PwCが公表した「生成ＡＩに関する実態調査2023」によると、製薬企業のＭＲを含む医療系専門職の58％が将来的に生成ＡＩに業務代替される可能性があると回答していることが分かった。同様に研究開発・技術職、研究職（大学、研究機関等）の63％が業務代替の可能性を指摘した。一方で生成ＡＩをチャンスと捉える職種として、コンサルタントやＩＴ関連業務の回答が50％前後と高率であった。逆に、ＭＲを含む医療系専門職の回答は14％と低率で、「脅威である」との回答が10％あった。医療系専門職のように個人の技量や経験、ノウハウを要する職種にとって、生成ＡＩを「チャンス」と捉え切れない実態も浮かび上がった。

調査は、23年3月31日～4月3日にかけて国内の企業・組織に所属する従業員を対象にWebで行った。回答総数は1081人。うち、ヘルスケア/病院/医薬/ライフサイエンス/医療機器は49。回答者属性のうち、医師、看護師、薬剤師、ＭＲ、介護福祉士など医療系専門職の回答は26だった。

◎生成ＡＩの認知度　ChatGPTが突出、次いでBing（Microsoft）、GPT-4

生成ＡＩの認知度については、ChatGPTの知名度が突出して高く、次いでBing（Microsoft）、GPT-4、ＡＩチャットくんと続く。生成ＡＩの自社活用については、全体の34％で「活用に関心あり」と回答。自身の業務への活用については、全体の31％が「利用したい」と回答した。生成ＡＩの業務代替については、全体の39％が「歓迎」と回答。「不安」「やや不安」と回答した26％を上回った。一方で、自身の業務の6割以上が代替されるとの回答は全体の10％だった。

◎ヘルスケア・医薬等業界　27％が業務の半分が置き換わると予測

生成ＡＩによる業務代替を属性別にみると、ヘルスケア/病院/医薬/ライフサイエンス/医療機器では、「大部分が置き換わる（60～80％）」は６％、「半分置き換わる（50％程度）」が27％、「多少置き換わる（20～40％）」が24％、「置き換わらない」は16％だった。この傾向は、自動車産業やサービス・接客業のトレンドと似ている。逆に、テクノロジーや通信業界は比較的高率で業務代替が進むとみており、属性間での違いを浮かび上がらせている。

◎医療系専門職　「自社活用に関心あり」が10％、「他社事例に関心あり」が14％

職種別にみると、医師、看護師、薬剤師、ＭＲ、介護福祉士など医療系専門職では、「自社活用に関心あり」との回答が10％、「他社事例に関心あり」が14％で、全職種平均をともに下回った。ただ、生成ＡＩの業務代替の可能性については、「完全に置き換わる（100％）」が２％、「大部分が置き換わる（60～80％）が７％、「半分置き換わる（50％程度）」が21％、「多少置き換わる（20～40％）」が28％となり、医療系専門職の58％が生成ＡＩに業務代替される可能性を指摘していることが分かった。

◎スタンス別プロファイル　医療系専門職「知らないが、なんとなく不安」

生成ＡＩに対するスタンス別プロファイルをみると、医療系専門職は営業職と同じグルーピングで、「知らないが、なんとなく不安」と感じている。業務代替については、「歓迎」の43％に対し、「不安」が56％で、好機より脅威が上回っていた。逆に、「生成ＡＩを是非とも使ってみたい」という職種は、業種では通信・テクノロジー、職種では経営企画、ＳＥとなっていた。なお、この業種では生成ＡＩを「チャンス」と捉える回答が88％、業務代替を「歓迎」するとの回答は84％となった。