【有識者検討会 3月17日 その2 発言要旨 流通に関する諸課題・薬価差等】
公開日時 2023/03/20 04:51
厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の10回目の会合が3月17日に開催された。この日の前半は、前回2月15日に議題となった「医薬品の安定供給」について、特に薬価制度の起因する課題について議論した。後半は「流通に関する諸課題」のうち薬価差等をテーマにディスカッションが行われた。本誌は有識者検討会の構成員による議論の発言要旨を公開する。
遠藤座長:「流通に関する諸課題」(資料21ページ以降)について、薬価差益が中心課題でありますが、これについて意見いただきたい。
坂巻構成員:そもそも薬価差ってどうして発生するのかというところが、いまだに理解できない。資料31ページに書いてあるが、上限が決まって、あとは薬価差益を得たいから、価格交渉して値段を下げるというのが原因。あと、ここ書かれている資料には、例えば薬価差が市場実勢価格をばらつかせる理由とあるが、これは薬価差発生の原因というのとはちょっと違うような気がしている。そういう意味でなぜ薬価差が生ずるかっていうことをもう1回考えた場合、製薬企業としては価格を維持するために納入価を維持するために納入価を薬価の下に設定しているが、先入観かもしれないが、医薬品卸というか医薬品流通のあり方自体が非常に近代化されてない。ここに原因があるのかなっていうことを今日の資料の中で感じてきた部分がある。
資料25~26ページに「流通に関する出来事の変遷と諸課題」をまとめているが、昔の値引き補償制度の理念が全く変わっていない。リベート、アローアンスみたいなものが導入されている。本来メーカーとしては価格を維持しようとしているけども、このリベート、アローアンスというのは我々素人や部外者から見ると訳わからん仕組みで価格(薬価)が下がっても、卸の経営が成り立つ。はっきり言えば前近代的な価格形成、流通の仕組みが理念として残っている。他にも販社の存在などある。こういった長い間、厚労省として医薬品流通を近代化すべきということのメッセージに弱いところがったのではないか。これから、いろんな制度の議論これから出てくると思うが、やはり一番最初に今の医薬品流通のあり方の前近代性についてもう1回考え直さなければいけないと思っている。
少し話が逸れるかもしれないが、製造側の少量多品種製造の課題という話があったが、医薬品以外では少量多品種も一般的だ。例えば100円均一ショップとか、こういったものを見ていけば、医薬品においても流通近代化と合わせて卸が少量多品種流通をちゃんと行うことについて、できる形を作ることで近代化を図る。例えば総価取引が是正されるとかに繋がっていくのではないかと思う。ちょっと話が雑駁だが流通の近代化ということと、行き過ぎた薬価差の是正ということは、おそらく切り離せないのではないかと考えている。
遠藤座長:ありがとうございます。意見でありましたが恐らく反論はないのではないか。いまの坂巻構成員の発言について何かご意見等ございますか。はい三村構成員お願いします。
三村構成員:近代化がどうこうというのは、ある意味、日本の流通の永遠の課題でございまして、あえて卸が仲介することによって、そのような局面が出てくるのは必然的なところある。正直言って今の少量多品種とか非常に大きな品揃えとかっていう形の中で、なぜ日用雑貨品では基本的なシステムが出来上がっているのに、何故、医療用医薬品ではそれが難しいのかということだ。これには恐らく二つの要因がある。例えば数百万円する新薬創出等加算品から、上市後10年、20年を経過した医薬品が同じ制度体系の中に入っている。これは基本的にあり得ないということだ。流通経路やそれにあわせた供給体系が整備されてない中で、全て一元的な政策の中に追い込まれ、最終的には平均乖離率の中で動いていく。そうすることによって実は非常に大きな流通への負荷がかかっている。その意味では正直言って、よく頑張ってこられたというのが私の印象だ。
それからもう一つ。新薬創出等加算品に対して基本的に価格改定なしの新しいルールを作っていただく。あるいはバイオ医薬品やオーファンドラッグを含めて、それに合わせた流通経路を作って頂くことができれば、当然メーカー・卸の行動は変わるだろう。さらに基礎的医薬品を非常に強いジャンルとして設定し、総価取引の中に入れないという話が出てきている。これも流通が非常に整理されていくと見ている。
流通近代化について私は、取引の近代化という視点で取り組んできた。今回はもう一つ、情報システム基盤とか物流基盤などプラットフォームとしての構築の方向性もっと強く出していただくと、恐らく流通のあり方が変わってくると思う。
