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【有識者検討会 12月9日 議論その1 新規収載品の薬価算定の値付けの問題】

公開日時 2022/12/12 05:50
厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の6回目の会合が12月9日に開催された。この日は、新薬の新規収載品の薬価算定の値付けの問題、新薬創出等加算、市場拡大再算定、さらには革新的医薬品の迅速な導入に向けたさらなるインセンティブ等のあり方をテーマにディスカッションした。本誌は「議論その1」として、新薬の新規収載時の値付けの問題に関するディスカッションの内容について発言要旨を公開する。

遠藤座長:それでは、これから皆様と一緒に議論を重ねていきたいと思います。資料のボリュームが多いということですので、少し分けながらご発言いただければと思う。最初の「1.現行制度における課題と論点」ということで、このなかで最初は新薬の新規収載のときの評価のあり方についてのご説明と課題について説明があった。その後、21ページ以降になるかと思うが特許期間中の評価のあり方ということで、上市後の評価の仕方ということで新薬創出加算と市場拡大再算定についての詳細な説明と課題について、いまお話があった。2番目が、「革新的医薬品の迅速な導入に向けたさらなるインセンティブ等のあり方」ということで、さらなるインセンティブのあり方ということで、資料では現状についての課題をもう一度明らかにした上で各団体からの主張をここで整理している。そういう中で更なるインセンティブ等のあり方について考えてほしいということだと思う。

ただ、よく考えると、前半部分では現行制度の課題というものを出して、それをどういうふうにしていくかということ。後半部分の更なるインセンティブというのは、現行制度を修正するだけでなく、いままでにないような仕組みもあればここで議論してほしいと理解した。

そこで、議論の中身を3つに分ける。最初は3ページから20ページの、現行の薬価制度のなかでの新薬の新規収載のときの値付けの問題について少しご議論をいただければと思う。その後に、上市後の評価ということで、新薬創出等加算の課題と市場拡大再算定のところについてご意見いただきたい。3番目に、現行制度の加算率を変えるとかそういう仕組みで対応できるのであればそれはそれで結構だが、また新しい仕組みが必要だというのであれば、そういう話は最後のところでまたご意見いただければ、と考えている。はい、坂巻構成員どうぞ。

坂巻構成員:いま、遠藤座長の方から議論の方向性を非常に詳しく、また整理していただきましたが、もう少し教えていただきたい。最終的にこの提言をまとめるときに、いまのお話の通り、まず現行制度の手直しで解決できるものについてはそれとして提言し、それでは不十分なものについては新たな制度という形で2段構えでの提言になるという理解でよろしいでしょうか。

遠藤座長:事務局いかがでしょうか?

安藤課長:はい。そこは今日の議論も踏まえながらですね、最終的にどういった提言のあり方があるのかということは考えたいと思うが、一つの考え方として、いま坂巻先生がおっしゃったような、現行制度での対応と、それで収まりきれないというものについては新しい仕組みとして提言していくということも考えられるというふうに思っている。

坂巻構成員:わかりました。ありがとうございます。

遠藤座長:他にいかがでございましょうか?成川構成員、どうぞ。

成川構成員:ありがとうございます。最初に事務局にはこんな膨大な資料と論点をおまとめいただいたことに感謝申し上げたいと思う。そのうえで、私から最初に値付けのところについて、3点コメントさせていただく。

一つは制度改革の経緯・頻度についてと、2つ目が補正加算について、3つ目は外国平均価格調整についてだ。まず1点目の改革の歴史だが、実は私自身、厚生労働科学研究費をいただいて薬価制度の抜本改革の影響という調査を長くやってきた。薬価制度抜本改革が2018年の4月に行われたが、その年の秋くらいに一度、3年後の2021年の秋に2度目のアンケート調査を、先発品を出している企業、約70社を対象に行った。色々な意見があったが、新薬創出等加算の対象品目の見直しなど個別算定ルールの変更や、中間年改定への懸念を表明する意見がかなりあった。

一方で、投資回収の予見可能性の低下というものを危惧する意見はかなりあって、そこは僕自身すごく印象に残っている。医薬品の研究開発はかなり長い期間を要するもので、私達の身の回りにある商品の中でも、とりわけ開発期間がかかるものであるため、そういったものも考慮したうえで、制度改革を考えることは、とても地味かもしれないが、重要なポイントと思っている。予見可能性を高めるやり方というのは、色々な手法があると思うが、そういったものを念頭に議論していくということはすごく重要だ。これが一点目。

