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中医協 医薬品安定供給へ診療報酬上の特例的な上乗せを答申 後発品の産業構造含めた抜本改革求める

公開日時 2022/12/26 04:53
中医協(小塩隆士会長)は12月23日、医薬品の安定供給問題を踏まえた診療報酬上の特例措置について加藤勝信厚労相に答申した。医薬品の供給不安が続くなかで、一般名処方加算や後発医薬品使用体制加算、外来後発医薬品使用体制加算、地域支援体制加算を特例的に、23年4月から12月まで時限的に診療報酬点数を上乗せする。製薬企業の不正に端を発した不安定供給の対応により、患者・国民の負担が増大することを支払側が指摘。附帯意見には、「患者負担との関係も念頭に置きつつ、安定供給問題の根本的解決に向けて、有識者検討会の議論も踏まえながら、十分かつ早期に検討すること」と盛り込まれた。小塩会長は、「薬価あるいは診療報酬の見直しだけではなかなか問題が解決できない。産業構造、あるいはビジネスモデルのあり方も含めて医薬品の供給体制についての抜本的な再検討が政府に求められる」と述べた。

◎小塩会長「薬価改定と同様、政府としての決定事項」

この日の答申は、加藤厚労相と鈴木財務相の大臣折衝での合意事項を踏まえたもの。医薬品の安定供給を踏まえた診療報酬上の特例のほか、オンライン資格確認の義務化における経過措置などが答申された(関連記事)。ただ、大臣折衝が行われたのは12月21日で、同日に諮問がなされ、急遽夕方に中医協で議論がなされた。診療側からは賛同する声があがる一方で、支払側からは合意から諮問までの流れが突然であることや、いずれの項目も国民負担増大の観点から反対する声があがっていた。

小塩会長は総会の冒頭で、「薬価改定の場合も同様だが、大臣折衝による合意は、政府としての決定だ。その諮問を受ける中医協といたしましては、やはり重く受け止める必要がある。そのため診療報酬のあり方については、議論として、進めていく必要があると考えるがいかがか」と諮り、診療・支払各側が同意したことから、この日の議論が進められた。

◎一般名処方加算、後発医薬品使用体制加算、外来後発医薬品体制加算、地域支援体制加算を特例的に引上げ 

診療報酬上の特例措置としては、一般名処方加算、後発医薬品使用体制加算、外来後発医薬品使用体制加算、地域支援体制加算を特例的に、23年4月から12月までの9か月間、時限的に診療報酬点数を上乗せする。入院初日に算定できる後発医薬品使用体制加算では20点と大幅な増点となる。

一般名処方加算は2点、後発医薬品使用体制加算は20点、外来後発医薬品体制加算は2点引き上げる。「一般名処方の趣旨を患者に十分説明することについて、当該保険医療機関の見やすい場所に掲示していること」など、施設基準を設け、患者への周知を求めた。

薬局に対しては、地域支援体制加算について、後発医薬品調剤体制加算3(90%以上)では「3点」、後発医薬品調剤体制加算1(80%以上)、2(85%以上)では「1点」引き上げる。施設基準としては、地域の保険医療機関・同一グループではない保険薬局に対する在庫状況の共有、医薬品融通などを行っていることや、こうした取り組みを見やすい場所に掲示していることを求めた。

◎支払側・松本委員 「後発品業界の体質や産業構造を変えることが必要」

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「後発品の安定供給問題はほとんどがメーカーの不祥事を発端とするものであり、医療機関や薬局の業務が増えていることは理解するが、最大の被害者である国民、患者に最終的なしわ寄せが来ていることは事実だ」と指摘。「普段飲んでいる薬が、今回の薬価改定で値上がりする場合には二重で負担が増えることになる。医療現場に配慮した緊急避難的な対応とはいえ国民、患者の理解を得ることが不可欠であり、その旨の説明、周知もよろしくお願いしたい」と述べた。