もう一つだけ。これは香取構成員の方が詳しいかもしれないが、ある意味で残された議論がある。従来、現行の薬価制度に関しては、医療機関に過剰に薬価差が発生しないようにということを前提に、いまの薬価制度が構築された。そして医療機関に対しては基本的に診療報酬で対応するという形でやってきた。ただ、あの当時は、基本的に医薬分業が進展していなかったということもあり、薬局に対してどういったような償還方式が適当なのか基本的な議論がない。それが非常に混沌とした中で、さっきの資料を出していただきましたけれども、まず特定の薬局について非常に大きな薬価差が偏在するという状況がある。これは基本的にやっぱり何らかの形でやはり対応していく必要があるが、私は印象としては、まずその前に新薬創出等加算品、バイオ医薬品、オーファンドラッグについてしっかりと制度体系を作っていただいた上で、それから新しい供給体制に向けての取引のあり方っていうのが機械的に決まってくるのではないかというふうに考えております。以上です。
遠藤座長:ありがとうございます。坂巻構成員の質問への答えでありながら非常に重要な視点を残していただいた。
三村構成員:近代化していないことについて否定しませんが、なぜ近代化がなかなか進まなかったということについての意見でした。
遠藤座長:よくわかりました。三浦構成員お願いします。
三浦構成員:薬価差についてですが、資料の32ページにあります。私の考えとして、やはりこの薬価差は小売りマージンだと思う。小売りは仕事をしており、そこは市場取引で経済活動をしているので、在庫費用などリスクの管理をしている。したがってバイイングパワーや地域差の問題以前に薬価差、小売りマージンがあるはずだというのが私の認識だ。
ただ、次の問題としては、“もっと少なくていい”というのが基本的な考え方だ。実際にOTCとか一般消費財とか、商品を売る場合には単に在庫を管理しているだけではなくて、売るために営業活動しているわけで、営業費用はものすごく少ない。そういうふうに考えますと、マージンはもっと少なくていい。あともう一つ大きなポイントとして、最終価格が変わらないというのも決定的な特徴だ。薬価の場合に最終価格は変わらないわけですから、ものすごい薬価差や小売りマージンがとれる。その一方で一般消費財の場合には、値引きのセールをやったりするなどで最終価格がやっぱり下がるわけです。したがって、高知マージンは減るのが一般的なんですが、その点、医療用医薬品の場合には減らないのが決定的でして、そういう考えますと、一般商品に比べて小売りマージンが少なくて当然ではないかと理論的には考えられる。
そういうこと基づき、最後の論点に照らすと、45ページですが、薬局や診療所、病院によって変わってくるとは何かっていう話ですけれども、小売りマージンは少なくてしかるべきと思うが、その一方で小売りマージンをものすごく取っている。この間もちょっとお話させていただきましたけども、ある新聞では大手ドラッグの調剤部門の粗利、小売りマージン、まさに薬価差の平均が38~39ということですから、一般商品に比べて遥かに高い薬価差、小売りマージンをとっている。普通の商品との違いですが、OTCでも一般商品でも食品でもバイイングパワーが強いと、大手チェーンが納入価を下げさせる、これ当然の経済原則なわけですから、そこまでは全く問題ない。加えて消費者に安く売るために販売価格を下げる。一方で医療用医薬品の場合には、薬価が決まっているため、買い叩いても安く売るのでなく、高いままだ。これが大きなマージンを取る感じがある。一般的な大手チェーンの場合は消費者に安く提供しているが、医療用医薬品の場合には買いたたいても安くできない。では、薬価差、小売りマージンをどうすべきか。理論値を考える必要がある。理論値を決めてある程度あったら、それ以上は国に還元するとかという話もあった。医療用医薬品は国に還元して頂いたら、最終的に国民に戻るわけですからそういったこともありえそうな感じがする。
さっき坂巻構成員も発言されたように、地域差によって配送費用が変わるというのは、これは卸マージンの話。小売りマージンである薬価差には関係ない。薬局の方に話を聞くと単なる在庫だけではなくて地域医療に対する貢献のいろんな活動されているとかいろんな費用がかかっている可能性もある。単にもっと少なくていいというだけではない。やっぱり薬局の方の何かご意見も聞いていただければいいかなと思っている。以上です。
遠藤座長:ありがとうございました。はいそれでは三村構成員お願いいたします
