製薬各社のMR1人当たり生産性 自社MRのダウンサイズで生産性維持の傾向明らかに ミクス編集部調査
公開日時 2023/07/03 04:52
ミクス編集部が製薬各社の2023年4月時点のMR1人当たり生産性を調べたところ、自社MR数のダウンサイズで生産性を維持する傾向が読み取れた。MRを前年比100人減らした中外製薬の生産性はロナプリーブの政府買上げ分を除き3億7583万円となり、前年の3億9900万円を若干下回った。MR数を181人削減した第一三共の生産性は2億2700万円で、前年の生産性2億2300万円を若干上回った。MR数を101人減らした大塚ホールディングスは前年度の2億円に対し、2億400万円と前年水準を維持していることが分かった。
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国内製薬大手10社の主力製品別売上高の推移をみた。各社ごと事情が異なるものの、主力品の伸びに力強さを感じるのは、政府主導の新型コロナ関連の治療薬・ワクチンを除くと、小野薬品のオプジーボくらい。逆に大塚ホールディングスのサムスカやエーザイのヒュミラなど、特許切れによる売上減が顕著に国内業績に影響している姿を見ることもできる。他にも、他社売却した主力品の売却益をワンショットで売上計上している企業が散見されるなど、低成長期に入った国内医療用医薬品市場の課題を垣間見ることもできる。
◎生産性の過去実績をベースに各社とも“守り”の色彩が強まる
MR1人当たり生産性も同様で、ここ数年の製薬各社のMR数の減少トレンドを如実に裏付けており、総じて、各社が定めるMR1人当たり生産性の過去実績をベースに“守り”の色彩が強まっている。よって、国内市場で新たに上市する革新的新薬の市場サイズ(売上予測)と特許切れ製品の時期と売り上げ減少額それぞれを見据えて、MRの適正数を計算し、過去のMR生産性実績の範囲内で雇用できるMR数まで絞り込む傾向が今後も続くことを予感させている。ただ一方で、ここ数年の傾向として、国内大手を中心に国内売上比率を下げながら米欧市場でのプレゼンスを強める動きも見えている。本誌集計(ミクス7月号掲載)によると武田薬品の22年度の日本国内売上比率は12.7%、アステラス製薬は17.3%と2割を切っていた。
◎MR1人当たり生産性 中外製薬が業界トップクラスを維持
ミクス編集部は製薬各社が公表した直近の国内医療用医薬品売上高と、MR数調査結果(ミクス6月号掲載)を用いてMR一人当たり生産性を試算した。トップの中外製薬は5億4600万円となった。ただ、コロナ中和抗体薬ロナプリーブの政府買上げ分を除くと、生産性は3億7583万円で前年の3億9900万円を若干下回る。なお、同社は本誌既報の通り、4月実施の早期退職優遇措置とそれ以外の自然減でMR数が23年中に1200人から1050人程度に減少する。23年業績予測に照らしてMR1人当たり生産性を試算すると4億3800万円(ロナプリーブ政府納入分を除く)となり、この水準で推移するとMR一人当たり生産性は製薬業界でトップクラスを維持することになる。
◎塩野義製薬 ゾコーバの政府買上げ除く生産性は1億900万円で前年水準維持
第2位の参天製薬は4億700万円で、MR数を維持しながら前年の3億9900万円を上回った。MR数の増減ゼロのアステラス製薬も前年の2億2400万円に対し、今回は2億1900万円と前年水準を維持している。塩野義製薬はMRを120人減少させ、MR一人当たり生産性を2億4600万円とした。前年に比べて生産性が約1億円向上したが、同社も新型コロナ感染者への抗ウイルス薬ゾコーバの政府買上げ分があり、これを除くと1億900万円で、実質的に前年水準を維持していることが分かった。
◎MR数減少トレンド 23年度末まで継続 内資・外資あわせて4万人台前半まで減少も
ミクス編集部は生産性の分析を元に、23年度以降のトレンドを予測した。その結果、大型主力品の特許切れを数年以内に迎える企業がまだ複数社あり、生産性維持のためのMRダウンサイジングは引き続き継続されると分析した。製薬各社のMR総数は2013年の6万5752人をピークに減少傾向を続けており、ミクス編集部のMR数調査(ミクス6月号掲載)の結果から、すでに4万人台に突入したと予測している。ただ、今回の生産性と製薬各社の業績トレンドを見る限り、この傾向は23年中も継続する見通しで、23年度末時点のMR総数は内資・外資あわせて4万人台前半まで減少する可能性が現実味を帯びてきた。