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【中医協薬価専門部会 8月23日 議事要旨 医薬品流通、診療報酬改定がない年の薬価改定、高額医薬品】

公開日時 2023/08/31 04:51
中医協薬価専門部会は8月30日、その他の課題の検討事項から、①医薬品流通に関する課題、②診療報酬改定がない年の薬価改定、③高額医薬品(感染症治療薬)に対する対応-について議論した。本誌は質疑の内容を議事要旨として公開する。

安川部会長:それでは質疑(事務局説明略)を行います。長島委員お願いします。

長島委員:ありがとうございます。資料40ページの3つの論点についてコメントします。1つ目の医薬品流通の課題については、論点に提案されている通りと考えます。医薬品流通に関しては、今後の医薬品産業構造のあり方にも関わる話ですので、論点にも記載されている通り、まずは関係会議において先に議論していただく必要があると考えます。

なお、「調整幅」については、過去に議論を重ね、R幅10%を超える状態から、現在の形になった経緯があり、また前回改定に向けた議論において、資料10ページで示されたような中医協の意見が出ております。したがって、関係会議においても、過去の議論を十分に参考にしていただくのが良いと思います。

また、資料20ページの「販売先別の乖離率の比較」 に記した流改懇の意見にもあるように、薬価差の実態をもう少し細かく見ていただくことを要望します。

続いて2つ目の論点「診療報酬改定がない年の薬価改定」については、これまでは平均乖離率を大きく下回る乖離率が基準となってしまい、品目が選定された結果、市場の7割もの品目が対象となり、結果として安定供給に支障を来しているなどの指摘がなされています。
薬価改定は、診療報酬改定と同時期に行うことが基本です。したがって、診療報酬改定がない年の薬価改定は、過去2回の中間年改定が医薬品の安定供給や、ドラッグ・ラグ/ロスなどに与えた影響なども検証しつつ、検討を重ねるべきであると思います。

3つ目の論点「高額医薬品に対する対応」は、医療保険財政の持続性という観点を重視して、中医協で考えてきたものです。今後もこのように、従前の例では難しいような巨額の製品が出てきた、あるいは出てくる際には、中医協で議論してから、薬価算定組織で価格付けの議論をしていただくことが必要と考えます。論点に記載されている通り、個別品目ゾコーバ錠の本承認や採算性等の状況も踏まえて、今後議論するということに賛成であり、本日の時点ではそれ以上のコメントはありません。

最後に事務局にお願いです。新医薬品を薬事承認から原則60日以内に保険収載するという日本の制度は、患者さんに新医薬品が迅速に届くという点で、世界に誇れるものであり、製薬企業にとっても最も高い予見性を担保しているものと考えられます。そこで、日本や諸外国における薬事承認から保険収載と同等の状態になるまでの平均期間と保険収載される割合についてデータがあれば、次回以降にご提示いただきたいと思います。私からは以上です。

安川部会長:はい。いくつかご提案をいただきました。はい。他にいかがでしょうか? 森委員お願いいたします。

森委員:ありがとうございます。論点に沿っていくつかコメントさせていただきます。まず論点1つ目の「調整幅」のあり方についてですが、まず調整幅は薬剤流通の安定のために確保されたものと理解をしています。その上で、医薬品は“民民”の取引で、薬価を上限として交渉されるため、薬価差は必然的に発生しますが、その購入価格や流通管理コストにはばらつきがあるため、薬価改定の影響を緩和する仕組みとしても、調整幅は重要な役割を担っています。

調整幅は、幅広い範囲で様々な役割を持ち、流通安定のために設定されたものですが、調整幅2%に設定された当初と現在を比べても、高額医薬品や厳格な管理が必要な医薬品も出てきており、流通コスト、管理コストが増加している状況です。さらに、毎年の薬価改定や供給問題などの影響もあり、安定的な流通機能を保つ機能として、調整幅はますます重要なものとなっています。現状の流通体系は調整幅2%という前提で成り立っているため、見直しにおいては、流通の現場にどのような影響があるのか、正確な試算ができない以上、流通体系の崩壊を招く可能性があるため、現時点では見直すべきではないと考えます。サプライチェーンの状況などをしっかりと把握しつつ、調整幅のみではなく、流通全体の課題を含め、極めて慎重に議論が必要と考えます。

また、流通の関連で、乖離率のデータが19枚目の資料「販売先別の乖離率の比較 ①」で示されています。これは長島委員、薬剤管理官からもありましたけども、医療機関や薬局の区分ごとのデータでは、開設者や施設で乖離率に違いがあることがわからないので、これだけで薬局では過度な薬価差が生じていると結論づけることはできないと思います。担当課においては、医療機関と薬局の乖離率の状況について、より詳細がわかるデータの準備をお願いします。