三村構成員:いま三浦先生のご意見だが、実はかなりところは価格交渉の実態のことを発言されたのだと思う。ただ、そこに大きな勘違いがある。私は薬局は小売りモデルではないと考える。薬局として経営する中で調剤機能がある。そして調剤機能は薬価体系の中に入っている。ドラッグストアの中に調剤コーナーがある。そこが基本的に薬価制度の対象となる。そこを一緒になって議論すると、あたかも薬局が小売業であるかのようにちょっと勘違いされる風潮が生まれているという感じがする。
小売業とは何か。実は仕入れ販売におけるマージンを取って自己リスクで仕入れすることで収益を得ることにある。そこにあるのがマージンだ。ただ、ここが基本的に一番難しい。薬局の場合は、被処方元であり処方箋は外からやってくる。その処方箋を調剤し、患者(顧客)に渡す。一律の薬価が基本的に使われているのは、基本的に医療保険制度において国民は一律・公平な医療を受けていただき、医薬品が得られているという前提だ。ここに価格競争を入れないっていうのが基本的にこの制度の条件だと思う。
多くの方はそれを理解されているが、段々組織が拡大して、購買部門の方と調剤とか医療現場を知っている方との間で必ずしも意識が同じではなくなってきている。それが恐らくこのような形で問題を広げていくのではないか。薬価制度ってなんだという問いかけに対し、基本的には薬価は購入価で対応するべきという意見もあった。それは基本原則であって、いまは、できるだけ民間の力を入れながらフレキシブルに動かし、市場実勢価主義という、ある意味で囲い込まれた競争原理を取り入れたのだと考えている。ここはきちんと整理しておかないと議論を混乱させるだろう。むしろそう考える方が増えていることは非常に危ないことだと思う。
これは私の意見だが、薬局は小売業ではない。小売業と言った途端に薬局の機能が見えてこなくなる。薬局という形態は小売業的なものをやっているところも多いが、調剤というところに関しては明らかに医療サービスの中にある。それに対しての調剤報酬を得ている。以上です。
遠藤座長:はい。それでは三浦構成員お願いします。
三浦構成員:三村構成員が発言された通り、もちろん一般の小売業とはかなり違うことがある。メーカー・卸は官製市場取引で、卸・薬局のところは市場取引ですが、薬局から消費者のところは市場取引でない。そういう意味ではもう普通の小売りとは全然違うところがあり、そこをどう考えるかっていうことが重要だ。その中で薬局をどう捉えるかということで三村先生がご指摘するように小売業じゃないという話もあるし、私は半分ぐらい関わっているような感じがしたわけで、議論の必要性もあると思った。三村先生のように流通のご専門の方の意見はすごく重要ですし、私の感覚としては、何か薬局の方の意見を参考に、それをどう変えるかという意味でもあるかなという感じがした。以上です。
遠藤座長:はい、ありがとうございました。ただいまの議論に関連しても結構ですし、そうでなくても結構です。香取構成員どうぞ。
香取構成員:今日の資料は非常によくできている。薬価の問題を議論するときのパースペクティブがよく見えてきているんじゃないか。先ほど三村構成員が発言したことの繰り返しになるが、やはり今の流通の形がなぜできてきたのか。今の流通の形を規定しているものが何なのか。この薬価制度がバックライン方式に始まり、R幅になり今の調整幅になっていく過程の中で、川上川下で、いわばその制度の中で作られてきた様々な流通の形というのが見えてきているのではないか。
総価取引の問題があったが、総価って結局、薬価の改定方式を変える中で生まれてきたものだ。以前に話したが、こういう取引の形態って多品種少量のものでも殆どないはずのものだ。普通は単品取引されていて、それが最終小売価格に反映するっていう形取引を行っているはずで、一般医薬品はそうなっているはずですから、そうするとやはりこれは最終価格を肯定している中で、こういった薬価の算定方式をとり、個別の取引について一定のこういうことがあるという中で生まれてきたものだし、その昔のその値引き補償の形を建値制を仕切価制に切り替えることになったが、結局調整幅をする中で、リベートやアローアンスで動いているっているのは、言ってみれば元に戻っているわけで、そうすると今の流通の形を近代化していく、綺麗にしていくってことを議論するときには、やっぱりその前提となっている取引の形を規定している今の薬価制度を変えない限りは本質的な物事は変わらないということになるのではないか。
これは後で教えて欲しが、バルクライン方式とR幅方式は基本的なモノの考え方が違う。これは明らかだ。バルクライン方式は殆ど全ての90%の医療機関が安定的に納入できるってことを前提に設定したので、薬価差は出てもいいって考え方ですよね。薬価差が出たら医療経済実態調査で調べて、歳入でカウントして調整するというもの。言ってみればそういう考え方ですけど、R幅になったときにその考え方が変わった。このR幅と調整幅って、私には何が違うのかわからない。これ説明の仕方が違っているだけで、やっていることも考え方も同じような気がする。これを調整することでなぜ15%のものが2%にできるのかっていうことがいま一つわかんない。