二つ目の補正加算についてだが、きょうの資料の中にあったが、これまで加算率自身はずっと引き上げられてきていて、いまの幅で規定されているということだ。実態としては、その幅のなかでも最低のあたりで運用されているというのが事実だと思う。おそらく過去の類似の事例との並びで考えるとなかなか急に高い加算率をつけられないという事情もあるのでは、と推測している。私自身、2014年に有用性加算の加算率をある程度客観的に算出するポイント制を提案させていただいたが、実はこのポイント制を作るときも過去の事例をいかに合理的に説明するかということに力点を置いたので、未来に向かっての提案というのはなかなかできなかった、というのを思い出しているところだ。

確かに、最近薬のモダリティはだいぶ変わってきており、それを開発する企業も変わっているということも踏まえると、いままでの加算の軸では捉えきれなかったようなものも含むような方向での検討というのは有益なのではないかなと思っている。具体的には、難病やオーファン・ドラッグの小児の薬などは無作為化比較試験ができない。実際、加算の時の評価直接のhead to headの試験結果を重んじている。シングルアーム(単群試験)でのデータしかないようなものについても間接的な比較などでその薬の良いところを評価するとか、あるいはこれまでも議論が出ているが、QOLや介護者の方々の負担軽減など、これまでの加算の軸にないようなものを少し考える、製造方法が特殊な場合には製造のコストも何か加味するようなことなど、色々なアイデアがあると思うが、そういう加算の軸を考えてもいいのでは、というのが一つだ。

もう一つは、いま有用性加算1・2と画期性加算という枠があるが、実際には何か満たすべき項目みたいなものを決めてしまって、有用性加算1・2とか画期性という枠をとっぱらっても、加算率を直接出せるようなことなども考えてもいいのかなと思っている。

3点目の外国平均価格調整の話だが、事務局からのご説明にもあったが、企業のなかには外国平均価格調整で引き上げてもらえるタイミングを待って日本での上市を検討することがあるのではないか。もちろん日本の上市タイミングがそれだけで決まるわけではないが、それも一つの考慮事項として日本での開発のタイミングを考えているというのは確かに事実のようだ。そういう意味では上市後に、どこかのタイミングで決めて、外国平均価格調整を引き上げの方向も含めて検討するというのは合理的なアイデアかと思っている。ただ、一点だけ申し上げておきたいのは今4か国のリストプライスのなかにも、例えば薬局の公定マージンが入っている国もあるし、途中でディスカウントされているものが価格リストに反映されていないケースもある。その辺は少し精査をした上で、何か参照するという工夫が必要なのではないかなと思っている。以上です。

遠藤座長:非常に専門的な視点からもご指摘をいただいたと思う。どうもありがとうございます。それでは三村構成員お願い致します。

三村構成員:専門的な話ではなくて逆に印象としてということがあるので、そのことを踏まえてご指摘させていただきたい。

最初に新薬の薬価算定、価格改定、それから最終的にということで3段階流れているが、おそらくもう一本流れが縦にある。非常にいい資料を作ってしていただいているので、明らかに特許薬のなかに2つのタイプの特許薬がある。非常に市場規模が小さくて非常に開発コストがかかって、ある意味でひょっとしたら非常に採算がとりにくいかもしれないけれども重要だということで、オーファン・ドラッグというか希少疾患をベースとしてこれは明らかに薬価の評価が難しいと。おそらくおっしゃる通りだと思う。

厚労省のご提案としてもこういう問題については、ある程度やはり評価を変えるというのは難しいことでありますから、ある一定期間は維持しながら、何らか残ったときにそれを見直す形にしていく、ある意味である従来の薬価算定の方法論から切り離してもいいのではないかという、ご提案ではないかと私自身は受けている。

私自身は正直言いまして、賛成だ。色々な言い方があるが、私どもは特許薬、非特許薬という書き方をしてきたが、特許薬のなかに非常に新しいタイプがあり、再生医療等医薬品等も含めてということだが、従来の方法論では難しい。しかしながら、非常に国のあり方として重要である。そしてあとのところでドラッグ・ラグになっているもの、あるいはひょっとしたらドラッグ・ロスになっているものがどういう分野であるかと言えば、明らかにこういうものが入り込んでくるのだとするならば、それはある意味で薬価制度上、特許薬のなかにおいても区分しながら取り扱いをしていくという考え方はあっていいのではないか。それに合わせると、最終的にどういったインセンティブがあるか、どういった開発体制や支援体制があるという議論にも結びつきやすいのかなと感じた。以上です。

遠藤座長:どうもありがとうございました。他にいかがでございましょうか?はい芦田構成員、お願いいたします。

芦田構成員:はい、ありがとうございます。まず先ほどあったが、これだけの資料、論点をまとめていただきまして事務局の方々にはお礼申し上げる。

そのうえで、本日は革新的医薬品の迅速な導入についてだが、言い換えると、短期的にはドラッグ・ラグと、ドラッグ・ロスの解消、および予防をしていこうということをだと受け止めている。

