ミクス編集部が行った「ＭＲ数アンケート調査2025」で、製薬各社に所属するＭＲ総数が直近１年間で1400人以上減ったことがわかった。調査協力した49社のＭＲ総数は前年比6.0％減の2万2916人。今回の減少率を踏まえて製薬業界全体のＭＲ総数を推計すると、４万5000人台を割り込むことが分かった。減少の主要因は、早期退職制度による大幅減のほか、自然減に伴う組織のスリム化、戦略的な配置転換や営業部門を含むコマーシャル部門の組織再編がある。24年度に希望退職制度を実施した製薬企業のうち、ＭＲ数を非開示と回答する企業も複数あり、ダウンサイジングに歯止めがかからない実態が浮かび上がっている。

文末の「関連ファイル」に25年４月の製薬各社のＭＲ数の資料を掲載しました（会員のみダウンロードできます。無料トライアルはこちら）。

ミクス編集部は毎年４月１日時点のＭＲ数（原則、新卒入社ＭＲを含む）を調査・集計している。25年調査に回答した59社のうち、ＭＲ数を開示した企業は49社。前年調査と比較すると、25年のＭＲ数は計２万2916人で前年比6.0％減、人数で1468 人減少した。18年以降８年連続で年1000人以上の大幅減が続いた。

◎回答49社中33社で減少　早期退職制度のほか自然減や配置転換も要因に

ＭＲ数を開示した49社の内訳では、前年比で減少したのは33社の合計1545人減。増加は7社の合計77人にとどまった。増減なしは９社だった。100人以上減った企業は、住友ファーマ（480人減）▽第一三共（100人減）▽MSD（100人減）―の３社。50～99人減は、日本新薬（77人減）▽中外製薬（70人減）▽大塚製薬（64人減）▽ツムラ（61人減）▽協和キリン（60人減）▽興和（54人減）▽帝人ファーマ（50人減）―の7社だった。

早期退職制度の実施以外の主な減少の理由として、大量採用時代の入社組が定年退職を迎える自然減も一つの要因になっている。企業によっては定年退職による減員分を補充せずに、デジタルやＡＩの活用にリソースを振り分けることで、生産性の向上や業務効率化につなげて組織のスリム化を図っている側面もある。また、ＭＲの経験を生かして、デジタルやグローバル、新規事業などの別の注力部門に戦略的な配置転換を行っている企業もあり、結果的としてＭＲ自体の減少につながっているようだ。

◎住友ファーマ　早期退職制度で５割超の減少

最も減少数が多かった住友ファーマは、前年比55.2％減のＭＲ数390人体制となった。 “ラツーダクリフ”からの経営再建に向けて24年秋に行った早期退職制度の実施が主な要因となった。24年度には武田薬品や田辺三菱製薬も希望退職制度を実施したが、いずれもＭＲ数を非開示としており、実際のＭＲの減少幅はさらに大きくなる可能性がある。

◎第一三共　100人減も1600人体制で業界最多

最もＭＲが多かったのは第一三共の1600人。24年調査に比べて100人減員となったが「他部署への移動や、定年退職等を含めた減少」が要因とした。一方で、がん領域の担当ＭＲは300人体制を継続した。第一三共のほか、MSD（1400人）▽日本イーライリリー（1400人）▽グラクソ・スミスクライン（1100人）▽大塚製薬（1095人）▽中外製薬（1000人）―の6社が1000人以上のMR体制を維持した。

◎採用市場は増加に転じる　新卒は前年比62人増　中途は113人の大幅増

一方の採用市場は新卒・中途ともに増加に転じ、持続可能な組織づくりや基幹社員の育成を見据えた人材戦略の実態が見えてきた。

2025年4月入社の新卒ＭＲ採用数は、24年調査と比較可能な45社で62人増の492人。企業別の採用数では、エーザイの56人がトップで、24年から26人増やした。採用数が50人超となったのは21年以来。同社は増加の理由について「人財ポートフォリオの戦略上の理由」と回答した。続くキッセイ薬品と帝人ファーマはともに32人を新卒採用。両社ともに18年以降の採用数では最多となった。

中途採用のＭＲ数は回答した36社で計222人。このうち24年調査と比較可能な30社では、113人増の187人と大幅に増加した。中途採用数が最も多かったのは富士製薬の32人。今後も積極姿勢で、25年度の中途採用予定数は45人（うちコントラクトＭＲ15人含む）としている。ニプロは今後の事業展開を見据えて26人を採用した。特にバイオシミラー事業の強化を見据えて経験者の採用を増やしたという。25年度の中途採用計画では、富士製薬のほか、ツムラ▽科研製薬▽扶桑薬品▽あすか製薬▽日本化薬▽大塚製薬工場―など10社が増員の意向を示している。