そのことで言うと、これだけかなり厳しい薬価改定をしてきても、現実の乖離幅は大体7%から8%ぐらいでこれ以上、下がっていないことを考えると、市場実態との関係で言えば、その乖離幅の理由の説明はありますけれども、やはり今のやり方で考えた時に、一定に市場に幅を与えるとするならば、現実の形がこうなっていること考えると、いまの2%はかなり無理がある気がする。
もう一つは今日の資料が出ているが、その取引先によって乖離幅は違っている。それから薬効群別でも違っている。薬効群のそれぞれの市場規模であるとか参入企業数、剤形それぞれで取引の形も違っている。つまり医薬品市場というのは一律の市場ではないということ。それぞれごとに取引条件も違っているし、実際には医療上のニーズも違っている。これらが混在しているものを、一発乖離率なんぼって形で改定をする形があるから総価取引の形が生まれることが考えられる。であれば先ほど話もあったが、やはり医薬品のカテゴリーによって薬価の決め方など流通の形を規定している様々なルールをもうちょっと極め細かく考えていくということが必要だということがわかる。
それからもう一つは、ここの意見でもあったが、薬価差が医療機関の経営原資になっているという話があるが、果たしてそれは本当か。バルクラインの時代は膨大な薬価差があって、それが現実に医療機関の大きな収入になり、それが取引上のいろんな誘引になっていた。
資料27ページに納入額割合の推移が示されているが、いまや診療所は全体の15%しかない。病院もこれだけ下がっていて、圧倒的に納入先は薬局なっている。かつ資料34ページをみると、いわゆる薬価差と言われている小売りマージンというかなんというか、要は納入価と請求価の差で発生しているものが、実はもう3分の2は薬局に発生している。かつ薬局の方の乖離率が高い。かつて処方権のある医療機関に薬価差があることが処方誘引になって、クスリ漬け医療が起こるとか問題もあったわけだが、いまやここに薬価差がでている。
しかもここは処方権がない。処方に基づいて医薬品を出していて、その行為については、処方箋料という形で調剤技術がついている世界だ。その意味でいうと、その差を合理化できるかっていうのは、ちょっと議論する必要がある。もちろんその薬局の方に話を聞くっていうのも良いと思うが、さらに言えば、様々な取引代行業者が生まれている。通常の今までの医療機関、医療法人とは違う。薬局は基本的に営利法人ですから一応は違う原理で物事を見る世界がある。そう考えると今のルールでやった時にこの先どうなるかっていうことを考えると、これだけ医薬分業が進んで、薬局がこれだけの薬価差をとる現実がある。やはり全体として問題状況が変わっている。世の中の人は、薬価差は基本的に医療機関に出ていて、それを薬漬け医療の問題だと考える人もいる中で、今はそうなってない。そう考えると薬価差の問題を経営原資しだとか、そういう視点で捉えることはやめた方がいいのではないか。いろんな意味で流通改善する意味でも、本来の保険局的な視点でその薬価差の問題をどういうふうに保険財政上考えるかということもそうだし、いろんな意味でかなり根本的な物事を考え直した方がいいっていうことが、そろそろいろんな意味で明らかになってきたのではないか。
薬局もバイイングパワーを強くするってことでチェーン薬局やボランタリーチェーンがでてきて交渉力を上げてきているが、そういう形の取引が本当にこの分野で行われることを医療保険政策上、あるいは薬事行政上、是とするのかが問われることになるのではないかという気がする。もう根本的なところからいろいろ議論した方がいいのではないかというふうに思う。以上です。
遠藤座長:ありがとうございます。ちょっと私から質問させていただいてよろしいですか。非常に重要な指摘をいただいていると思う。香取構成員、ご指摘の基本的な考えに納得のいくところが大きいのですが、具体的にどういう政策が有効であるか聞かせいただきたい。
香取構成員:こういう場でお話するのがどうかわかりませんが、やはりこれだけ新薬、後発品、長期収載品それぞれにそのマーケットの構造が違っていると、薬価差の出方も違っている。それから薬効群別にも違っていて、かつ疾病構造の変化によっても動いているわけですから、やはり一律に乖離率を決めてそれで改定をするっていうやり方ではなく、カテゴリー別に薬価の決め方を変えていく。先ほど基礎的医薬品とか安定確保医薬品とかについては別の形をする。それこそ実費償還にするとか、実費償還+管理コストで償還すれば薬価差は出なくなるので、そこで薬価交渉する必要はない。かつ、薬価の高止まりが問題になるのであれば、それこそ、そういう薬ではない安定確保医薬品とかにすればいいわけで、新薬と後発品も違って良い。薬局マージンの問題は経営の話もあるので難しいと思うが、公定価格を維持しながら、薬局マージンのことを考えるというのであれば、ちょっといろいろ議論があるが、薬局に関しては、別の形で償還させると。
