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【有識者検討会 10月27日 議論その2 薬価流通政策研究会・くすり未来塾、新時代戦略研究所・INES】

公開日時 2022/10/28 07:00
厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の5回目の会合が10月27日に開催された。この日は、薬価流通政策研究会、新時代戦略研究所、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、日本医療政策機構の4団体からヒアリングを行った後に、構成員のメンバーとのディスカッションが行われた。本誌は、会議冒頭のヒアリングから薬価流通政策研究会(くすり未来塾)と新時代戦略研究所(INES)の発言要旨を公開する。

遠藤座長:本日は医薬品産業あるいは薬価政策等々について調査研究提言などまとめているシンクタンク、コンサルティングファームの4団体から、それぞれの提言や考え方を頂く。できるだけ幅広いご意見を反映したいというような趣旨だ。進め方としては、4団体から発言を頂いた上で、構成員の皆さんとディスカッションしたいと考えている。

では、最初に薬価流通政策研究会・くすり未来塾からお願いします。

長野明共同代表:一般社団法人医療・医薬総合研究所、くすり未来塾共同代表の長野明です。資料1に沿って話を進める。紙ベースの参考資料として配布されている資料が2つある。1つが横長のもの。「医療先進国としての明るい未来を目指して〜医薬品制度改革提言について」提言Ⅳとタイトル化したもの。これは未来塾として4回行った提言の最新バージョンのFullペーパーとして、ご参考までにお届けする。それからもう一つが医療経済研究機構でくすり未来塾の研究会報告を掲載していただいた。それも参考資料として用意した。よろしくお願い申し上げる。

私は2006年7月から2011年10月まで中医協薬価専門部会の専門委員を務めた。当時、製薬産業側の専門委員として参画した。ちょうど新薬創出等加算の議論、そして試行的導入を中医協で決めて頂いた当時の産業サイドの当事者である。2008年から10年にわたって様々議論したが、既に十数年たっている。すでに私自身、この間、現役を外れていたが、昨年の秋ぐらいから共同代表を務めている武田俊彦さんと様々な薬価関連、流通関連などの議論、検討を今日まで進めてきた。その中で本日お声かけ頂き、このあと「資料1」に基づく詳細内容を武田俊彦氏から話してもらう。

私自身、実は基本的な姿勢というのが産業サイドの現役の時も、今日さらにそうだが、やはり国民、患者様があまねく医療先進国としての国民、患者様として、遅滞なく最新の医療が受けられる環境が必要だと思っている。その中で基本的な我が国の国民皆保険体制あるいは医薬品産業サイドなので、薬価基準制度などは大変素晴らしい制度だと感じ、今日に至っている。ただし、この有識者検討会の皆様の中で8月末以降様々ご議論を進めて頂き、現時点での状況が社会一般にもかなり事態が変わってきたということを社会全般が受け止めて頂いている今日だと思う。

産業サイドだけで見ても危機的な状況だと各団体の代表が主張されていた。私は産業サイドの危機的状況という言い方ではなく、やはり医療先進国の国民、患者様がやはり最新の医療をあまねく受療できるという環境を取り戻し、発展させることが日本の素晴らしい国民皆保険体制、あるいは医療保険制度のもとでの環境だと思う。その意味でこの有識者検討会のさらなる検討、議論を期待してやまないところだ。一応、口上を述べたので、この後、武田氏に全体をご説明いただく。

武田俊彦共同代表:それでは資料に沿って概要を簡略に説明したい。配付資料だが、「医療先進国としての明るい未来を目指して~医薬品製造改革提言について」という表紙がついている。1ページめくると、この有識者検討会で検討される論点に対応して内容を整理してご説明する。全体版は机上配布させていただくということが書かれている。

3ページ目が表紙で、もう1枚めくって4ページ目が全体版と順序を少し変えているが、最初に「5本の柱」というものを提示している。薬価・流通政策の総合的な対策ということだが、公的な制度と民間企業活動が相互に絡み合う大変複雑な問題であって、なかなか関係者の意見も複雑に絡み合っている。そうであればこそ原点に返って、大原則から各論に下りてくるという方向が必要だと思う。そのときに「五つの柱」を考えた。一つはいま長野共同代表も申し上げた、国民に必要な医薬品が確実に届くということが医療先進国としての本来の目的ではないか。それから国際的に整合性があるイノベーションを促進する開かれた市場、それから企業活動に適切な環境を提供する予見可能な制度。これは世界の中の日本ということをきちんと意識をすることだと思う。

それから、四つ目に皆保険の話を書いているが、この我が国が誇る皆保険制度は制度創設から60年を経過した。いわば還暦を迎えたわけだ。一番最初の頃にあったお金の心配なく医療にかかれるというところから、現時点では必要な医療がちゃんと受けられるという中身の問題こそ持続可能性が問われている。とかく持続可能性というところで医療保険制度の赤字問題が取り上げられるが、単に黒字になれば良いということではない。これを確認する必要がある。そしてもちろん経済財政と調和のとれた制度というのが必要だ。こういうことなので、この五つの原則を、それぞれ横目で見ながらバランスの取れた制度改革議論が必要ではないかということだ。そのときに、くすり未来塾としては、なかなか議論されることが少なかった。産業界からの視点ということも踏まえながら議論を整理させていただいたということだ。

次のページに、総合的な対策の必要性と書いた。これは前回までのこの検討会の議論を拝聴していても、非常に深く、多面的な議論をして頂いているところは座長をはじめ構成員の先生方に敬意を表するところだ。