このドラッグ・ラグとドラッグ・ロスが生じている理由は、資料の中にあったように、革新的医薬品の多くをアメリカのベンチャー企業、あえてエマージング・バイオファーマ(新興バイオ企業)と海外でも使われている言葉を使うが、エマージング・バイオファーマが開発して承認を取り、しかしそれを日本で開発しないからということからドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスが生じていると理解している。革新的医薬品については、おそらく今後もアメリカのエマージング・バイオファーマが開発の中心であるとすると、今後もこのままの状態が続けばドラッグ・ラグやドラッグ・ロスが拡大すると考えていいのではないかと受け止めている。

エマージング・バイオファーマにとってみれば、重要な市場はまずはアメリカであり、次いでヨーロッパであり、おそらくだが多くの場合は、日本は視野に入っていないのではないかという印象を持っている。彼らが日本で開発しないのは薬価制度だけではなく、これまでの検討会で出てきたように、日本の薬事制度や治験環境にも課題があるだろうし、一方で、国内の製薬企業が彼らから開発品をなぜ導入しないのかというような論点もあると考えている。しかし、薬価制度が非常に重要な論点であるというところは間違いないだろうと受けとめている。

そこで私から原価計算方式についてコメントさせていただく。原価計算方式は、類似薬がない場合に採用されるので、革新的な医薬品の多くはこの方式で薬価が算定されると考えている。しかし、先ほど申し上げたようにその多くが、現状では海外企業の開発品であることから、原価開示度が低く、加算率が0のケースも多くなっていると見ている。すなわち革新的であるにもかかわらず、加算がつかない。そういう状況になっていると見ている。

海外のエマージング・バイオファーマが革新的新薬の担い手になっている現在において、原価計算方式そのものの課題というか、限界があるように受け止めている。現状、類似薬効比較方式、原価計算方式の2つの方式に基づいているが、そろそろ新たな第3の方式が必要ではないか。これは後半の話かもしれないが、例えば価値に基づいた計算方式というものを新たに建てることを検討してもいいのではないかと考えている。私からは以上です。

遠藤座長:ありがとうございました。他にいかがでございましょうか。はい、それでは川原構成員、お願いいたします。

川原構成員:はい。厚生労働省の方々、ご説明ありがとうございました。とてもよくまとまっていたのではないかと思う。

16ページの外国平均価格調整で少し質問させていただきたい。為替レートがどのように影響しているのかというあたりをご質問させていただきたい。100円のときもあれば150円のときもあって、為替の変動によって外国平均価格調整もその都度変わってくるのではないかと思う。例えば、比較国の通貨での価格変動の動きを確認するというあたりも必要なのではないか、と思っている。円安局面では外国価格平均価格が上がって、メーカーにとってメリットになる。円高局面では逆に、外国平均価格が下がり、メーカーにとってはデメリットになるのではないかと思われる。為替レートの変動が外国平均価格との著しい乖離にどう影響するか、これもう一点考えておく必要があるのではないかと思った。以上です。

遠藤座長:ありがとうございます。事務局、お答えをお願いします。

事務局:いまの川原構成員からのご質問につきましては簡単に申し上げると、算定をする際の為替レートが基本的にそのまま適用されるということになる。ご指摘のように、為替レートの変動により、時期によって外国価格調整が適用されるかどうかに、そのまま影響があるというのが運用の実態だ。

川原構成員:はい、わかりました。企業からすると、なるべく円安のときに上市した方が外国平均価格調整を考えると、メリットになる。それがずっと続くということですよね。承知した。

遠藤座長:ありがとうございました。他にいかがでございましょうか?はい、坂巻構成員、どうぞ。

坂巻構成員:はい、ありがとうございます。ちょっとまた論点から外れてしまうかもしれないが、世界の医薬品価格の設定について見たときに、大体こういうやり方しかないと集約されると思う。少し前になるが、2009年にOECDが世界の医薬品価格政策についてとりまとめたレポートを日本語に翻訳して失敗したことがある。それを見ていくと、大きく言えば、4つに分けられている。一つは、「internal reference」という、他の類似治療と比較する仕組みだ。2番目が「external reference」、これが実は海外価格調整だ。次に、コストベース、原価算定、最後にバジェットインパクト、おそらく調整の仕組みになると思うが、これに集約されると思う。