基本的に処方権がない人たちで調剤報酬が別についていることから考えれば、本来そこは実費コストとして医薬品の管理コストだとかそういうものを除けば、実は薬価差を求めて、そこから収益が出ることを容認する理由はないはずだ。であれば別の形で償還させる形を考える。薬価そのものを変えるっていうと一物二価になって、また現金問屋とかが暗躍することになるから、多分そこは一定価格を決めるってルールを決めた以上は、価格そのものを変えることは恐らく難しいので、別の形で償還させるようなルールを作る。だからといって調剤報酬を削るというよりは、薬価差マージンそのものをどう考えるっていうふうにして、別の形でそれのルールを外に入れるとか、何かそういうサブシステムを入れ込んでいくことで、全体を透明化するということが多分必要になるということ。あまり議事録に残して欲しくないけど、私の個人的な考えですが、そういうことは考えた方が良いのではないか。
遠藤座長:ある程度具体的なイメージがあるという議論もしやすいかなというふうに思ったものですから、答えづらいお答えいただきましてありがとうございました。それでは菅原構成員どうぞ。
菅原構成員:ありがとうございます。この検討会は、いま直面している喫緊の課題への対応と、それから中長期的に考えるという話が最初にありました。資料45ページのスライドに事務局が今後の対応の方向性の論点というのをまとめていただいた。特に薬価差について、2番目と3番目の「ポツ」だが、前半の議論にありましたが、やはり安定確保医薬品、あるいは最低薬価の適用される医薬品というものが、実際に総価取引のある意味「調整弁」になっていて、結果的に値段が下げられても、制度的にそれがまた元に戻るわけですから、ある意味は本当に制度のそもそもの趣旨が大幅に歪められているという印象を強く持っている。
ですので、特に安定確保医薬品ですね、先ほどルールありました最低薬価適用医薬品について、必ずしも薬価の上昇がなくても値段が改定されるという説明がありましたけれども、いままさに申し上げた通りだとすると、こういう「調整弁」になって薬価が下がったからといってまた戻るというようなことが仮に行われているとすると、本当にここの部分に関してはメスを入れなきゃいけないというふうに私自身は思った。
どういうことをやるかという話になりますけれども、これに関しましてやはりある程度の調整幅の話とも関わりますけれども、こういった医薬品が総価取引の調整弁にならないような、対応しなきゃいけないわけで、そういったことは行政指導で、例えば病院など医療機関や調剤薬局でできればいいですけど、その実効性がなかなか難しいという話になるのであれば、私は納入価償還という実費償還ということもあるかと思います。
基本的には薬価差はなくなりますけれども、患者さんにとってはで負担が変わるという話にもなりますから、我が国のユニバーサルサービスというか同じ値段で公平なサービスという姿勢からすると、批判が出る可能性もあるなというふうに思う。ですので、私としては個人的にはクローバックや公定マージンというものを医薬品に導入することで、一応患者さんに対する負担の公平性を確保しながら、不要な値引きが起こらないような仕組みを考えていくという方向性があるのではないかというふうに思う。
それから資料43ページのスライドにある調整幅についてですが、こちらについても事務局の方から論点が出ている。先ほどから複数の構成員から発言がありましたが、私も基本的な問題意識として一律2%という調整幅が、そもそもの考え方や位置づけについて疑問を持たれるような状況になってきている。資料43ページの1枚目の調整幅の考え方・位置づけについてだが、基本的には市場原理での配送効率の地域差にはこのばらつきの吸収というふうに言われてきたが、逆に言うと、資料43ページのスライドの右下を見ると、現実には、こういう形で各都道府県別、地域別の配送コストの差はもう明確に把握できているわけだ。そこを考えると、やはりこれを一律で全部やるっていうことが妥当なのかっていうことだ。コストの把握がある程度できるのであれば、実態に合わせた形での調整幅の付け方っていうのを考えるべきではないか。
