば利益率で調整しているわけだが、政策投資銀行の産業平均ってやっている。画期的なものを作っても産業平均でしか評価されないという話なので、いまのやり方のツールとしては、イノベーションの評価に合っていないと思っている。確かに価値評価でやるべきだという議論があって、私もそうだと思うが、色々な価値を考えないといけない。どうやってやるかと言う具体的な話は難しいが、ただ少なくとも我が国けが、イノベーションの評価を原価計算方式でやっている。ほかの国は何らかの形で価値評価を行っている。ベクトル合わせの方向性としては、わが国でも少なくとも価値評価をやる方向で制度を作っていきましょう、ということにすることで、少なくとも高くなるか安くなるかわからない。定量的でできないもの、アプレイザルのような形で事後的に定性的な評価も入れないといけないと思うが、グローバルなイノベーションの評価という形に、我が国のイノベーションの評価のあり方を考え方の方向性としてベクトルとして合わせていかなければ日本の国にイノベーションは起きないと私は思っている。
追加で質問したい。日本の国に良いものが入ってこなくなってしまうという危機感はすごくあると思う。その理由には、イノベーションをきちんと評価できていない、付け方の問題もあるし、他の国に比べて薬価が劣後しているものが多い、価格が付いた後の扱いもイノベーションを評価してそれを維持するという話がだいぶ形骸化してしまっているということで、非常に危機感があるということだと思う。ただ本質的に新薬の問題も、ジェネリックの問題も、長期収載品の問題も、根本的な問題は、薬価が循環的に低下してしまうというそこに尽きると思う。なぜ薬価が循環的に低下し続けるのかということについて、薬価差のあり方というものについて共通認識にすべきだということは本当にそうだと思っていて、私もずっと考え続けているのだが、微妙な話になるが公的保険である社会保障の枠内の話で言えば、実費償還が筋だろう。購入価の実費償還が筋だろうと思う。そういう意味では、医療機関は薬価差を追求して、薬価そのものではなく、薬価差の競争になっているということが構造的な問題である。医療機関が安く買ってくださっていることで最終的な国民負担が下がっていることも事実である。それに対して何らかの補正をかけるということに関しては、きちんと国民的な理解を得られるだけの何か理由がなければいけないと思っている。
薬価差益と言うのは医療機関、保険薬局の経営原資になっているということは、実際あるんだと思う。公的保険のなかで非営利原則というのを徹底的にやるとなっている中で、その部分はある意味では営利原則を認めているという変則的な状況になっていると私自身は思っている。ではそれがいけないか、というと、国民に還元できるような薬価の引き下げを行っているということも事実なので、一定程度の役割として医療機関や薬局にそれを戻す、クローバックするというやり方や、本当の意味での随時改定という形で、実費償還だという形を完結するのか、薬価差益を取るのは誰のものかということをきちんと整理しなければいけないと思う。医療機関が何らかの形で貢献しているのも確かだし、最初に薬価を決めた段階では薬の価値を評価して公的保険で決めたわけなので、価値を少なくともいまの段階では認めているので、医療機関ではなく製薬企業に返すべきだという議論もできると思う。実費償還なので、やはり国民に全額戻すべきだという議論もあると思う。そこの議論をきちっと整理したうえで、万が一医療機関が困るのであれば、そこに対する財政的な手当てをどうするのかということを考えるべきだし、製薬企業にどれだけのものを戻すのか。
結局、様々な議論のなかで、MRの価格交渉を禁じて、これから先はMSの自律的な価格交渉にしてくださいという歴史的な経緯があった。残念ながら、それがうまくいかずに価格が下がっていて、リベートやアローアンスが残っている。残念ながら、この状況を30年なりやってきたなかで、バイイングパワーを落とすのか、セリングパワーをあげるのかという2つの選択肢がある。セリングパワーをあげるというのは、卸の価格交渉能力は医療機関に対しては無理なんだと。そうであれば、循環的な低下しかありえないという話になる。そこを守るための公定マージンなどが次ぎに出てくる。業界として本当にやれることはないのか。バイイングパワーに対してできることがあるのかどうか。薬価が循環的に落ちているということが根本的な問題で業界としてやれることはないのかということは、確認しておきたい。
◎遠藤座長「競争やイノベーションが繰り返されるのに、なぜ15年間価格を維持するのか」
遠藤座長:関連して私からひとつ申し上げる。新薬創出等加算を入れたときに議論として出てきたのは、なぜ価格を15年間も維持しなければいけないのか。工業製品は通常、競争過程で価格が下がる。価格が下がらなければ、機能が良くなる。そういう形で競争やイノベーションが繰り返されているのに、なぜ15年間価格を維持するのか。こういう意見は当然、ある。そこに対して、どう捉えるか。ドラック・ラグの障害になっているんだということで、ひとつの回答は出しているわけだが、それだけで回答と言えるかどうか。
◎赤名薬価研委員長「後発品使用促進と同時に特許期間中でインベストしたものを回収せよ」で当時は薬価を維持した
赤名日薬連薬価研委員長:いまの意見だが、新薬創出等加算が入ったときは、長期収載品でもかなりビジネスができるビジネスモデルがあった。それを後発品の使用促進と同時に特許期間中でインベスト(投資)したものを回収せよ、ということで薬価を維持するとなったと思っている。医薬品を工業製品と同じに考えていいかわからないが、例えば米国では、上市したときが一番低く、LOEを迎える最後が最も高い価格になり、価格がどんどん上がるという議論があると思う。その代わり特許が切れたら非常に安いジェネリックで、市場が新陳代謝していく。そういったビジネスモデルもある。そこをどう考えるのかというのがひとつあるのかなと個人的に思う。