日本での現行制度をベースに議論しているが、その前にやはりどういう価格設定のやり方があって、最終的にはおそらくバジェットインパクトはおそらく直接の価格ではないが、いま議論されているような類似薬効比較方式、それから原価算定方式、ちょっと原価算定についてどうするかって他のシンクタンクからのご提案があったが、今日の資料では不十分かなと感じるとこあるが、またバジェットインパクトこの3つぐらい、そのバランスをどう取るか、というところの議論は最初にしておいた方がいいのでは、という気がしている。

そのうえで、例えば類似薬効比較方式に関してはもう少し具体的な手直しをするとしたら、これまでも今日も議論があったが、そもそもどうやって他の治療薬との比較を行うのか。イノベーションとか価値を評価するといっても、基本的には現行の何らかの他の治療をベースにしたうえで、どのくらいどうイノベーションが高まったのか、価値が高まったのかを考えるのであれば、どう評価するかということと同時に、業界からもご提案があったが、そもそも何と比較するのか、類似薬だけでいいのか、類似薬がなければ他の類似治療と比較するとなると思うが、ベースとして類似比較をするにしても、どのようなところで比較対照にするのか、というところを議論として考えていく必要があるだろうと思う。

これも論点から外れるが、価格をどう決めるかという議論とともに、この会議体のなかでご提案があったが、保険償還の範囲をどうするのか。これおそらく今後の論点になってしまうかもしれないが、保険償還の範囲はどうするかという議論があったと思う。それから、今後の議論で構わないが。

きょうの資料の中で少しこれもどうするのかなというところはあるが、世界の制度を見た場合、例えば成功報酬型なんて言葉が使われるが、いわゆるリスクシェアリングであったり、あと分割払い形での償還であったり、そういった償還の方法をどうするのかというところも一応議論としてはあるのではないか。今日の議論から外していただいて構わないが、新薬の薬価を決めるときの論点としてはとしてはもう一度あるということを確認させていただければと思う。以上です。

遠藤座長:ありがとうございます。多様な視点をご提示いただきました。はい、他にございますか? 菅原構成員どうぞ。

菅原構成員:ありがとうございます。事務局におかれましては、大変これまでの議論も錯綜していたなかで、非常に綺麗にデータと論点をまとめていただき、感謝を申し上げます。

他の委員のご発言と私の意見も重なる部分もあるが、先ほど芦田構成員も原価計算方式のお話をされていたが、私も同じような意見を持っている。バリューチェーンの相違によって、開示の難易度というのは企業によって大きく変わると思う。バリューチェーンが複雑化するなかで、どこまでの開示を求め、そしてその開示度に応じて加算をつけるわけだが、50%未満の開示度で加算がない状況というのは、現行の開発状況に合っていないと思う。

もう一点、私自身が問題だと思っているのは、最終的には産業全体の平均という形で営業利益率の調整をかけている。政策投資銀行の産業別財務データハンドブックの数字を用いている。32社の平均を使っていると思うが、32社の内訳を見ると、特定の名前を出すのは良くないが、仁丹や漢方薬、目薬だけを作っている企業もあれば、ほとんどOTCを販売している会社がかなり含まれている。正直申し上げると、国内産業の中でもこれが研究開発型の企業なのかという点において、かなり疑問符がつくようなものの利益率の平均になっている。

先ほどの芦田構成員のお話にもあったが、さらに言えばエマージング・バイオファーマであるので、グローバルのなかで日本の製薬メーカーもはるかに高い利益率を取って初めてビジネスとしては採算が取れるだろうと考えると、いまの原価計算方式は現状のまま、グローバルマーケットあるいはそのグローバルでの開発ということの評価、イノベーションの評価ということにおいては非常に不十分、というか現実に合ってない制度ではないかと思っている。これについては、やはり大幅な見直しが必要ではないかというのが私の意見だ。

それからもう一つ、補正加算についてだが、これは一言で言うと、現行の薬事承認と保険の間のギャップをこれから先どう解消するかというところが一つの大きな論点だと思う。品質、有効性、安全性を確保することで薬事承認をしっかりやっていただくことは大事だが、当然今も考えられているが、保険にいくら価格にするかという部分に関しては、やはり国民目線でどれだけのメリットがもたらされるかということをより明確にしていく評価軸があってもいいと思っている。

先ほどもほかの構成員からあったが、患者のベネフィットやQOL、それから広い意味では評価の方法を考えなければいけないが、医療従事者の負担軽減や社会的価値の反映を色々な団体からご意見をいただいた。難しいことももちろんあるが、これについてやはり我々は前向きに少し評価の方法を考えていく必要があるのではないかというのが私の意見だ。以上です。