次に、論点2つ目の「診療報酬改定がない年の薬価改定」、いわゆる中間年改定についてですが、今年の4月に令和3年度に続き2回目の中間年改定が行われ、6年連続での薬価改定が行われました。中間年改定の実施により加速度的に薬価が下落し、企業や卸、薬局、医療機関の経営に大きなダメージを与えています。特に薬代が保険収入の75%を占める薬局においては、資産価値の減少や、売上の減少にも繋がり、薬局経営に深刻な影響を受けているところです。

このような薬局経営など関係者への影響や、昨今の賃金や物価・賃金高騰と医薬品の供給問題などの影響、サプライチェーンの経営実態などを踏まえて、中間年改定の対象範囲や改定の実施の是非を含めて、慎重な検討をすべきと考えます。

このまま同じように続けば、医薬品のライフサイクルを短命にし、新たな医薬品創出の機会を損ない、薬局や医療機関、企業や卸の経緯、甚大な影響を及ぼし、結果として国民が必要な医薬品にアクセスできなくなってしまいます。

また、現在は令和6年度の薬価改定の議論をかなり幅広く行っている段階であり、本年度は次期薬価改定の議論を最優先で行うべきであり、その次の中間年の議論まで行うことは難しいのではないかと思います。

最後に論点3つ目の「高額医薬品への対応」についてですが、パンデミックを来す感染症のような市場規模の推計が困難な疾患の治療薬や、緊急承認の医薬品などの課題については秋以降の新薬の議論の際にあわせて検討するのが良いと考えております。事務局におかれましては必要な資料の準備をお願いできればと思います。私からは以上です。

安川部会長:はい、ありがとうございました。他にご意見いかがでしょうか?はい。では松本委員お願いいたします。

松本委員:はい、ありがとうございます。それでは論点に沿ってコメントを差し上げたいと思います。

まず医薬品の流通の課題については、関係会議での議論や流通コストの実態に関するデータ等を踏まえて検討を進めるということについて異論はございません。ただ、その上で従前から申し上げておりますけども、長い間、調整幅が一律2%に固定されていることについてはずっと疑問を持っております。

流通コストの状況等を調査するとなっておりますけども、調整幅に関する議論を前に進めるためにも、こうした調査結果がいつ中医協に示されるのか。今後の具体的なスケジュールをぜひご提案いただきたいというふうに思います。

また、市場実勢価格を反映するという観点で、やはり乖離率だけではなく、乖離額も考慮する必要があるということは改めて主張いたします。

資料14ページをご覧いただきたい。ここに一次売差マイナスの説明と補填についての説明がございますけども、これは個人的な意見にも繋がりますが、公的な価格である薬価の議論をする際に、こうした割戻しとかアローアンスという非常にある意味特殊な契約といったものが、こういった形に出てくることに関しては、今回非常に大きな違和感を感じたというのが素直な印象でございます。

特にアローアンスの金額が卸の利益に直結するってことは効果もよくわかるわけで、そうしますと、業界の方から「非常に厳しいんだ、厳しいんだ」というお話をうかがうんですけども、それはこういったものの要素もあるということになってしまいますので、こうしたものについても有識者検討会で挙げられておりますので、十分議論していただきたいということは、別途お願いをしておきたいと思います。

続きまして診療報酬改定が無い年の薬価改定についてコメントいたします。まず基本認識として資料27ページ、28ページにもありますけども、診療報酬改定のない年の薬価改定は、国民負担軽減が最大の目的であるということは改めて認識をいただきたいというふうに思います。そうした目的に照らし合わせれば、今後議論がなされると思いますけども、新薬創出等加算について少しお話をしたいと思います。

累積額控除が2年ごとになりますと、例えば特許が切れて後発品が収載される時期によっては、製品ごとに累積額控除のタイミングに最大1年以上のタイムラグが生じます。薬価改定は現在毎年行われていますので、公平性の観点からも最低限、累積額控除は毎年行うべきではないかと考えます。

仮に診療報酬改定のない年の算定ルールは、実勢価改定と連動するものを原則とする場合であっても、新薬創出等加算が実勢価改定を一定程度猶予するものであることから、実勢価改定年度に関連するとして累積額控除を適用すべきであるというふうに思っております。