それに沿って、まずどういう問題を分けて考えなければいけないかということと、一旦分けた上でそれをどうやって結びつけるか、そして初めてその全体の対策を見ることができるのではないかという観点で一番としました。以上のような最適な政策の組み合わせということを考えるべきということを書きました。

その上で2番は、新薬の迅速導入のためには薬価、薬価と言っていますが、まず薬価を新薬の算定方式、それから既収載の改定方式の2つに分けた上で、この2つがどう関連しているのかを念頭に置く必要があると思った。次のページで後ほどご説明する。

それから医薬品流通については、これも議論あったが、薬価制度に起因する課題、医薬品流通独自の課題、そして相互に関連する課題というのを分析しながら改革の方向を探るべきであって、薬価と違い流通はこれまでの流通慣行その他もあるので、少し時間をかけて取り組んでいくことが必要だ。

資料6ページ。新薬の算定方式と既収載品の改定方式の関係性(イメージ)と書いた。左に「国際的な製薬企業の開発戦略と薬価制度」と書いたが、基本的に製薬企業は全部国際的な企業だって考えた方が良い。ご承知の通り特許も、いまや日本国の特許だけ取る人なんかいない。世界各国と競争を抑える。そしてビジネス展開をするというのがここまで開発経費が大きくなってしまった医薬品としては当然のこと。投資とリターンというふうに考えたときに、リターンの方は、新薬の価格と患者の数と、それから発売期間という構成要素にわかれていく。ところが、(スライドの)真ん中に書いてわかりにくいと思うが、開発を始めたときの類似薬の薬価がY1だとすると、開発をしている間にある製品は特許期間で維持され、ある製品は新薬創出等加算に該当せず、毎年薬価改定もあると、4年、5年経つと薬価が落ちてくる。海外は基本的に価格が上昇する傾向がある。結局どの価格で販売できるかわからないっていうことになると、企業としては、なかなか開発計画が立たないという問題がある。そして他の品目でカバーするとかができない小さな企業、それから患者の数を増やしてプロモーションを頑張れば採算が取れるようになるというふうに考えられるような従来型の医薬品ではない薬剤の開発をしている今の新薬費用にとっては、この予見可能性は非常に大事な問題になる。

したがって、私はくすり未来塾を始めたときに、このままではドラッグラグが起きて大変なことになりますと、特に希少疾病とかベンチャー企業が日本に投資できなくなると申し上げたが、その後、本検討会にも出されている製薬協の資料などを見ますと、今後大変なことになるということではなくて、今まさにスタートアップ企業、それから希少疾病の薬剤が一番ドラッグラグが起きてくるということ。これは一番最初に国民に最新の医薬品を提供するところから見ると、どうなのか?ということ。これを考えなければいけない時代だということだ。

次の7ページは、「薬価算定方式(改定方式)と医薬品流通の関係性」を書いている。これは前の有識者検討会で卸連から発表あったが、制度にずいぶん規定をされている、制度によっていわば歪められているという市場、そういう中で流通せざるを得ない卸の事情というのがある。大きく3つに分けると、私としてはそのカテゴリー別にみると、基本的に競争のない品目、いわば独占品目で他に選択肢がないもの。それから特許が切れて、類似品が出てきたもの、または特許中であっても競争品が出てきたもの。それから特許が切れて、必須医薬品その他長く使っている薬剤。このようにあのカテゴライズされると思う。いまの薬価制度は基本的に医薬品の価格が高止まりすることを防ぐ機能があるということを認識する必要がある。そしてそれは、これまでの日本の医薬品市場のある意味歪みがあったので、その歪みを是正する観点から使われてきたものだと思うが、独占品目も(価格が)下がってしまう、その不採算なのにまた(価格が)下がる、というような市場の歪み。それを前提とした制度設計ということをある程度変えていかなければいけないのではないか。このようなカテゴリー別に議論した方がいいのではないか、ということだ。以上が、まず分析をしてそれを結びつけて、相互にどう関連するかという議論が必要だということで申し上げた。

以下は、これまで有識者検討会に示された論点に沿って申し上げたい。革新的医薬品の迅速な導入について、資料9ページに示す。現行薬価制度の何が新薬導入を阻害したのかっていうことだ。

すみません。ちょっとここで付け加える。くすり未来塾は、広く一般の方にこの問題を分かっていただきたいということで、主にホームページで一般の方に情報を提供する観点から、いわゆる官庁でよくあるような正確性より分かりやすさを追求した言い回しになっている。少しですね言葉の使い方がきつすぎるという批判もあるかもしれませんが、その点ちょっとご容赦をいただきたいと思うが、現行薬価制度の何が新薬導入にとって阻害要因になったのかということで言えば、特許期間中も薬価が下がる、それからいまの新薬創出等加算の仕組みが研究実績のないスタートアップ企業にとって非常に不利だという話。それから予見可能性がないという批判は産業界からこれまで言われていた。加えて近代の安全保障の観点から評価不十分ではないかと言われている。

一方、右に書きましたが日本の薬価制度には実は良いところが沢山ある。なので、この阻害要因をなるべく緩和していくことによって再びドラッグラグを解消することは可能ではないかと書いた。

次のスライドで10ページ目(現行薬価制度の何をどう変えるべきなのか ~ 提言 IV)では、どう変えていくのかということについて、特許期間中に薬価が下がるという問題について、ルールの再度の見直しを行い、シンプルな制度にしていくべきではないか。それから流通面でも競争のない品目と競争のある品目を一括して交渉するという流通慣行がまだ残っている。こういうところは流通面から考えていく必要がある。それからスタートアップ企業に配慮した仕組みにしないと、これは産業構造の変化を考えた上で、いま変えておかないと致命的に日本の医療制度に影響が出てしまうんじゃないかということである。