そういった場合にはいくつかの方法があるかと思う。地域差指数のようなものを考えて、このR幅というものに少し変更を加えていく。あるいは先ほどから指摘のあるように、薬効や剤形ごとに配送コストもずいぶん変わってくる。資料には実態と課題の中に書いてあるが、オーファンとか再生医療等製品は配送する場所が固定されるので、これについてはあまりばらつきを考える必要はない。一方で後発品はかなりばらつきがあるので、いま言ったように、配送しにくいものだとか、地域に関しては特段の配慮が必要だというふうに思う。現実的に技術的な進歩もあるので、地域差指数や薬効、剤形別、あるいは不採算の地域についてもう少し把握した上でそれに実態を合わせた形でのR幅の考え方を整理されてはどうかというのが私の意見だ。以上です。
遠藤座長:はい、ありがとうございました。非常に具体的でわかりやすいご説明だったと思う。ありがとうございます。他にいかがでございましょう。それでは川原構成員お願いします。
川原構成員:薬価差の背景について厚生労働省の資料でよく理解できた。私からは医療機関経営の観点から少しお話をさせていただく。先ほど香取構成員から処方権のない薬局について話があった。私からは処方権のある病院についての経営状況を理解しておく必要があるのかなと思っている。
医療経済実態調査の一般病院の集計1の医薬品費の構成比率が12.8%。それに対して今回の全体の乖離率の平均7%を掛け合わせると0.9%になるといった状況だ。売り上げの約1%が薬価差というふうにみなせる。これ病院全体の損益差額ですけれども、国公立も入れますと▲6.9%。医療法人に限るとプラス0.1%という結果になっている。この中で利益率が低いといいますか、赤字もしくは非常に低い利益率の中でこの1%がなくなった場合には、経営に大きな影響が及ぶというふうなことはあると思う。いままでは医療経済実態調査上の話ではあるが、今般の新型コロナ禍で医療機関経営はだいぶ影響を受けている。特に病院については二極化しているのかなという状況だ。
コロナ患者受け入れている病院と単科病院では2極化している。病院団体の調査によると外来患者数の方は、ほぼコロナ前と同じような状況に戻ってきているが、入院患者数はなかなか戻ってきていない。このような状況下で考えると、コロナの補助金をもらって黒字を確保している病院であっても、こういった受診抑制が今後も続くのではないか。あと病院給食や電気代といったところで物価高騰の影響は及んでいる。これクラスターが発生した都度、大きな損失が発生しているというふうな状況に医療機関、特に病院があるといったところなので、今まで診療報酬がきちんと手当されてなかったことによって低い利益率もしくは赤字というふうな状況にある病院が多いといったところだ。非営利の病院についてこの薬価差というのが非常に大きな影響があるといったところは言えるのではないのか。
過度な値引き要求については何らかの制約があってしかるべきだと思うが、今までもメーカーや卸の利益という話もありましたが、特に病院等における利益水準といったあたりも考慮に入れながら議論を進めていく必要があるのではないか。以上です。
遠藤座長:はい、ありがとうございます。医療機関の立場から見た薬価差益の意味合いということを現実のデータをベースにお話をいただいた。他にいかがでございましょう。坂巻構成員どうぞ。
坂巻構成員:今までの話の繰り返しで恐縮ですが、やはり薬局に関しては小売りマージンという言葉は正しくないのですが、何らかの形で薬価差益が出ているのは事実だと思う。薬局に対して処方薬の処方権は確かにない。ただし、調剤における裁量権はある。つまり特許切れ医薬品に関しては一般名処方だったり、処方箋に変更不可のチェックなければ、どのジェネリックを使うかについては薬局でそれを決めることができる。場合によっては最も薬価差益の大きいジェネリックを採用して調剤するっていうことで、言い方が悪いがその薬価差益分を稼いでいる。これは経営原資なのかというと、やっぱり現実的には薬局においては経営原資だと思う。
今までの香取構成員や川原構成員の話は、確かに病院の話はその通りだ。もうかなり経営原資にするには、薬価差益分ってかなり縮小してしまっている。でも、薬局に関してはまだ問題が続いているんじゃないかっていうのは、現実認識として、そんなに間違っていないのではないかと思っている。そういう意味では薬局において先ほど三村構成員から発言がありましたが、薬局における特許切れ医薬品の薬局における薬価償還の仕方というのは別に考えてもいいだろうと思う。ちょっと具体的にどうしたらいいのか分からないところがあるが、別な議論が必要だろうと思う。
それからもう一つ。調整幅って一体どこに行っちゃうのかな。先ほどから話がありますけど卸のコストが発生しているのは確かだけれども、最終的には特にジェネリックでいえば薬局の薬価差益に最終的にはまた戻っている。いわゆるコストがかかっているはずなのに最終的に卸のところに還元されていないという問題もある。結局、調整幅の議論をするときにそこをその価格維持の仕組みとして議論しても。あまり流通の仕組みを改善するにはあまり本質的な議論でないような気もする。以上です。