遠藤座長:どうもありがとうございました。それでは。香取構成員が先ほどからお手を挙げておられました。よろしくお願いします。

香取構成員:ありがとうございます。皆さんのおっしゃっているご意見と、ほぼ重なるが、資料12ページにいまの薬価算定方式の基本的な考え方が示されている。いまお話ありましたように、類似薬効比較方式でやっているわけだが、1日薬価、1日薬効で比較するという考え方に立っている。ちょっと初歩的な質問だが、例えば鎮痛剤では1回投与して鎮痛となるわけだが、例えば慢性疾患の薬やがんの薬のように一定期間、クールとよく言うが、一定期間の投与で薬効が実現される、あるいはそういう形で評価をされるような薬であるとか、あるいは通常1日3回服用のものが1回でいいとか、3日でいいなど、要するに遅効性の薬ですよね。ああいう形についても既に出ているわけだが、いわばその投与経路が違ったり作用機序が違う薬が出てきた場合、こういう同じような形で1日薬価というふうに計算して薬価がつけられているのか。例えば、今までは1日1錠だったものを3日で1錠で良くなったら1日薬効3倍だから3倍の点数を付けるというふうにつけてきたんでしょうか。たぶんそうなってないような気がする。

つまり、いまの基本的な物の考え方というのが、色々な話をしたが、既存の低分子薬で、一つの投与と一つの薬効が対応関係にあるという、非常にプリミティブでシンプルな薬のイメージで作られている。それをベースに、いまの制度は積み上がっている気がするが、これから出てくる薬というのはもうすでに、いままでの薬とは全く違う、不連続なものが出てくるわけだ。そもそも分子標的薬とか個別化医療も始まってくるわけなので、いまも原価計算はそもそももう無理ではないかという話があったが、この類似薬効の考え方にしても、たぶんこれから出てくる薬に対応できるような、やはり薬効の評価の仕方というのを考えないといけない。そのなかには薬効とは何かという話があって、いまだとその薬の効き方という話になるわけだが、たぶん薬効の評価がベースになっているのは、審査データだというふうに思う。審査データのなかには、医薬品のそれこそ社会的な価値とかモダリティとかそういうのはない。

そうなると例えば、医薬品の製造承認から上市後までの絵が書いてあるが、実はこれ一連のものとして最終的に上市されるわけだが、実は審査プロセスで出てくるデータや審査プロセスで行われている有用性や安全性の評価で、実は薬の価格設定はもうできないということだ。現実にいまでも起こっているが、画期性の評価をするときに追加的なデータなどを要求される。実は通常のクリニカルデータからは出てこないということになるので、言ってみればそこで追加的な資料を要求され、調査を行うみたいなことも起こっている。そう考えるとこの話は、今の審査プロセス自体の方でも実は色々新しい新規性のあるモダリティのものについての審査承認のプロセスの問題も出てくるし、全体として医薬品産業あるいは医薬品の研究開発あるいは医薬品そのものの形が変わっている。

低分子薬からバイオになっていくなかで、審査のことも含め、基本的に組み立てを変えるという前提でものを考えた方がいいような気がしてきた。もちろん行政なので、不連続の変化というのはできないのかもしれないが、いまの制度が持っている問題点を1個1個洗っていくと、基本的に物の考え方を変えるということになっていくのではないかと思う。その意味でいうと、例えば坂巻構成員から色々な評価の仕方があるという話があったが、この種の非常に新規性の高い、いわば比較対照が存在しないような作用機序や効能・効果を持っている薬について、どういう評価の仕方をするか、まさに画期的なものについてどう評価するかおそらくどこの国でも考えながらやっていると思う。少し前提をとっぱらって一旦議論してみる、ということがやはり必要ではないかという気がする。ちょっと感想めいたことだが、以上です。

遠藤座長:冒頭、何か事務局にお尋ねのようなことがあったように思いますけれども、事務局、答えられる範囲で結構でございますので、お願いします。

事務局:はい、恐れ入ります事務局でございます。私の資料の説明が不足しておりまして申し訳ございませんでした。12ページの下の部分に注釈を記載してございまして、いま香取構成員からご指摘をいただきました、クール単位などで治療が行うような薬品につきましては物によりますけれども、1日薬価ではなくクール単位の薬価で合わせるというケースもある。ただ一方で、ご指摘いただきましたように多様なモダリティ、あるいは用法の医薬品が多くなってきているということもあり、こういった計算が難しいケースも出てきているということもご指摘の通り、事実だ。

遠藤座長:香取構成員、よろしいですか。はい、ありがとうございます。それではオンラインで先ほど来、お手を挙げなっておられますので、小黒構成員、その次に堀構成員の順番でお願いしたいと思う。小黒構成員、どうぞ。