◎菅原構成員 GEの産業構造「わずかな品目の会社が実態としてかなりあるのでは」
菅原構成員:お答えに窮することは重々承知しているが、ジェネリックの産業構造について一点、質問させていただく。ジェネリックだけでなく、一般のメーカーも様々な原材料価格高騰や為替変動で苦しんでいることは非常によくわかるが、ジェネリックでは50品目未満に148社が参入している。私自身も後発品の研究をしてきたが、零細企業が、200社以上残っている。数も漸減しているとは思うが、正直あまり減っていないだろう。ごくわずかな品目しかやっていない会社が、実態としては精査するとかなりあるのではないかと思っている。非常に厳しい言い方だが、国は安定供給を図るうえで、十分な体力を持っていないような企業がある意味では参入しているし、かつそれが整理されないまま、存続するようなメカニズムになってはいないかというところが非常に気になっている。この辺はいかがだろうか。
◎高田GE薬協会長 特殊な剤形に特化した企業「不要なものの選択肢ではない」
高田GE薬協会長:品目数が非常に多いという整理されていないのではないか、というご指摘だが、この50品目未満の会社が148社と説明させていただいたが、このなかには規格揃えやラインナップの補完という意味で新薬メーカーが後発品をカテゴリーとして取られているものも含まれている。例えば、点眼薬や点鼻薬、テープ剤など特殊な剤形に特化した企業が数少ない品目を取得されているものも含まれている。そういったものは、不要なものの選択肢ではないのではないかと思っている。一方で、これまで後発品80%を目指すなかで、各社が異業種、海外も含めて参入してきて、皆で80%に向けて増産をしてきたという事実がある。そのなかで、もしかしたら企業数も品目数も増えてきたという実態は確かにご指摘の通りあるかなと思う。
現在、不採算品目が増えてくるなかで、各社今まで通り増やしたまま、それを全て、品質確保・安定供給し続けられるかどうかといった観点では、自分たちの得意な領域や、剤形、生産ラインに応じた生産ということに少しずつ集約化していると感じている。方向性としては間違ってないのではないかと思っている。
◎小黒構成員 物価上昇と円安の動きについて
小黒構成員:追加で質問する。物価上昇と円安の動きが気になっている。報道では、日本とアメリカの金利の差が原因で、円安は一時的な現象だとされている。財務省の国際収支統制を見ると、昨年10月、12月くらいから、貿易赤字が累積している。これは、直接投資とかであれば、向こうの現地法人がドルを持っていて円に変える必要性はないのだが、貿易の場合を決算しないといけないので、為替市場で需給関係で、ドルに対する超過圧力が発生している。これが長期的な円安のトレンド生んでいる可能性がある。そうであるとすると、一時的な現象ではなくて、円安も続くし、物価上昇も今後輸入物価の上昇は続いていく。そのときに、例えば再生医療等製品のキムリアなどは知財が大体5000万円くらいだったが、1ドル100円の時と150円の時では、値段の付け方が変わってくる。日本の場合3000万円くらいをつけていたが、要は、円安が進んだなかで、グローバルファーマにどういう影響が出てくるのか。価格がより低くなるような形でついてくる。それで毎年、中間年改定で薬価が下がっていく。国内企業ではやはり物価が上昇しているところで、資料が出ているが、一時的な現象ではなくパーマネントなショックだった場合、いまの制度だと、物価上昇を緩和するときに消費税を引き上げたときには緩和するが、日薬連などは、1974年の緊急対応を資料に出しているが、そうはいってもパーマネントに処置するようなものはない。そうすると、どういう形になってくるのかということをもう少しご説明いただきたい。
◎高田GE薬協会長「半数以上が原薬を海外から購入している。影響が非常に大きい」
高田GE薬協会長:低薬価品を多く抱えているなかで、資料9ページにも示した通り、すでに現象として原薬が高いものが数多く出てきている。ジェネリック医薬品の場合、半数以上が原薬を海外から購入しているということで、その影響が非常に大きい。そもそも、企業や剤形によるが、製造原価は原価の6割から8割を占めている。そのなかで、原材料費が半数以上を占めているということで、非常に大きな影響がいまも出てきているし、今後さらに価格交渉中のものも多数あるということで、大きく影響が出てくると考えている。
錠剤とは違い、注射剤等では、包装、資材関係の原材料費の割合が非常に大きいので、現在の為替あるいは原油高の影響は非常に大きいということと、我々は生産を主体とする企業が多いということで、現在のエネルギー価格の高騰というのが昨年から比べて今年ですでに倍近くの電気・水道代となっているので、生産の原価にあたる影響も非常に大きくなってきている。いまご指摘いただいた、一時的なものなのか、もう少し続くのかということによっては、非常に大きな影響が続くということだと理解している。
◎岩屋EFPIA会長 円安は「日本のマーケット価値、サイズが相対的に小さくなる」
岩屋EFPIA会長:全体像ではないかもしれないが、基本的には円安になるということは、日本のマーケットの価値、サイズがまた相対的に小さくなるということだ。社内の環境で申し上げれば、きょうずっととお話ししてきた状況がさらに深刻になるということだ。それが直接的な影響になる。マルチナショナルな企業の場合は、基本的には我々も輸入しているので、原価が上がって、売上が減って、利益も減る。こういう状況で、統計とればすぐわかると思うが、日本のマーケットは世界で2番目、3番目だったが、場合によっては、順位がもっと下がると考えている。
坂巻構成員:今回、バイオシミラーについてはPhRMAの資料にあったくらいだが、日本においてどこの業界団体が産業振興について意識的に担当しているのか。また、菅原先生の先ほどのお話にもあったが、ジェネリック医薬品の再編についてどう考えるのか。再編するとすれば、薬価制度として、どういった仕組みが望ましいのかということについて、発言だけしておきたい。