お手元に参考資料としての全体版がついている。その50ページを見ていただきたい。「スタートアップ企業は開発のみならず承認取得で主役になっている」という資料をつけている。これはIQVIAの資料ですが、一番右側に2021年の数字でFDAの承認を取得したところの分析だが、2021年全ての新薬のうち53%はベンチャー企業、スタートアップ企業が開発をしたもの。その右を見ると、この53%の内訳だが、かつては大企業にライセンスアウトして大企業が承認を通ったということだが、2021年段階ではベンチャーが開発したもののうち76%が自分で承認を取りに行っている。こういう状況が世界の趨勢で、日本への開発を考える企業がこういう企業ばかりになると、そういう企業が開発をためらうような仕組みだと、国民の新薬へのアクセスという意味で問題が出かねないんではないか。こんな問題意識だ。

予見可能性については業界との意見調整をルール化したらどうかとか、例えば同じデータを業界と政策当局の方で見ることができるとか、様々な改革が必要になってくる。それから経済安全保障の観点からは“バリューベースド”の考え方を導入し、一部本当に必要なものについてはテコ入れをするということも必要になってくるんではないかと思う。

くすり未来塾は11ページ目になるが、第3の算定制度「企業届け出価格承認制度」というものを提唱している。11ページは左側半分は製薬協の提出資料になる。どんどん新しいモダリティが出てくるということが書かれている。遺伝子治療とか細胞医療とかこの対象患者がすごく限定をされる治療法は“Precision Medicine”という言い方があるが、こういう治療が主流になってきたときに、いまの類似薬比較方式が適当なのかどうか。例えば同じ乳がんの治療薬ですと、効き目は同じくらいだが、ただし遺伝子の型によって、片方は患者さんが1万人、片方が100人だというときに。これ同じ薬だから聞き方も同じだから同じ値段だっていうことで本当に開発が進むのかどうか。それからデジタルのように製造コストがないものをその原価計算方式と言っていいのかどうか。むしろこういうことは治療効果で測ったり、その開発コストを反映させたりすることが必要なのではないか。ということで企業届け出価格を用いてはどうかということ。先ほど冒頭に見て頂いた類似薬効比較方式のもとでは、その類似薬がどんどん下がっていく、そして医療保険の要請によって安い値段の方を参照する。海外価格調整も100%きかないでブレーキをかけておくということでは、当初想定した価格をつけることができない。それから、企業の側からすると、いま国際同時開発なので、世界的な薬価がついた方が良い、つかなければ日本では発売しないということになるので、なるべく企業の参入を心がけるのであれば、国際的な価格水準が当初につくことが望ましい。ただし、「医療保険財政への配慮」と書きましたけども一旦高い値段がつくとそこにぞろぞろ次の薬がついてくるっていうことが、かつて発生をしていた。なので、特例扱いをするならば、類似薬にはしない。2番目、3番目があの価格を欲しいと言ってもつけない。予想外に伸びたら、この薬価の固定措置を外すとか。医薬品のライフサイクルで見て医療費増やさないということで医療保険財政に配慮してはどうかということだ。

次の12ページは先ほど見ていただいたものと基本同じ。医療保険財政にとっての負担というのは、価格×数量、患者数、発売期間の3要素によって面積として求められるので、当初の部分を発売価格を国際的な比較水準にする必要がある、それをしないと日本に会社が来ない、ということであれば一定期間それを認めつつ、いまの算定方式で計算をした面積を増やさないようにするというような医薬品のライフサイクルでみた医療保険制度のバランスというのも一つあるのではないかと思う。これは企業側からするとこれではまだ不十分という声も出るかもしれないが、こういう形で少なくともバランスを取った議論をしてはどうかということで書かせて頂いた。

それから企業の“言い値”になるのではないかという話は、12ページの右側の「α」の上に、企業が取得する付加価値もこの薬は本当に付加価値があるんだということを最初に認めて、それが本当に付加価値があったのかどうかというのは、「α」から「β」に移行する段階で、その使用実態を踏まえて再評価すればいいんじゃないか。基本的に企業の側から見ると、国際的な同時開発、同時販売であるので、日本だけ高い値段をつけるということは企業行動として基本的にないだろうと思う。これは中医協がしっかり歯止めをかければいいのではないかと思う。

それから長くなって恐縮です安定供給について13ページ以降になりますが、14ページに先ほどの表があるが、不採算品目については引き上げの特例措置がいまでもある。これはいろいろ不十分な面があり、それが右側の「2番」のとこに書いていますが、いろいろ不十分な面があるので、これを考慮して改革をすべきだ。それからあの、不採算品の薬価を引き上げても、薬価がまた下がる。それについて流通、薬価、両方から安定供給を確保できるような仕組みをいまこそ考える必要があるだろう。次の15ページに、少し今までの提言になかったジェネリック企業の産業構造の話を少し書いた。いろいろ書いているが、いまのジェネリック企業の産業構造と行動パターンを変えてもらわないといけないので、これもちょっと言葉が適切ではないが、「短期売り逃げが生じないような産業構造」と書きましたが、とにかく薬価差で販売し、薬価が下がったら売り方をやめてしまう短期的に利益が取れればいい、というようなモデルに他の後発企業も引っ張られてしまうというような構造があるのであればこれを何とか変えていかなければならない。そして規制を強化するということも必要だろう。そして流通制度を含めた薬価、流通制度としては不採算品目、あの原価を踏まえて値上げが必要な場合がありますが、今の制度のもとでは薬価を超えて医療機関に販売することが事実上できない状況にある。したがって不採算品目を、必要な経費を盛り込むよう引き上げるとともに、原価上昇を随時反映できるように、本当にコストが高いものについてはコストが高い価格で卸が販売できるように、薬価差が生じない形の「購入価償還」。これはデジタル化の技術が必要だと思いますが、将来的には購入価償還を広げていって薬価差のない医薬品流通を目指した方がいいと思う。とりあえずここから始めてはどうかということだ。

