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厚労省・水谷産情課長 有識者検討会の報告書実現へ「24年度改定で大きな方向へ一歩を踏み出す」

公開日時 2023/09/13 05:40
厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の水谷忠由課長は9月12日、ヘルスケア産業プラットフォーム主催の講演会で、2024年度薬価制度改革に向けて、「有識者検討会の報告書に沿った形で、薬価の仕組みの中でも、大きな方向性に向けて一歩踏み出して、そうした形になることを目指して取り組む」と述べた。厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の報告書では、医薬品の安定供給、創薬力強化、ドラッグ・ラグ・ロスの解消の課題について、対策の一つとして薬価制度もあげられている。水谷課長は、今回の薬価制度改革ですべてを実現する難しさを指摘したうえで、課題解決に向けて前進することに意欲をみせた。

◎ドラッグ・ラグ/ロス 製薬企業の意思決定前に「早く手を打つ」 治験環境に課題認識

水谷課長は講演で、厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の取りまとめた報告書に沿って医薬品産業の抱える課題についての認識を示した。

新薬をめぐる課題の一つとして、オーファンや小児を中心としたドラッグ・ラグ、ロスの懸念の指摘について水谷課長は、「いま我々が見ている状況は、実は5年から10年前に製薬企業によってなされた意思決定で、その結果をいま我々は見ている」と指摘。「我々はこの問題に対し、早く手を打っていかないと、この先々、さらにこうした状況を悪化させてしまう恐れがあると思っている。そういう意味でも、この問題を深刻に受け止めて対応していかないといけないと思っている」と述べた。治験の環境整備の課題認識を指摘し、国際共同第3相臨床試験実施前に日本人を対象とし第1相臨床試験の追加実施を求められることや、オーファンの指定件数が少ないことなどを指摘した。

また、革新的新薬の開発をめぐり、日本の創薬力低下が指摘されていることにも問題意識を示した。世界的にみて開発の担い手がベンチャーやアカデミアに移る中で、日本ではアカデミアやベンチャー創出の医薬品が少ないことも指摘されている。水谷課長は、世界的な医薬品開発の動向として、研究開発の複雑性・難易度が向上し、専門性が増す中で、「特定領域に特化をした技術を有する企業、アカデミアの存在感が増しているのが現状」と指摘した。一方で、製薬企業については、「これまで開発の中心を担っており、当然薬事、薬価、知的財産等の制度に精通しているし、製造、それから流通を含めた品質管理体制をすでに持っている」として、「アカデミア、ベンチャーと製薬企業との連携これが革新的新薬の必須条件ではないか。エコシステムを構築し、協業によるイノベーション創出を促進していく。これが今後のあの創薬の方向性ではないかということがうたわれている」として、創薬エコシステム構築の必要性を強調した。

◎「有識者検討会の方向性に沿って、一歩、一歩、歩みを進めていくということが重要」

有識者検討会の報告書では、ドラッグ・ラグ/ロスの解消に向けて、医療上特に必要な革新的医薬品の迅速導入に向けた新たなインセンティブの検討、創薬力強化に向けては選定療養の活用や長期収載品の現行制度の見直しなどが対策の方向性としてあげられている。

水谷課長は、有識者検討会の報告書は、「非常に課題を整理した上で、大きな方向性を言ってる部分もある」と説明。中医協での24年度改定への議論に向けて、「全てができるかということについては、業界の皆様もこれまでのヒアリングを見ても、色々な課題があるということはご理解、認識をされていると思う」とすべてを1回の改定で行うことは難しいとの認識を表明。そのうえで、「ただ、こうした方向性に沿って、一歩、一歩、歩みを進めていくということが重要だと思う。今回の改定で、有識者検討会の報告書に沿った形で、薬価の仕組みの中でも大きな方向に向けて一歩を踏み出して、そうしたことになることを目指して取り組んでいきたい」と話した。

◎後発品の安定供給へ 検討会の論点に少量多品目の構造解消と生産効率化も

後発品を中心とした安定供給についても言及した。供給不安が長引く背景に、ジェネリック特有の少量多品目のビジネスモデルがあると指摘した。後発品業界の現状について、製造能力や採算性の観点で、「ギリギリの状況でやっていただいている」としたうえで、少量多品目が「加速」される構造を解説した。

収載時の薬価は製造原価に比べて比較的高く、「ある意味、ここが一番儲かる」と説明。一方で、共同開発により参入障壁が低いことから、多くの品目が上市され、過当競争が起きる。さらに市場の中で価格競争が起きる。総価取引の調整材料とされることもあって、加速度的に価格が下落。収益下減少する中で、早期に撤退する企業もある一方で、安定供給を継続する企業もある。こうした企業にとって新たな収益源が特許切れ直後の品目であることから、スパイラル的に少量多品目構造へと陥るとした。この結果として、「非効率な生産体制のなか、管理体制も不十分であったことが現在の品質安定供給の問題の要因の一つではないか」と指摘した。

今年7月には、「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」を立ち上げ、議論を開始した。水谷課長は、「論点は、後発医薬品産業のあるべき姿の明確化、安定供給等にかかわる企業情報の可視化、どういう取り組みをしているところが安定供給に取り組んでいる企業なのか、そうしたことを項目として明確にし、これを可視化していくということ。そして、少量多品目構造の解消のためにどうすればいいか、あるいは生産効率を向上するためにどうするか。関連する論点として、オーソライズド・ジェネリック(AG)や、サプライチェーン強靱化、品質管理、こうしたことをあげながら議論を進めている」と説明。12月頃の取りまとめを目指すが、薬価制度に絡む点については、「少し早めに、一定の形にして中医協にお願いしてご議論いただくことも必要ではないかと思っており、そうしたことも視野に入れて議論を進めていきたい」と述べた。

◎常に全体の方向性を意識しながら議論 「検討を有機的に連携させることが使命」

水谷課長は、有識者検討会で指摘された課題について各検討会で議論が進む中で、「私どもが実感したのは、それぞれの分野と密接不可分に関連してるところがあること。有識者会議の報告書で全体像を整理し、それを1個1個検討していく中で、1個1個の検討がいわゆるサイロに落ちて独立してしまうのではなくて、常に全体の方向感を意識しながら議論をしていく。そうしたことを私ども事務局として心がけながら、全体としてその大きな有識者検討会が示した方向性に沿って取り組みが進められていくようにする。そうしたことが重要ではないかと思っている」と表明。課題によって解決までにスピード感などに違いがあるとしたうえで、「それぞれの検討が有機的に連携するように意識しながらやっていくことが私どもに課せられた使命だと思っている」と述べた。
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