さらに、そもそもの趣旨が特許期間中の措置であることを踏まえれば、後発品の新規収載時の薬価が、新薬の累積額控除後の価格を基に決まることを踏まえれば、現在年2回ある後発品の薬価収載を同時に累積額控除するということを提案いたしますので、今後の議論で、是非お話をしたいというふうに思っております。

この他に令和5年度改定では該当品目がございませんでしたが、既収載品の外国平均価格調整がルールとして追加されたことを踏まえれば、健保連としては他の算定ルールについても、原則として全て適用することを検討すべきというふうに考えております。

最後に論点の3つ目でございます。高額医薬品、感染症治療薬への対応については本承認取得に向けた申請がなされたということでございますので、特例的な対応であることを踏まえれば、実際の市場規模や有効性についてはデータを示していただいた上で丁寧に検討すべきだろうということが必要だと思います。私からは以上になります。

安川部会長:はい、ありがとうございます。安藤委員、よろしくお願いいたします。

安藤委員:はい、ありがとうございます。私からも資料40ページの論点につきまして意見を述べさせていただきます。前回の薬価専門部会でも指摘しました通り、近年の不安定供給問題であるとか、ドラッグラグ/ロス問題を踏まえれば、調整幅の問題について議論する際に、特に後発医薬品業界の産業構造など、根本的な課題へのアプローチ方策をどのようにするのかという点を整理した上で、議論を進める必要があると考えております。

関係会議での検討状況であるとか、関連データを踏まえるとの方針につきましては賛成でございます。

また、論点2点目の「診療報酬改定がない年の薬価改定」につきましては、そうした根本的な議論を行う中で課題や改善策が見えてくるというふうに考えておりますので、この中医協におきまして議論をすべきと考えております。

次に3つめの論点の高額医薬品つきましても、レカネマブの議論を控える中、実際に具体的なデータやゾコーバ錠の算定状況等を踏まえながら議論を行うべきというふうに考えるため、この秋以降の新薬の課題の際に議論することで異論はございません。以上です。

安川部会長:ありがとうございました。他にご意見はございますでしょうか?よろしいでしょうか?はい、お願いいたします。

医薬産業振興・医療情報企画課長:先ほど松本委員の方からこのスケジュールの関係でお尋ねいただきましたのでちょっとその関係ご説明をさせていただきます。まず松本委員、安藤委員からご指摘ございました通り、私ども、6月に「医薬品の迅速安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の報告書をまとめてございます。本日資料としてお示しをしました流通の問題だけでなく、安定供給の確保、創薬力の強化、ドラッグ・ラグ/ロスの解消、こうした様々な論点について議論を整理し、今度はそれぞれの個別の検討の場、後発医薬品産業のあるべき姿ですとか、薬事規制ですとか、そして今日の論点になっている流通につきましては、流改懇の方でご議論いただいている状況でございます。

それぞれのところで個別にご検討いただいてございますが、一方で今日のご議論にもあった通り、それぞれが有機的に連関している問題でございますので、私どもとして、そうしたものを連動して検討を進めていきたいというふうに考えてございます。

流改懇におきまして、この有識者検討会の報告書のご指摘を受けまして、配送コスト等の地域差が市場実勢価に与える影響、こうしたものについてデータに基づいて議論すべきということで、6月26日から議論を開始してございます。検討に必要なデータ、一部のデータは今年度の厚労科研で検討しているとこでございますが、その他のデータも含めて、まさに議論の一端を今日ご紹介させていただいた通り、どういうデータが必要か、どういうふうにすることができるのか、そうしたことも含めて議論を交わしたところでございますので、一定の時間がかかることにはご了解をいただきたいというふうに思ってございます。

いずれにいたしましても流改懇で議論するものの中には、流通改善ガイドラインの改定という形をとるもの、あるいはそこでの議論を踏まえてさらに中医協で議論いただくものなど、様々なものがあろうかと思います。

私どもとして今具体的なスケジュールを示しできる段階ではございませんが、引き続き、そうした整理をしながら、検討を進め、また中医協にもご報告させていただきたいというふうに考えてございます。以上です。

安川部会長:あと事務局よろしいですか。いま事務局から補足、意見もございましたがよろしいでしょうか? 追加のご質問ご意見等ございませんか。はい他にご質問等ないようでしたら、本件に係る質疑はこのあたりといたします。

今後いろいろご提案いただきましたように、事務局において、頂いた意見を踏まえ、ご対応いただきますようにお願いをいたします。本日の議題は以上です。次回の日程につきましては、追って事務局より連絡をいたしますのでよろしくお願いいたします。それでは本日の薬価専門部会はこれにて閉会とします。ありがとうございました。
 
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