流通に関して話が出ました。17ページです。流通に関しては、赤字受注が常態化している。これについてはデータがなかったのでくすり未来塾としては少数卸に協力を頂き、データの集計を行った。結果をみて私は驚いた。一番赤字受注になっているのが大店舗の保険薬局。しかし大店舗でない保険薬局も赤字になっている。これはやはり共同購入やボランタリーチェーンが広がっているせいだと思われる。

地域ごとのコストの違いを反映できていない。結果として、右側にありますが、これは単品ごとの価格ケースをやってもらったので残念ながら1卸となりますけれども、不採算比率が非常に高いものがある。そして基礎的医薬品、安定確保医薬品でも3割程度が不採算なっている。この辺を薬価、流通の両面から改革を考えていかないといけないのではないかと思う。

18ページ19ページは医薬品流通安定化戦略の概要を示した。最後20ページで、「現行薬価制度の何がおかしいのか」と書いている。わかりやすさ優先で言葉使いは不適切かもしれないが、医療機関向けの制度として、これが本当にいいのか、薬局向けの償還としてふさわしいのか、薬価差の問題をどう考えるか、ということがあると思う。どんどん時代が変わってきて、かつては医療機関、いまは卸の主な販売先は薬局ということになり、株式会社が参入して大規模化が進んでいるということを踏まえて、最後のページになるが、医療機関っていうふうに考えると、医療機関について薬価訴求動機の弊害もあるので薬価差を原則として否定していく。薬価差を否定するって意味では購入価償還というのが基本的には薬価差をゼロにできる。そしてこれを本当に価格維持が必要なところから広げていったらどうかということだ。

この場合、あわせて医療機関に対し、診療報酬上の手当をしていかないと、薬価差依存経営の改革ができないので、そこは必要だ。薬局につきましては、これは医療機関とは違う償還方式ということで国のガイドラインに基づいた適切な交渉を進めて流通改善を図ってもらいながら、医療保険財源によって生じる余剰成果については医療保険に還元させるということを考えていく必要があるのではないか。私から以上でございますありがとうございました。

遠藤座長:はいありがとうございました。それでは引き続きまして一般社団法人 新時代戦略研究所(INES)からご報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

朝井淳太代表:昨年5月に薬価に関する提言書を出させて頂いたが、関係者の皆様から賛否の意見を頂いている。当初の私の説明が至らない部分もあり、あたかも医薬品の予算にマクロ経済フレームを入れ、キャップ制を主張しているように受け止めがなされ、国内外で批判をいただいていることを承知している。

ただ、私たちは、世界中で開発された革新的な良い薬が日本の国民、患者さんにしっかりとタイムリーに届く仕組みを作らなければいけないという問題意識のもと、日本の市場がグローバル企業から見ても販売したい環境なっているのかという点を考えたときに、日本の市場が不透明な制度変更を繰り返し、決して魅力のある市場だと言えないのではないかという問題点にあたった。もちろん日本の承認後のアクセスは世界でも素晴らしいと思っている。承認後60日で薬価収載されるというのは本当に良い制度だと思っている。

一方で膨れ上がる社会保障費を考えたときに、財務省にとっても予算の見通しがつかない。価格が決まっていても、患者数は変動するため、今後も革新的な医薬品が出た際に突発的に予算が膨張するのではないかという懸念がある。それが続く以上、現行の制度で苅込は今後も続く。ますますグローバル企業からすると、日本の市場は魅力がなくなる恐れがあるのではないかという思いから、イノベーションをしっかりと評価できる仕組みと財政面での調和をどう考えていくのかという提案を発表させて頂いた。
しかしながら、私たちはこのINES案に賛成をして欲しいとか、これを導入すべきだというより、これまで様々な関係者と話をしていると、今の制度のままが良いと思っている人は少ないように感じた。むしろこのまま社会保障制度を維持していく中で、薬価制度を維持していく中でも、持続可能なものだと思えない。これまで薬価に関する抜本的な議論は様々な関係者に影響を与えることから、表立って行われてこなかったように思える。出てくる議論は例えば中間年改定をやめてくれとか、薬価を下げないでくれとか、イノベーションを評価してくれとか、陳情をみたいなことばかり。社会全体の枠組みの中でアイディアというものはなかなか出てこなかったのかなというふうに感じている。もしくは思っていてもそれを出せる環境ではなかったのかなというふうに思っている。

私達の提言を通じて少しでも社会保障制度の中の医療の部分のあり方について皆さんがいろいろな意見を出して議論しやすい環境ができれば良いなと思っている。そういった意味では我々よりもこの分野の専門家の方々がこの1年ですごく多くのアイディアを出し、私自身もこの間、このアイディアは良いなと思うこともたくさん目にしてきた。本日、おそらくお招きされている皆さんも、誰もこのままではいいと思っていなくて、いろいろ考えを出されてきたのだと思う。そこの良いところは詰めて国民のために良い制度ができ上がってくれることを願っている。

