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中医協 ゾコーバの市場急拡大への対応を了承 留意事項通知発出へ 薬価算定組織に「合理的な説明」求める

公開日時 2023/02/16 06:30
中医協総会は2月15日、新型コロナ治療薬・ゾコーバについて、薬価収載時の対応と市場急拡大時の価格調整について同剤に限った、特例的な対応を診療・支払各側が了承した。市場規模が年間1500億円超へと急拡大する可能性が否定できないことを踏まえた対応。留意事項通知の発出で、臨床症状のある患者など、同剤の投与が必要な患者に投与を絞るよう、医療機関、薬局に周知、徹底を図る。あわせて、催奇形性のリスクなど安全性について文書による説明・同意取得が求められていることも周知する。出荷量などによる推計データを用いた特例拡大再算定は、年間1000億円超から適用する。いずれも薬価収載時に改めて詳細について議論する。総会に先立って行われた薬価専門部会では、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)が薬価算定専門組織に対し、「(薬価算定の)考え方についてもご提示いただきたい」と述べるなど、薬価算定組織に合理的な説明を求める声が診療・支払両側からあがった。

厚労省保険局医療課はこの日の中医協に、ゾコーバの対応案を提示した。対応案では、国民皆保険の持続可能性とイノベーションの推進を両立させる重要性を強調。革新的医薬品の評価を行うとともに、市場規模が高額となる場合の医療保険財政への影響をできる限り小さくする観点から、「既存のルールを基本としつつ、感染拡大等によって急激に市場規模が拡大しうる本剤の特性から特に対応が必要な事項に限って特例的な対応を行うことが適切」とした。

◎保険上の留意事項通知で重症化リスクのない軽症への投与は慎重に 禁忌など安全性も周知

具体的には、中医協総会で薬価算定とあわせて、保険上の留意事項と薬価収載後の価格調整(市場拡大再算定)について決める。

保険上の留意事項通知としては、学会ガイドラインを踏まえ、「高熱・強い咳症状・強い咽頭痛などの臨床症状がある者に処方を検討すること」、「一般に、重症化リスク因子のない軽症例では薬物治療は慎重に判断すべき」とされる内容を周知する。同剤は、重症リスクのない軽症から使用できることもあり、一般流通により、急激に投与が拡大する懸念があるが、投与対象を明確化し、必要な患者に投与を絞る。あわせて、同剤は催奇形性のリスクがあることから、妊婦への投与は禁忌となっている。しかし、妊婦への投与事例が確認されたことを踏まえ、留意事項通知には、併用薬剤や妊娠の有無などの禁忌事項についても確認を行うとともに、同剤の有効性・安全性についての情報を文書による説明・同意が承認条件となっていることを明示する。

◎特例拡大再算定の適用 四半期ごとに直近1年間の推計データで判断

薬価収載後に市場が急拡大した場合は、市場拡大再算定で対応する。現行制度では、年間販売金額の大きい品目に対する市場拡大再算定の特例(特例拡大再算定)として、「年間1000億円超1500億円以下」、「年間1500億円超」があり、この場合に限り、推計データを用いるとした。なお、薬価調査やレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)に代え、新型コロナウイルス感染症の患者発生状況、同剤の投与割合、出荷量等の情報に基づき推計する。

年間販売額の推計について、厚労省はこれまで、「四半期ごとに直近3か月間の市場規模を基本」とすることを提案していた。しかし、業界ヒアリングで過大推計になるとの懸念が出たことを踏まえ、「四半期ごとに直近1年間」の推計データとすることとした。ただ、薬価収載後1年間は実際のデータがないことから、「収載からその時点までの期間における推計データ」を基に年間販売額を算出して判断する。例えば、収載後3か月であれば4倍、6か月であれば2倍するなどして、年間販売額を算出して判断する。再算定の適用までの期間は、推計データの把握から4か月を目安とする。通常の8か月から半分の期間に短縮し、市場拡大時に迅速な対応を行う。なお、医療機関の対応する期間を通常と同様、2~3か月間程度設ける。

◎特例拡大再算定該当時の引下げ率の上限は「薬価収載時に中医協で検討」

また、特例拡大再算定に該当した場合、現行制度では引下げ率に上限が設定されている(年間販売額1000 億円超1500 億円以下で予測販売額比が 1.5 倍以上は25%、年間販売額が
1500億円超で予測販売額比が 1.3 倍以上は50%)。中医協では上限の引き上げを求める声なども出たが、「予測販売額によって影響が異なるものであり、引下げへの激変緩和等も考慮したうえで、現行制度どおりとすることも含め慎重に検討する必要があることから、薬価収載時に中医協総会において検討する」とするにとどめた。

薬価算定に際しては、類似薬効比較方式により、類似薬のなかから複数の比較薬を選定して行う。類似薬を経口新型コロナ薬と抗インフルエンザ薬のどちらを優先するかで算定薬価が大きく変動する特殊性があるため。厚労省案は当初、「柔軟な薬価算定」を行うとしていたが、中医協の場で薬価算定組織の裁量に懸念が示されたことを踏まえ、「比較薬と一日薬価(又は一治療薬価)が同一になるように算定することや補正加算等、比較薬の選定以外のルールについては、通常どおりの考え方にしたがって適用する」ことを明記。新薬創出等加算の適用や費用対効果評価の対象を含めて、通常通りのルールを適用することを明確にした。

◎パンデミックや緊急承認の薬価算定は「次期薬価制度改革に向けた課題」

同剤は緊急承認された薬剤であることを踏まえ、本承認後改めて検討することになる。厚労省は、「パンデミックを来す感染症のような市場規模の推計が困難な疾患を対象とした薬剤における薬価算定方法等や、緊急承認された医薬品の本承認時における薬価算定の方法等については、次期薬価制度改革に向けた課題として検討する」ことも盛り込んだ。


◎支払側・松本委員 保険上の留意事項通知に文書での説明・同意明記は「大変重いこと」

中医協総会に先立って行われた中医協薬価専門部会で、診療・支払各側は厚労省案を大筋で了承。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「可能な限り合理的な説明ができるように丁寧に議論の方をお願いしたい」と薬価算定組織に注文を付けた。

催奇形性などの安全性リスクがあることについても改めて言及。「有効性と安全性について、患者が十分に理解し納得した上で適切に薬剤が使用されることは極めて重要だ」と指摘。「留意事項通知において文書による説明と同意の取得が記載されることは保険診療のルールとしては大変重いことだ。医療現場において、通知に基づくプロセスを周知徹底いただきたい」と求めた。

また、「新型コロナの先行きは楽観視できず、急激な財政インパクトも否定できないことも事実だ。コロナ患者の発生状況と医療現場におけるゾコーバの投与割合に基づいて市場動向を適時適切に把握し、1000億を超えた段階で速やかに特例債算定を適用することは不可欠」と指摘。「医療保険制度が極めて厳しい状況にあり、まさに財政負担のあり方について国をあげた議論が行われているということも押さえておくべきことということは、指摘させていただく」と改めて訴えた。
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