武田薬品のDXをIPAが紹介 MRにAI活用「NBAエンジン」導入 返答率1.5倍に増加 売上水準に差を確認
公開日時 2026/07/07 04:52
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は7月6日、武田薬品が取り組むDXの事例詳細を「デジタル事例データベース」で公開した。同社は、MRを含む情報提供活動にAIを活用した「NBA(Next Best Action)エンジン」を導入している。事例詳細ではAIの活用成果として、NBAの提案に対するMRの返答率が前年度の64.6%から今年度は95%へと約1.5倍に増加したと報告。同社は、「MRとNBAエンジンの双方向的なフィードバックループが機能し、提案精度の継続的な向上につながっている」と分析した。さらに先行導入した結果から、NBAを活用した事業所の売上水準が非活用の事業所を上回ることを確認できたとして、データに基づく意思決定が実際のビジネス成果に寄与していると報告した。
武田薬品は、データ・デジタル・テクノロジー(DD&T)を成長の基盤としてDXの推進に取り組んでいる。特に、AIを含む先端技術をグローバルに展開するバリューチェーン全体の活用を目指し、生産性向上とデータに基づく高精度な意思決定の実現に挑戦しているところだ。加えて。倫理観と企業価値観を遵守し、データとデジタルの力で価値創出に注力している。
◎情報活動・マーケティングを抜本的に見直した「Go-to-Market(GtM)プロジェクト」
今回IPAが公表した同社DXの事例詳細は、医療関係者のニーズの多様化と製品ポートフォリオ変更を契機に、情報活動・マーケティングのあり方を抜本的に見直した「Go-to-Market(GtM)プロジェクト」を紹介するもの。GtMの独自性は、「医療関係者」、「従業員」、「テクノロジー」という三方向から複合的に課題を捉え、全体を設計した点にあり、中核ツールとしてAIを活用した「NBA(Next Best Action)エンジン」を導入したことを報告している。
◎医療関係者ごと製品納入データと行動データを統合分析 「次にとるべき行動」をMRに提示
具体的な取り組みでは、医療関係者ごとに製品の納入データと行動データを統合分析し、関心度や関係性に基づく「次にとるべき最適な行動」をMRに提示する。MRは提示されたレコメンドに対し、判断や理由を返答することで、さらにNBAエンジンの継続的な最適化が図られる仕組みとなっている。あわせて、医療関係者向けデジタルポータル、MR向け活動ダッシュボード、マスタデータ整備も同時並行で進め、データとデジタルを活用した新たなビジネスモデルを構築している。
AIを活用したNBAの活用成果については、「AIによる活動最適化がMRに定着している」と強調。NBAの提案に対するMRの返答率が前年比1.5倍に増加するなど、MRとNBAエンジンの双方向的なフィードバックループが機能していると評価した。またNBA活用群と非活用群でも売上水準に差を確認することができたなど、データに基づく意思決定が実際のビジネス成果に寄与しているとした。
このほか同社は在庫管理にもAIを活用している。AI需要予測では、医薬品卸・社内営業情報に加え、外部二次データや市場イベントを統合分析し、従来のヒトによる予測と同等の精度を実現している。要因分解や影響度を可視化し、最終判断を人が担うことでブラックボックス化を回避。在庫最適化・廃棄削減・キャッシュフロー改善を推進しているとした。
◎今後は「バリューチェーン全体のDXをさらに加速」
今後の展望について同社は、「研究開発から製造・供給・販売・患者さん支援まで、バリューチェーン全体のDXをさらに加速する」と強調。全従業員に対し、スキルとマインドセットの両軸からなる「デジタル・デクステリティ」を継続展開するとともに、データ・デジタル・テクノロジー部門、イノベーション・ケイパビリティ・センター(ICC)を核とした専門人材の育成・確保を推進する。これにより、AI・データ・テクノロジー領域における内製能力を体系的に強化し、価値創出のスピードと質を更に高度化したい考えだ。