それでは早速ですが最初のスライドに入る。ここでは三つの問題意識についてまとめている。既に有識者会議の議論の中でも何度も出ているので、要点だけお話する。

2ページ目よろしくお願いします。まずは、いまの我が国の医薬品市場の見通しが明るい状況ではないということだ。2番目としては、その悲観的なっている一つの問題は薬価の付け方にあると考えている。値付けの問題、値付け後の取り扱い、再算定に問題があるということ。3番目、結果として現在の状況だけでなく、将来のパイプラインの状況を見ても我が国の医薬品市場が魅力的でないということがあり、それについて新たな改革案が何か考えられるのではないかと、学者の先生方を中心に製薬企業にも入っていただき、研究会を進めてきた。

3ページ目よろしくお願いします。こちらは見通しというより過去の話になるが、我が国の市場の動向を示したものだ。2010年から2020年までのタイムスパンで見ているが、2015年の前後で状況は変わっている。右側に数値をまとめておりますが、市場全体として2010年から2015年の間はプラス3.7で成長しているが、後半部はマイナス0.9でやはり全体がシュリンクしているということになる。ジェネリックは当然後発品の利用促進で増えているが、それも後半部は少し伸びが横になってきて長期収載品は大幅なマイナスだ。我々が最も危惧しているのは特許品だ。やはり特許期間中で収益リターンを返すべき特許品ですら、我が国はマイナスになってしまっている。ここは非常に大きな問題だと思っている。

次のスライドお願いします。先ほど言った通り、全てとは言わないがかなり大きな部分の問題として、薬価の問題があると思っている。各製薬メーカーが自律的な成長を目指して様々な企業活動を行って、マーケット自体は毎期頑張って上に伸びる方向で自立成長があるが、残念ながら2015年以降の薬価改定が企業努力をほぼ帳消しにする改定が行われていた。結果として2015年から2020年の全体の市場をシュリンクさせてしまった状況がこちらの説明になる。もちろん保険制度の持続可能性を考えると必要な措置だと思っているが、ただ産業政策として考えたときに、我が国の医薬品の魅力的な市場の発展を促すという意味では、今のままでいいのかという問題意識が出てくるかなというふうに思っている。

次のスライドお願いします。先ほどの話が、今までの足元の話でしたが、これから中長期的にどうなるかという話がこちらだ。これは予測だが、IQVIAのデータをもとに描かれているのだが、これから先も残念ながら我が国の医薬品市場の成長を見込めないというのがこの骨子ということになる。なかなかゼロより上に出てこないということになっている。

次のスライドお願いします。ここの図はこの会議でも何度も出てきているが、保険政策的に考えればある意味国内問題だが、やはり医薬品というのはグローバルマーケットで取引されているものなので、具体的に他の国の医薬品市場と比べて我が国が魅力的かどうかというのは大事なポイントかと思う。これは将来予測ですが、残念ながら一べつしてよくわかるように、他の先進国に比べて、あるいは日本よりも製薬産業が発展していないような国と言えば韓国などと比べても残念ながら我が国の医薬品の市場成長率は著しく低いというかマイナスになってしまっている。

次のスライドお願いします。医薬品市場のGDP比というところである意味では知識集約型の産業として、これからは国のリーディング産業としての役割を期待されると言われている。全体の経済の伸び、GDPの比率に対して、医薬品伸び率がどういう状況にあるかというのを見ると他の先進国において概ね緩やかに成長が見込まれているわけだが、我が国においてはGDP成長にすら達してない。つまりダウントレードのマイナスに線が引かれてしまっている状況だ。

次のスライドお願いします。もう少し細やかな視点で、我々が特に画期的でイノベーティブな新薬の薬価の付け方が非常に他の国に比べて低いのではないかという問題意識がある。当然、画期的な新薬ですので、原価計算方式でまず算定されるものを集めてみて、アメリカはかなり薬価が高いものがつくのは当然市場の仕組みが違いますから、そうなります。英国、ドイツ、フランスの保健、社会保険ベースのところで、薬が出ている欧州薬価を1というのを基準として、日本の原価計算方式でやられたものを、2016年から2021年の全ての製品について出してみた。

そうすると一べつしてわかるように、残念ながら原価計算方式でやられている我が国というのは他の国に比べて良い値段がついてないことがよくわかる。

次のスライドお願いします。類似薬効で作られているものについてもやってみた。全体として見てみると、やはり他の国よりもあまり高い薬はついていない。もちろん原価に比べると赤い点が上にいっているものもありますが、相対的に数的には類似薬効でも低いものが多くいことになります。

次のスライドお願いします。実際に高いものもあるが、どんなものが高くて、どんなものが低いのかというのは、類似薬効でお見せした通り、日本の薬価が他の国に比べて高いものもある。薬価の高いものと、5万円以上のものを見ていただくとわかるが、相対的に1よりも上に行っているものは非常に安い単価のものが、基本的には高く評価されていて、画期的なものは低く評価されているのが全体として多いのかなという印象だ。欧米に比べて高い薬価がついているものもないわけではない・それを見たときでも相対的に画期性が高いものを見たときに、日本では薬価がついていないなというふうな印象がある。