遠藤座長:ありがとうございます。いかがでしょうか? ただいま坂巻構成員が発言された内容に関することでも結構でございます。はい三浦構成員。
三浦構成員:基本的には乖離率が、やっぱり年々下がっていくわけですが、それを下げさせないための一つの手段なわけですので、卸にとってもメリットがあり、メーカーにとってもメリットがあり、薬局にとってメリットがあるものですから、何かその卸の地域差だけでやるのはちょっと論理的にはわかりにくいという感じがあります。
あと一点ですが、やっぱり流通近代化みたいな話がありましたけれども、三村構成員が発言されたように医薬品流通はかなり違う訳ですね。先ほどの議論とは別で言うと、全ての業界で単品単価取引が当たり前の中で、単品総価が残っている。総価取引が残っているというのはやっぱり問題でして、できないかっていう話はあるわけですけれども、大手の医薬品卸はOTCではもう完全単品単価をやっているわけですよね。
数年前に成川先生と一緒に厚労科研をやらせていただきましたが、そのときに卸何十社と薬局何十社とかで質問票調査を行った。その時も、卸は単品単価できます、という回答は9割以上だったのですが、一方で薬局側はやりたくないっていう感じがすごくあった。システムを作るのが面倒くさいとか、利益が減るみたいな話もありまして、そういった意味では卸はできるが、薬局はやらないという状況がやっぱり数字的に表れた。やっぱり流通近代化という意味では、そこも大きなポイントだ。香取構成員からお話がありました基礎的医薬品に関しましては、納入価償還や実費償還みたいな話がありましたけれども、そういうことをするためには単品ごとにやる必要がありまして、卸まではできると言っているわけですから、薬局に努力していただいて、もちろんそれ実費費用があるとか情報化システム構築費用がかかるとしたらそれの何か補助なんかも必要かもしれないが、単品単価を何か政策的に進めることをやっていただくことも必要ではないか。以上です。
遠藤座長:はい、どうもありがとうございました。それでは三村構成員。お待たせをいたしました。
三村構成員:ありがとうございます。調整幅については、私は菅原構成員のご意見が非常に参考になると思う。基本的に物流コストとかに対応する費用である。特に最近では過疎地であるとか物流効率が悪いところに対してどうするかという議論が当然出てきていますので、そのあたりをきちんと整理しながら、それに対しては特別な補填するためのそういうものが置かれているってことを整理していけば、調整幅という意義ももっと活きるのではないか。元々、供給安定のためのというこの言葉をもう少し具体的に、実践的につなげていくような方向性で整理されればよろしいのではないかと思う。
遠藤座長:ありがとうございました。他に何かございますか? 成川構成員お願いします。
成川構成員:はい。私自身は市場競争は是と考える立場にありまして、その市場競争が適正に行われていればという前提ですが、そこは流通のいろんな歪みがあるのでうまくいっていないことはわかるんですけど、適正な競争で生まれた薬価差を国民に還元をするというサイクルが回っているというふうに理解します。ただ、やはりベースの競争がちゃんと成されるかが重要で、やはり総価取引だと思っている。
資料39ページの資料を見ると、金額ベースで53%が単品単価取引をしている。ただ、施設ごとに見ると大規模チェーン薬局は20%。そこは単品単価取引が物理的に無理なんじゃないかなと思った時期もあったけど、関係者が理解して努力すればできるんだというものであれば、そこを促すようなインセンティブなり逆に総価取引のディスインセンティブなりというものを考える術があるのかなと思っている。かつて未妥結減算をやった。それがそのままできるかわかりませんけれど、そういった形で少し政策誘導するということを考えてもいいのかなというふうに思っている。以上です。
遠藤座長:ありがとうございます。非常に具体的なご提案をいただけたというふうに思います。他に何かございますか。何か事務局として今までの話についてコメントがもしあれば一言お願いできればと思います。
安藤課長:非常に貴重なご指摘、ありがとうございました。制度論的に具体的な議論も本日はかなりいただいたというふうに思っている。どう整理していくかというところについて非常に悩ましいところがあるが、1回きちんと整理してみたいと思う。併せてどうすれば流通だけで整理しきれないところがあって、前回も議論いただきましたけれども、そもそもとして、例えば後発品について、ある意味製造能力が回らない中で、多品目が実際に市場に出ているという製造側の課題というのも合わせて考えていかなければいけない問題なのかなと思っている。全体について、そういう視点で整理させていただきます。ありがとうございました。