小黒構成員:ありがとうございます。私もいくつかコメントと、質問をさせていただきたいと思う。菅原先生とほかの先生もおっしゃられていたが、現状の原価計算方式のやり方はやはり、かなり無理な部分もあると思う。やはりある程度、価値に見合った形で薬価算定をしていくような仕組みについて考えていくということが重要ではないか。それから、三村先生がおっしゃられていたと思うが、保険に収載する時点で価格にかなり注目してコントロールするという方法を従来取ってきたと思う。しかし、希少疾患の薬も含めて、マーケット全体のポーションが少ないものもあるから、そういったものについて私もやはり別立ての評価という方法を考えていくということが今後、非常に重要になっていくのではないかと思う。

最後に質問だが、先ほど川原先生が質問された16ページ目の外国平均価格調整だが、本当に為替レートがどう影響するかって結構すごく。例えば少し前に1ドル110円だったものが、150円ぐらい変動したりとか、場合によっては昔も130円だったものが80円になったりするというケースもあったと思う。そうすると、平気で25%上下するような、1.25倍と0.75倍の閾値を変動するようなケースもあると思う。そのときに真ん中の「調整なし」というのが少し気になる。実際本当にどうやって運用されているのか、もう少しちょっとご説明いただければと思う。例えば、為替が25%上昇した場合、あるいは為替が25%増加した場合、上下に変動すると思うが、この閾値を変動した場合にどうなるのか。

遠藤座長:はい。では事務局、お願いいたします。

事務局:はい、恐れ入ります。事務局でございます。基本的には先ほど、川原構成員からのご質問の際にお答えした通り、薬価を決める、新規に医薬品の薬価収載を行う際にそのときの為替レートを反映する形で外国平均価格を算出し、それに基づいて調整を行うという形なる。先ほどのお話でご説明が不足しておりましたが、そのときの為替レートと申し上げたが、収載をする際の過去1年間の為替レートを平均し、その為替レートを使って外国平均価格調整に用いる外国平均価格を算出している。

小黒構成員:現状の3ポツ目。「薬価改定時においては」とあるが、引き下げルールが導入されている。これをどうやって運用しているのかということだ。薬価の改定時の話で、要するに為替を大幅にすごく減価したり増加したりするケースがあると思うが、いまは引き上げルールはないということだが、引き下げるときにすごい円高に急激に変わったりすると、状況によってはこの条件を満たしてしまう可能性もあるのではないかと思う。

事務局:ご質問は、16ページの現状の3ポツ、新規ではなくて収載後の改定時にどのような運用がされているかというご質問と承った。こちらについては、2年ごとに行われる薬価改定の際にその都度、前年の11月時点の外国価格を参照し、その為替レートを用いて外国価格を参照して、引き下げの適用の有無を判断するという形で運用が実施されている。2年ごとのタイミングで実施をしているということになる。

小黒構成員:わかりました。ありがとうございます。

遠藤座長:よろしいですか。はい。それでは堀構成員、お待たせいたしました。

堀構成員:はい、ありがとうございます。新規収載時の薬価の値付けのところで論点としてあげられている19ページに書かれていることはまさにその通りだと思うが、この具体的な補正加算のあり方や仕組みについて新たな仕組みの検討が必要ではないか、という質問に対してはイエスだと思うが、具体的にどのような方向に進めるべきなのかというのは、いまの補正加算の方式を前提として考えるのか。それとも細かく色々補正加算を決めて、その適用率を決めていくという方法ではなく、全く違う海外事例が20ページにある、企業と保険者との交渉、あるいは企業と国の交渉など全く違う方法になっているが、そういうことを含めて検討できるということなのかどうかを質問とさせていただきたい。

もう1点は、テクノロジーの変化に伴ってモダリティの変化というのはこれまで私達が考える以上に早いスピードで起きていると思う。そういう意味では、原価計算方式で把握することに限界があるのではないかと思う。日本の場合、薬事承認すると基本的には保険適用となる。きょうの議論ではないかもしれないが、先ほど別の委員もおっしゃっていたが、薬事承認されたもの全てイコール保険収載なのか、というところは保険収載の範囲によっても議論は変わりうるのではないかと思っている。あとは、新しい制度にするのであれば、価値を国民の価値よりは患者の価値というものを踏まえる、というような仕組みを、どこかに入れられるといいのではないかと思う。

最後にもう一点質問がある。15ページの補正加算で、実質的に該当する要件は定量的評価の指標も定められていることに加え、議事録の公表と書いてあるが、この作業にどれだけの労力が企業側にかかっているか、など企業の経費のなかで算定されているものなのか。厚生働省の方に聞くことではなく、業界団体に聞くべきことなのかもしれないが。要は、補正加算のために提出する資料のためにどれだけの労力がかかっているのか、わかりましたら教えていただきたい。以上です。