次のスライドお願いします。こちらは具体的な例ですが、市場拡大再算定の一つの大きな問題として、キイトルーダがあります。収載時から段階的に市場拡大再算定を数回行って非常にきちんと押さえられていたというのはそうですけど、結果として見ると、アメリカの薬価より日本は3分の1近くまで落ちているということで、欧米に比べても日本は低くなってしまっている。まずいと思うのは、右側の図です。キイトルーダはバイアルが伸びているわけです。つまり、マーケットの中ではきちんと評価されていて、自律的な企業努力をやってきているわけです。

バイアルが伸びているのに売り上げが落ちているというこの乖離は通常のビジネスの社会ではありえないかなというふうに思っている。保険財政的にわかるが産業政策的に言うとこういうことをやっていると、なかなか欧米企業が日本に良い薬を早く入れようということにはならないのだろうなというふうに思っている。

次のスライドお願いします。もう一つ、薬剤費の適正化というのは必要なことではありますが、適正化のあり方、どこにターゲットを当てていくか、というところのアロケーションの問題というのは問題意識としてございます。21年と22年の薬価ベースで薬の市場でおおよそ6000億くらいへこませたが、このへこませた中身を考えると、全体の6000億の削減のうちのおよそ20%の特定の23製品の市場拡大再算定で得られている状態だ。

いい薬画期的な薬のところにしわ寄せさせてイノベーションところで落としているという状況は、状況があまりにも強く働きすぎていないかというのが我々の問題意識である。算定の根拠が崩れて、それをやり直してもう一度やるならいいですが、暗に市場が伸びている。市場の伸びの部分だけで見て叩くのはいかがなものかという問題意識がある。

次のスライドお願いします。いまの新薬パイプラインを見ていただく。日本はあまりにも伸びてないし、中国もここには書かれていませんが韓国にもパイプラインの数ではキャッチアップされており、逆転されているような状況です。中長期的に見て日本の市場の魅力度は価格がつくかというところと、将来的な市場規模と制度の予見性やはり欧米から見ると日本は皆保険で安定的な需要があるわけなので、それはそれで国としてもしっかりしていますから、安定性や信頼性はあると思います。ただ、価格の問題とマーケットサイズもこれから人口減に入ってきますし、制度の予見性という意味においても、やはり市場拡大再算定等々の若干予見性が低くなっているものではないかというところが、新薬開発のデータに繋がっている大きな要因ではないかと考えている。

次のスライドお願いします。米国、欧州、日本で世界売上上位300品目ですのでかなりメジャーな製品ですが、メジャーな製品の中で入ってくる順位が日本は著しく遅いというところで、我が国は3番目に上市されているという割合が高いというところになっている。

これはドラッグラグの問題ですが、さらに言うと、この17.7%の未上市品というのは、入ってくればドラッグラグになりますが、下手をするとドラッグロスになるという形になる。ドラッグラグ、ドラッグロスの国内の問題が非常に大きくなってきている。国民に対して迅速かつ世界で画期的なものが出ればきちんと届けられるという意味においても、何とかしなければいけないという強い意識を持っている。

次のスライドお願いします。いままでのところが我々の研究会として積み上げ受けてきた問題意識のコアな部分だ。ではそれをどういうふうにしていくのか。一つは薬価政策は保険財政政策で重要な役割があるわけなので、薬価の決め方は産業政策的な側面がかなり大きな産業のあり方が変わってくる。このため薬価政策の中に、ミクロ的アプローチとマクロ的アプローチを組み合わせて、意識を持っておきたいというのが我々の問題意識となっている。

次のスライドお願いします。左側の課題の部分をお話した通りだ。薬価がなかなかいい値段がついていないということ特に原価計算方式というのは考え方としてどうなのかなというふうに思っている。イノベーションを評価するのに原価でやっているところは、他の国ではないわけで、やはり今、製薬の創薬の環境がずいぶん変わってきており、一社が垂直統合でやっているわけではない。水平分業が主体で、いろいろなところ、例えばバイオベンチャーから買ってきて開発したり、販売は他社と提携するなどいろいろなところでやっている。

そうすると、現下の把握は相当難しい現状がありますし、原価そのものの中には膨大なリスクの負担の計算が十分入ってきていない。さらに、産業政策的に問題だと思うのは、それを最終的に産業平均の利益率の調整という形で評価をしてしまうという部分で形は少し考えた方がいいのではないかというふうに思っている。あとは価格がついた後の市場拡大再算定ということになる。原価計算に代わる方式として何らかの価値ベースのものを考えていただければいいのではないかと思うが、ある程度価値ベースでやっていくと、一般論として、今までよりもより自由な薬価がつけられる。薬剤費高騰の懸念が生まれてくることだということになる。その意味で、外国価格の参照制度をきちんと入れております。それと同時に最終的な保険財政の持続可能性を考えて、そこに対してある一定の市場成長に担保できるようなGDP連動型の成長調整メカニズムを考えてはどうかという考えを我々は申し上げている。

これはキャップをはめたいという話ではなく、足元の市場の状況がマイナストレンドに入っているので、少なくてもGDPに沿った形での成長を担保したいという話です。なのでキャップというよりも成長を下支えする形で、バジェットがある程度決まってきますので薬剤費の中でのアロケーションの話がきちんとできる。つまり、現状のイノベーティブなものへのアロケーションがしっかりできていないので、昔のものが市全部市場に残ってしまっている状況の中で、そこをうまくR&Dのインセンティブになるようにアロケーションを変更しつつ、相対的に保険制度内での良い受優先順位が低いものは、より相対的に重要なものを守るために外に出すという議論は進んでいくと思います。その意味で、アプローチをかけているとご理解いただければと思う。市場拡大再算定の廃止をすると書いているが、単純に売り上げが伸びたものを切るというのはやめて、その代わり効果や用法用量変化という最初の算定ベースから違うところの合理性のある再算定を残すということになっている。

