ノボ ノルディスク ファーマのキャスパー ブッカ マイルヴァン代表取締役社長は４月24日、年次会見に臨み、２月に発売した肥満症治療薬・ウゴービについて、適正使用の推進が最優先事項との認識を重ねて示した。その上で、「現時点で最適使用ガイドラインに基づく使用により、当局の期待に応えて適正使用がしっかりなされている」と述べた。また、GLP-1受容体作動薬の需要増などを背景にグローバルで製造拠点の整備を進めていると説明。2023年以降の数年間で約1.5兆円規模の「過去にない規模の投資」を進めているとした。

ウゴービは肥満症領域で約30年ぶりの新薬。ダイエット目的などの適応外使用が行われないよう、最適使用推進ガイドラインでは本剤の患者選択に際し、適切な食事療法・運動療法に係る治療計画を作成した上で「本剤を投与する施設において当該計画に基づく治療を６カ月以上実施しても、十分な効果が得られない患者」が投与対象であり、この食事療法・運動療法についての「必要な内容を管理記録等に記録すること」も条件のひとつと記載している。

マイルヴァン社長は、肥満症治療について、「当社としては食事療法と運動療法に加えての（ウゴービによる）薬物療法と考えており、包括的なケアを提供していく」と強調した。同社肥満症事業本部の清水真理子本部長は、この“６カ月の記録”を引き合いに、「ウゴービに関係なく（食事療法・運動療法の）６カ月の記録がある患者さんもあれば、記録が存在しない場合はこの記録を付け始めるところからの症例もある。（ウゴービの）処方がすぐに始められる患者さんと、そうではない患者さんがいるのが現状」と述べ、医療現場で同ガイドラインに基づく適正使用がなされていると補足説明した。

◎GLP-1市場ではシェア８割　「糖尿病市場全体のシェア拡大に貢献」

日本法人の23年の売上は前年比8.5％増の1298億円だった。２型糖尿病を効能・効果とするGLP-1受容体作動薬の経口薬・リベルサス錠と、注射剤・オゼンピック皮下注が業績をけん引。ビクトーザ皮下注を含むノボのGLP-1受容体作動薬全体で、同作動薬市場の80％近くのシェア（金額ベース）を占めた。マイルヴァン社長は、「GLP-1市場のみならず、糖尿病市場全体のシェア拡大に貢献した」と胸を張った。同社の糖尿病市場全体におけるシェア（同）は22年の13.9％から23年に16.7％に拡大した。

◎製造拠点整備を加速　投資額は年々倍増　24年も8000億円

グローバルではデンマークを中心にフランスや中国、アイルランドで製造拠点の整備を進めている。投資額は21年の1200億円から22年に2500億円、23年に5000億円と年々倍増し、24年は8000億円を投じる方針。23年にGLP-1やインスリン製剤の供給制限に陥ったことを踏まえ、マイルヴァン社長は「供給制限がなければより多くの患者に製剤を届けることができた。アンメットメディカルニーズや需要に対応できるだけの体制を整え、今度数年でより多くの患者に我々の製剤を届けていきたい」と語った。

◎ポートフォリオ　糖尿病や肥満症に加え新領域にも注力

ポートフォリオについては、これまで注力してきた糖尿病、肥満症、希少内分泌疾患、希少血液疾患の４領域に加え、MASH（旧名称：NASH）やアルツハイマー病、細胞治療、心血管疾患/慢性腎臓病などの新しい領域でも開発を進めていくとした。

◎サステナビリティへの取り組み　CO2排出量削減「加速する必要がある」

この日の会見では同社のサステナビリティへの取り組みも紹介。環境への配慮では、プラスチック排出量削減に向けて、使用済みペン型注入器の回収プロジェクト「ReMed」を3月から東京都と神奈川県で試験運用を始めた。バリューチェーン全体でのCO2排出量削減では、国内で営業車からのCO2排出量を23年には19年比で22％削減した。同社は「2045年までにCO2排出量を実質ゼロ」と掲げるが、マイルヴァン社長は「グローバル企業全体として取り組みを加速する必要がある。組織全体で努力を継続していきたい」との認識を示した。