安藤課長:まず、前段の補正加算についてのお尋ねについて、私の方からお答えさせていただく。我々の方の整理が必ずしもまだちゃんとできてないところだろうというふうに思うが、今までの委員の方々のご意見にもありましたようにそもそも何をターゲットとし、どういったモダリティを前提に置くかによって議論はちょっと変わってくるのかなという感じはしている。我々の資料の中でも若干、出ておりますが、既存のモダリティを前提とした場合に現行制度、それでもやはり今の制度の課題があって、そういった場合いまの制度を前提として、どういった見直し手法というものが考えられるか、というアプローチというのは一つ考えられるだろう。あるいは、我々の方も書いている希少疾病や、新しいモダリティを前提にすると、果たしてそもそもとしていまのこの枠組みでしっかりとイノベーションの評価というものができるのかどうかというところも、一つ論点になるんだろうというふうに思っている。

後者の方につきましては別途、今日の資料の中でも大きく2番で書いているように、いまの既存の枠組みに捉われない形での様々なご意見というのをいただきたいと考えている。

事務局:引き続き続きまして、事務局より最後にご質問いただきました薬価収載に当たっての企業側の労力の点だが、なかなか定量的にお答えすることは難しいが、各製薬企業ともに
算定薬価、薬価収載に当たっての手続きは当然ながら非常に重要視しており、専門の部署や専属の担当者を多数置いている企業が多いと聞いている。1品目ごとに収載手続きをする際にも数人での専門のチームを組んで当たっているというような状況であると聞いている。

城審議官:ただ、かなり労力を割くのかもしれないが、薬事承認後に新規データを取ったりなどすることはほぼないので論文を集めたり、最新の論文を出してもらったりということはあるかもしれないが。そういう意味ではデータ収集のところでさらに手間をかけるということではなくて、どのように今までの臨床研究でのデータを評価してもらうかというところでしっかりと作り込んでくるという作業の舞台だというふうに、私の経験からそんな感じで受け止めている。

堀構成員:ありがとうございました。先ほどのPMDAと異なる視点とか患者の視点、QOLの視点というお話もあったので、そういうものに関するデータの収集が頻回にあるというわけではない、というふうに理解していた。一方で、そういうものとは関係ないデータは頻繁に出さなければいかないのかなと思った次第だ。

遠藤座長:はい、ありがとうございました。小黒構成員がまたお手を挙げておられます。

小黒構成員:先ほど指摘しようと思って忘れてしまったが、三村先生がおっしゃったポーションが小さいマーケットで、要はAMR、薬剤耐性菌のような薬だが、サブスクリプションモデルみたいな定額払いみたいなものであれば、5年か10年間ぐらいで200億円から800億円ぐらいだと見積もられている。単年度にすれば相当小さいポーションだと思う。そういったものもやはり取り込んでいけるような、新しい制度を考えていくことも重要かと思う。

遠藤座長:はい、ありがとうございました。他に何かございますか。それでは坂巻構成員、お願いいたします。

坂巻構成員:原価計算方式に関しては、大体評判をよく存じ上げているが、常に価値評価をしたときに他の治療薬と比較して値段を決めたときに、それが原価計算の高い値段がつけばいいが、そうではないこともある。特にいま議論になっているような新しいモダリティ、これまで治療方法がなかったものに関しては比較対照自体が実は存在しなくて、何かと比較しようと思ったら既存治療、その時は対処療法だったりすることも結構あるわけだ。対処療法と比較すると、その治療自体がものすごく安くなってしまう。こういうものについて価格設定をどうするのか、というのが世界的に議論になっている。そういったものが実は中心になってくるなかで、業界意見陳述のFIRMのときに私は申し上げまたが、特に新しいモダリティに関しては、原価が高くなってしまうことが往々にしてあるわけだ。原価計算方式に関してもやはり残したうえで、いまはどちらかというと、一番値段が安くなるような方法が採用されがちだが、やはり原価の高いものに関してはそれをきちんと評価する仕組みとしての原価算定方式を残すということは必要だと思う。そういった意味で先ほど冒頭申し上げましたが、バランスをとった議論が必要なんだろうと思う。以上です。