次のページお願いします。ミクロ的アプローチというところで新たな計算方式と原価に変わるもの、簡単に言うと価値ベースで考えていくのはどうかということ。このやり方は欧米のものが該当するライトモチーフになると思うが、ここは基本的に企業側に立証責任を負ってもらい、当局と交渉していただくことになる。

次のスライドお願いします。単純に経済評価として定量的にだけやるのでやるという話ではなく、定性的な価値や薬によっても違うので、方法論としてはいろいろあると思うが、メーカー側が立証責任を負い、いまの価格交渉の仕組みの中で、ガチンコでやっていただくということになる。
またその交渉の経験を積み上げる中で、こういうものの評価はこうしていく方がいいという形ができれば良いなというふうに思っている。あえて我々は評価の方法を決めてこうやるべきだという話はしていない。逆に厚労省の裁量として薬価の価値として何を評価するのかというのを企業側と調整する中で決めていくのが良いのかなというふうに考えている。財政調整できる仕組みの一つとして、外国価格の上限値は残しておく。一方で再算定については効能効果と用法用量変化以外のところを外してはどうかというふうに考えている。

次のスライドお願いします。実際にそれをやったときにどのようなものが対象になったのかというものをリストアップしているので後ほどご覧いただきたい。

次のスライドお願いします。今回、我々は特にイノベーション評価を大事にしたいというところに力点を置いているので、フォーカスを2点挙げたわけだが、マクロ的なアプローチとしては何を考えていくのかという話になる。

次のスライドお願いします。いまの市場の現状を簡単に言うと、数量成長があるが、それを上回る薬価改定の影響が出てしまっていて全体としてシュリンクしている状況だと思う。シュリンクした影響がイノベーションのところの部分に大きく影響がはねてしまっていて、それが中長期的に我が国の医薬品産業の成長や国民に良い薬が届くのかという懸念に繋がっている。というのも問題意識のベースになっている。それゆえ、事前に成長を促すような成長率を決めておく、当然薬価改定はこれまで通りやる。基本的に我々の提案は、現行の制度の枠内でやる前後で大きな変変更はしなくても可能な提案となっている。ただ一点、事前合意した成長率の範囲内で役割をするという考え方になっている。では事前合意した成長率というのはどのように決めるのかというと、これはいろいろ議論があると思うが、当面我々が考えているのは、中長期的な名目GDPを成長率の参照を置いてはどうかというところ。これは単年度でやるのではなく、ある程度中長期的な平均成長率を算出して、実態として5年くらいで更新するといいというイメージを考えている。

次のスライドお願いします。実際のところ、成長率調整メカニズムで何を使うかというところで、内閣府試算のベースラインの1.8という値を置いている。我々は1.8以外でももう少しリーズナブルな低い成長率というものも試算に入れている。後でご説明を申し上げるが、かなりし成長率が低く見積もられたケースでも、これまでのような改定を続けていくよりは、市場の成長を担保できるということを後ほどのシミュレーションで見せたい。
次のスライドお願いします。このアプローチの要諦というところで、平均的なGDPの成長率と医薬品市場の成長率を書かせていただいた。一番わかりやすいのは右側の図ですが、GDP成長率を横軸、医薬品市場成長率を縦軸に置いている。他の国が45線の上にプロットされている中、我が国はその下というか違うところに落ちてしまっています。ですので、誤解をしていただきたくないのは我々の提案は、状況を鑑みてかなくても正常なGDPの成長軌道には薬剤費市場の成長を載せていきたいということが提案になっている。

次のスライドお願いします。もう一つ、足元の状況で深刻な問題になり得ると思っているのは物価高騰のインフレーションの問題だ。見ていただくとわかりますが、CPI消費者物価指数とGDPデフレーターというのは2010年代から10年以上、急激に上がってきてはいないが平行線や緩やかに上がりつつある状況。

薬価は残念ながら今までの薬価制度の中で長らく物価がデフレ傾向にあったので、あまり問題にはならなかった。基本的にインフレに対する措置は全くなされておりません。消費税増税時には診療報酬本体に対して細やかな措置をやっているが、薬価に関してはほぼ調整が入っていない状況で、おそらくこれから物価が上がってくる可能性が高いと思いうので、これを考えると、毎回の薬価の中で、今後このようの影響を吸収できるということを考えても、ある程度GDPに沿わせるのがリーズナブルだと考えている。

次のスライドに2020年から2025年の間に現行の制度を続けた場合どうなるのか。それから我々が今考えている提言を入れたときにどうなるのかというのを、IQVIAのデータを使ってシミュレーションしている。

数量成長は両方同じになる。薬価の改定率を見ていただくと、全体としての市場成長率がその差分として出てくるような仕組みになっている。いまの現行ベースだとIQVIAも基本的に日本の市場はマイナスになると予想している。我々は、1.8と内閣府のベースを置いていますが、それでいくと一つのポイントは、若干の改定率が今までよりかなり低く抑えられるということかつ変動幅です。変動幅というのは予見可能性にも繋がるが、ここではかなりモデレートになり、結果的に20年から25年の市場をある程度一定の範囲の中で伸ばすことができるという仕組みになっている。産業政策的に考えたときには、予見性も高まって、全体的な薬剤の市場成長が見込めるというお話になっています性的予見性が両立されることも大きなポイントとなっている。