また、「診療報酬上の手当によって安定供給問題が解決するとは到底考えられない。後発品業界の体質や産業構造を変えることが必要だ。それと同時に、医療現場における薬剤の適正使用も極めて重要な観点だ。安定供給以前の問題として、医薬品だけではなく、挙げられた医療資源を有効に活用し、過不足の生じない最適な医療を積極的に推進すべき」と述べた。

支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)も、「問題の根本的な解決には薬価や診療報酬での対応ではなく、医薬品業界の構造的な問題など、根源的な部分についての議論と対策が必要と考えている」と指摘した。

◎診療側・池端委員「特例期間中に抜本改革を」 

診療側の池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)も、「これだけで安定供給が改善するわけでは当然なく、一時しのぎの対策だ。基本的に不安定供給問題は別のところに大きな原因があると私も強く思っている。抜本的改革を23年12月末まで(特例期間)の間に少しでも行い、改善できるよう、検討会の審議も含めて進めていただくよう、強く願う」と述べた。

◎厚労省・安藤産情課長 有識者検討会の議論踏まえ「将来的なビジョンを示す」

厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の安藤公一課長は、「後発品を中心とした足下の供給問題については産業構造の問題、あるいは企業のビジネスモデルの問題の改善が問題を完全に解決するためには必要となると考えている。有識者検討会でどのような対策が必要かいま検討しており、それを踏まえて将来的なビジョンをしっかり示していきたい」と述べた。また、医療現場に対し、「正確な供給情報がいち早く届くというところで、引き続き必要な対策というものを講じて参りたい」と述べた。

◎安定供給問題を調査・検証へ 支払側・松本委員「国民負担増に見合う調査を」

議論を踏まえ、附帯意見には、「不安定供給の対応を患者・国民に負担させるという問題の指摘を踏まえ、患者・国民の声をよく聴き、その実施状況及び安定供給問題への対応状況について調査・検証を行い、課題が把握された場合には速やかに中医協に報告の上、対応を検討すること」と明記された。この際、患者に医薬品を安定供給する方策について、「患者負担との関係も念頭に置きつつ、安定供給問題の根本的解決に向けて、有識者検討会の議論も踏まえながら、十分かつ早期に検討すること。また、医薬品の適正使用を含め、限りある医療資源を有効に活用する取組を積極的に推進すること」が盛り込まれた。このほか、「延長は行わない」ことも明記された。

支払側の松本委員は、調査については「ぜひ患者の負担増に見合う内容にしていただきたい」と要望した。

◎公益側・中村委員「国民負担増の痛みを厚労省は理解を」 負担増で得られるメリットの説明を 

答申を受け、公益側の中村洋委員(慶應義塾大大学院経営管理研究科教授)は、「今回の決定により国民患者の負担が増す。厚労省においては、その痛みを十分理解したうえで、国民・患者に対し、その負担増に至った背景、あるいはその負担増によって得られるメリットなどについて、様々な機会を通じて十分に説明の方をいただきたい」と述べた。

小塩会長から答申書を受け取った本田顕子厚労大臣政務官は、「患者・国民の声をよく聞き、その実施状況および安定供給問題への対応状況について調査・検証を行うなどについて真摯に受けとめて対応する」と述べた。

◎小塩会長「産業構造、ビジネスモデルを含めた抜本改革が政府に求められる」

小塩会長は、総会の最後に今改定を振り返り、「新型コロナはまだ収束していない。医薬品の供給に不安定なところが出てきている。そういう厳しい状況の下で国民の負担をできるだけ抑制すること、それから医薬品の供給をできるだけ安定化させること、そしてイノベーションを進めること。そういう重要な課題を見ながらバランスの良い薬価の見直しをしていただいたと思う」と述べた。医薬品の供給不安については、「薬価あるいは診療報酬の見直しだけではなかなか問題が解決できない。産業構造、あるいはビジネスモデルのあり方も含めて抜本的に医薬品の供給体制についての再検討が政府に求められるというふうに思う」と述べた。


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