遠藤座長:ありがとうございました。他にございますか。はい、それでは香取構成員、どうぞ。

香取構成員:さっき言いかけたことだが、先ほどの堀先生の質問に関係するが、いま城審議官は、価格交渉の過程で新しいデータや、特にクリニカルデータも含めて、それこそ有用性についての新しいデータを要求しないと、もちろん審査報告書のなかには全てのデータが入っているわけではないので、そこに出てこないデータもあるということだが。しかし、結局それはどういうことかというと、いまの薬事承認の中で評価されている薬の効果であるとか有用性とか、その範囲内でしか薬の価値を評価していないということでもあるわけだ。

つまり、いまずっと議論しているようにモダリティの問題であるとか、例えば比較対照に薬がないということ。比較対照は例えばシメチジンが入って手術がなくなるとなったときの比較対照は実は胃潰瘍の手術だ。いまの薬事承認のデータからはそんなものは出てこないので、その評価の軸はデータとしては存在しないということになる。それを例えば申請してくる製薬メーカー側に何らかの形で証明して来いと言えば、それは別の形でデータか何かわからないが、評価するということにもなるわけだ。

少しイメージして欲しいのだが、いま製薬メーカーは認知症の薬を一生懸命開発している。いままだ発生を遅らせるとか、あるいはアミロイドβの蓄積を阻害するとかいうような形で開発が進んでいるわけだが。それ自体は一定の薬効になるので、たぶん薬事承認上は薬として承認されると思うが、その薬の持っている価値というのを考えたときは、たぶんその価値ではないわけだ。極めて社会的に大きなインパクトのある、それこそアンメットニーズという言葉があるが、そういったものとの関係で評価をする、つまりいま認知症というのは治療が存在してないので、言ってみればそのゼロに対して付加価値を産んでいく薬が生まれてくるということになるわけではないか。

そういうものを評価する、お金をつけるということになるので、原価計算方式はそもそも無理だし、比較薬効でも無理だし、やはりこれからそういう薬が出てくるということを考えて、評価の仕方なり、価値基準というものを考えると、その意味で全部同じようなルールで、いま類似薬効比較方式と原価計算方式になっているが、小黒先生もおっしゃったが、薬の対応によって、評価の仕方というのは強化軸や組み立てがたぶん違うという、一種そういうこともちょっと考える必要があるのではないか。

その意味で言うと、メーカー側にまず自分で価格を決めさせてそれで走るという案を製薬協はたしか出したと思う。なかなか製薬メーカーの言い値で預けるというのもどうかと思うが、ある意味それなりに証明していくというか、律文して持ってくるのであれば、とりあえず収載し、2年後なり3年後に実際に上市した後、再評価をして、薬の社会的な価値やそういうものも含めて評価をして、そこで一定の薬価に落とし込んでいくというのも、もしかしたらあるかもしれない。

あるいは、オーファンみたいな薬というのは、もう患者数が決まっているわけだ。これは審査の問題とも関係するが、二重盲検をやる必要があるのかという気が僕はするが、審査のプロセスも含めて、そういう新しいモダリティや新しいタイプの薬については、これまでとは別の考え方でものを考えるという、まずプラットフォームを考えて、そこに評価の仕方をどう積んでいくかということだ。具体的にどうするか、というのはそれ自体大きな問題だが、議論の組み立て方として少しそういう大きく構える議論の仕方をした方がいいのではないかという気がする。

遠藤座長:ありがとうございます。他にございますか。それではとりあえずはこの課題についてはこれまでということで、また3番目の課題でまだ同じような議論になる可能性もありますので、そのときにご発言いただければと思う。

ただいまのご発言で原価計算方式の課題はあるというようなところ、あるいは類似薬効比較方式にしても、様々な比較対照がない場合があるという問題があるから大きく変えるべきだというようなご発言が多かったと思う。私も同感だ。

ただ、政策論で考えていくときに、その先の具体策をどうするかというところが非常に重要で、新しい価値を評価するとはどういう方法で評価するのか、誰が評価するのか。まさに費用対効果を導入するときにあれだけ時間がかかったということを考えて、しかも途中では中医協の中でいわゆる支払い意思のアンケート調査をするという学術的なwillingness to pay(支払意思額)の考え方みたいなものをやるかどうかというようなことまで議論されたぐらいだ。実際やらないわけだが、なかなかこれは具体的なことを考えると大変難しいし、結果が大体出てくるとするとステークホルダー間の利害調整も絡んでくるので、その調整も非常に難しいということもありうる話だ。しかし、このままではいけないということでインクリメンタルな修正だけではまずいというようなことはご指摘の中であったわけですのでインクリメンタルな修正できるところと、そうでないところ少し中長期的な議論と短期的な対応みたいなものは考えて進めるということは意味があるのかな、と話を承って感じておりましたようなことを申し上げた。余計なことを申し上げた。

議論その2に続く
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