次のページをお願いします。では具体的にどのようにするかというと、①にプラスZ%と書いていますが、基本的に薬剤マーケットを基礎的医薬品、イノベーティブ新薬群と成熟品群の三つに分けさせていただいております。イノベーティブ新薬群というのはここでは試算する上で新薬創出加算がかかってくるものを置いております。成熟品群の中には長期収載品と後発品が入りますが、特にゾロ新のようなもの、成熟品群のゾロ新のようなものも成熟品群に含んでいる。

業界からゾロ新とはいっても特許が入っているものどうするんだという話があるかもしれないが、やはり日本のマーケットで通用しても世界で通用しないものについてはそこを借り少し刈り込むことが必要かなというふうに思っている。そして事前合意の総薬剤費が決まると、左から3本目の実際のマーケットが自律的な成長を行う形で基本的には伸びる。その伸びたときに、Z%の中で保険財政の見地から刈り込みを入れることになる。刈り込みを入れる際に、基本的には基礎的医薬品やイノベーティブ新薬分で行われず、成熟品群で広く薄く行うというのがポイントになってくる。。

次のスライドお願いします。調整後薬価はどうなるのかというと、市場実勢化と改定前薬価にスライド調整率を当然今の2%乗っかっていますが、市場実勢価に調整幅を乗せ、上乗せするとする現行の改定方法の中に我々はトータルとして改定率を発展的に埋め込みたいと考えている。そうすると2%よりもさらに下がるのは大丈夫か安定供給大丈夫かというお話が生まれてくるかと思うが、一定の市場成長を促しておりますので、基本的には我々の試算では2%より上乗せできる形での財源が生まれてくると考えている。皆さん懸念されますが、実際には我々は仕上がり調整と言っているが、最終的には2%よりも上乗せできるスライド成長率が資産上達成できると考えている。新薬の本体のところイノベーションを守りますが、それ以外を刈り込むという。ように現状を見えますが、実際のところ、シミュレーションしましたので次のスライドお願いします


17年から18年の改定をもし我々の提案でやっていたらどうなっていたというかということを試算してみた。左側が実績ベース。実際にプラス5.8で、改定前伸びたもの、10.6兆円までいったものが全体としてマイナス1.9の成長になってしまいました。9.8兆円と落としたということになる。その中で新薬創出加算品も落ちていますし、市場拡大再算定品も大幅に落ちている。成熟製品群全体も-9というような実際の動きでした。これを仮に我々のメカニズムでやった場合どうなったかというと、結論だけ申しますと、当然、新薬創出加算と市場拡大再算定品はいじらないのですが、成熟品群のところがマイナス5.8くらいで終わってしまいました。我々の研究会の長期収載品は使っているメーカーも入っている。よく理解されますと、今までの制度で随時改定をしていくよりはこちらの方が相対的に事業遂行上の予見可能性が高く、結果として改定率が緩和されるという意見もあった。

十分に制度をわかっていただけないと不安を感じると思うが、この制度をやると成熟品群のところで全部調整されるのは大変だという方もいるが、我々の試算では適切なルールとメカニズムを置けば、都度場当たり的裁量で行われる現行方式より基本的には産業全体にとってメリットが生まれる制度だと考えている。次のスライドお願いします。結局何が言いたいかというと、現状、国際的な医薬品市場の成長率予測の中で沈んでいる我が国の医薬品市場を少し上に持ち上げたいということになる。

少なくても安定的な市場だというところも、当面のところ日本はあると思う。承認制度もしっかりしているので、ものすごく高い成長率ではないかもしれませんが、少なくともこれくらいのプラス成長が安定的に見込めるのであれば、我が国が、これから先も医薬品市場の中で国際的に孤立したり、除外されることが一定程度回避できるのではないかという見通しを我々は考えている。

提言のまとめだ。当然ミクロ的なアプローチではイノベーションの評価という産業政策的な製薬企業に対する市場環境の整備というところがあるし、マクロ的な側面でいうと、やはり現役世代の負担を確保しつつ、ある程度予見可能性を確保するということ。薬価制度改革にあたって岸田総理が主張したイノベーション評価と皆保険制度の持続性の両立を考えるとこのような案が生まれてくると思っている。

次のスライドをお願いします。最後は財政審でこの提案が取り上げられた。我々にとって重要なのは、財務省が公式な資料を用いて事前の財政規律の導入が入れば一定程度の薬剤費の伸びを許容しているというメッセージを出しているということ。つまり薬剤費においてある程度の伸び率が経済成長と乖離しないといった総額に関する取り決めがあると、枠の範囲内なら薬剤費の伸びを許容されるということを財務省自身が公式に認めていること。公共事業などは普通の予算では予算が決まると執行予算は必ずその枠内に収まる。しかし、医療費や薬剤費は価格を政府が統制していても数量が伸びれば薬剤費等の総額をコントロールできない可能性がある。すなわち財政的に不確実性を抱くことになる。財務省が一番欲しいのは、この不確実性を排除する何らかのメカニズム。つまり予算の範囲内に全部が収まる仕組みということ。この問題はINESが提案する成長率調整メカニズムを導入すれば解決するから、財務省の資料では、薬剤費が今後横ばいかマイナス成長になる可能性がある中で、仮に薬剤費が若干伸びても財政的な不確実性が排除できれば構わないとうメッセージを財務省が出してきたと理解している。このようなボールを厚労省や業界に投げたことは大きい。このメッセージに応える必要性があると考えている。我々の発表は以上です。


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