遠藤座長:はい、ありがとうございました。他によろしいでしょうか。
香取構成員:さっきいったR幅と調整幅って、何が違うのですか。すいません、説明できたらしてください。
安藤課長:正直申し上げて明確にこれが違うというようなものは、過去の文献をあさってもないのだが、これまでの中医協の議論や整理を踏まえると、R幅の時と今の実勢価方式の大きな違いは、当時はいわゆる購入価格に対する補償という意味でその前のバルクライン方式と同じように、いわゆる実費補償の考え方をとっていたのがR幅の時。ただ、いまの実績価方式になったときに、あくまで医療機関における平均的な購入価補償という形に考えて切り替えているということは大前提としてある。
ただ、実際やっていることという意味でいくと、R幅が調整幅になっただけなので、実際に外形的には同じではあるのだが、察するに恐らくR幅のときはバルクライン方式でやってきた時と同じように、一応合理的な範囲の取引を前提としておりますが、その範囲の価格差については一定程度補償している。調整幅になってからは、そこの部分の考え方はちょっと変わっているんだろうというふうに思っている。すいません明確にはですね必ずしもそこにはなってないところがあります。
香取構成員:ということはR幅2%ってことは、その値段では買えない、買っていない薬局や医療機関が一定割合で存在するということで、別にそれでも良いっていう考え方ですよね。バルクラインの時代のできるだけ多くの人が買える、逆ザヤが起こらないようにするということをいまは考えていないとうことになる。そう考えるとすると、正規分布が出ているが、一定の人は買えなくても良いということですよね。
逆ザヤの人が買えないと困るからってなるわけだから、2%っていう幅をつけることは、必ず改定した薬価が下がる、取引上の価格をそこまで引き下げるという効果を持っているってことなりますよね。そう考えるとそれって市場を歪めている制度だし、現実の乖離幅が何度やっても7とか8以上に下がらないっていう現状の中で、2%に何の合理性があるんだろうかっていう気が私はしてしまいました。これ私の感想です。
遠藤座長:はいご意見としてあのご意見として承りました。他に何かございますか。芦田構成員お願いいたします。
芦田構成員:発言の機会をいただきましてありがとうございます。今日の全般的な資料と、それから皆様方の議論をお聞きした上での感想になる。今の薬価制度により様々な課題が生じているということを改めてあの認識をした。今の薬価制度は基本的に薬価が実勢価格により下がる構造になっておりますので、社会保障費の薬剤費の伸びを抑えるという効果はあるが、その一方で以前議論されたように新薬開発におけるあの日本の市場のを魅力度が下がるとともに、きょう議論があったように必要な医薬品の価格をある意味下げすぎて。供給不安を生じさせているということかと思います。
きょうの資料にも歴史的な経緯が記されておりましたけれども、その解決方法としてこれまでも例えば新薬であれば新薬創出等加算を設けたり、安定供給のためには、本日ご説明のあった、制度がある意味付加的に設けられているわけですけども、全般的な印象としてですね、パッチワークで対応しているという感がある。私も以前の検討会で革新的新薬については特許期間中の薬価を維持すべきという意見を述べましたが、きょう議論のあった基礎的医薬品についても、そもそも赤字にならないような仕組みを考える必要があるんではないかなというふうに思った。
例えば先ほどもご発言ありましたけれども公定マージンのようなものを設けるということも一つの方法かと思うし、具体的実際にこれまでの検討会でも複数回ご紹介ありましたようにヨーロッパ取られているような方法も一つの参考になるんではないかなというふうに思った。ただ議論をしていくとおそらく薬剤費についてどう考えるかということになる。この検討会でも既に論点として出されているが、マクロな視点から薬剤費をどのように考えていくかということのコンセンサスが必要であるということを改めて認識した。ちょっと感想なります。
遠藤座長:はい、ご意見として承りました。ありがとうございます。他に何かございますか。よろしいでしょうか。それではこれをもちまして本日の会議を終了したいと思いますけれども、事務局何かありますか。
事務局:次回の第11回有識者検討会につきましては、4月4日に開催予定です。詳細につきましては厚生労働省事務局より構成員の先生方にメール等にてご連絡をさせていただく予定です。事務局からの連絡事項は以上でございます。
遠藤座長:はい。それではどうも長時間ありがとうございました。終了したいと思います。