キッセイ薬品は11月6日、23年度の通期業績予想を修正し、売上高予想を30億円引き上げ775億円（前期比14.8％増）とすると発表した。最近発売した希少疾病領域の2製品が想定以上のスピードで市場浸透しているため。具体的には、顕微鏡的多発血管炎・多発血管炎性肉芽腫症治療薬タブネオスの通期売上予想を18億円増額し50億円に、慢性特発性血小板減少性紫斑病治療薬タバリスは3億円増額し7億円に修正した。また、23年9月にに承認を取得し、近く薬価収載が見込まれる透析患者におけるそう痒症治療薬コルスバについては今期5億円の寄与を見込んだ。

◎23年度上期　売上高12.5％増の369億7800万円、営業利益が20億1500万円

同日発表した23年度上期決算は、売上高が12.5％増の369億7800万円、営業利益が20億1500万円（6億2500万円の営業損失）だった。医薬品の売上は12.2％増の264億2000万円だった。最主力品の過活動膀胱（OAB）治療薬ベオーバは36.7％増の70.87億円と、前年同期に限定出荷（22年8月解除）していたこともあり、大幅に伸長したものの、上期計画の75億円には4.13億円未達だった。「猛暑による受診抑制の影響が大きかった」（広報部）という。上期実績を受け、ベオーバの通期予想は162億円から158億円に4億円引き下げた。「寒くなる冬場にOAB患者が増えるため、受診が増えると考え、下期は当初予定していた計画を達成できる」とみている。

22年6月発売の新規作用機序（C5aR拮抗薬）のタブネオスの上期売上は、904.9％増（19.28億円増）の21.41億円となった。上期計画の13億円に対し8.41億円上回って着地した。「ステロイドの投与を減らしたいとか、投与を遅らせたいといった患者が想定より多く、浸透が早く進んだ」という。一方、23年4月発売の新規作用機序（脾臓チロシンキナーゼ阻害薬）のタバリスの上期売上は3.08億円となり、上期計画の1億円を2.08億円上回った。

◎新設の「レアディジーズプロジェクト」で専門的な情報提供

同社は21年4月に医薬営業本部に、希少疾病領域における新製品の円滑な市場導入を目的として、同領域のマーケティングを専門に担当する「レアディジーズプロジェクト」を新設した。「タブネオスやタバリスに関して、MRと共に専門要員がより専門的な情報提供をできる体制を整えており、速やかに行き渡った」としている。

22年5月発売の潰瘍性大腸炎治療薬カログラは、上期に182.2％増（3.78億円増）の5.85億円を売り上げた。上期予想の6億円に近い数字となり、通期予想は14億円から変更していない。

海外では、導出先が欧州で承認を取得した子宮筋腫治療薬（GnRHアンタゴニスト）リンザゴリクスについて、発売スケジュールを従来の23年度から24年度中に見直した。「オブシーバ社の経営破綻によって商用化製剤の製造体制の構築を当社が引き継いだ。23年度中の発売を目指してこれまでやってきたが、当初予定していた以上に商用化製剤の製造に時間を要することが判明し、スケジュールを見直した。技術導出先である英セラメックス社により市場導入準備が進められている」と説明した。米国においては導出先を探している現状に変更はないとした。

【連結業績 （前年同期比）通期予想（前年同期比）】　
売上高369億7800万円（12.5％増）775億円（14.8％増）←修正前745億円
営業利益20億1500万円（－）50億円（－）←修正前42億円
親会社帰属純利益56億7800万円（70.7％増）100億円（5.0％減）←修正前106億円

【国内主要製品売上（前年同期実績）通期予想、億円】
ベオーバ　70.87（51.83）158←修正前162　
ミニリンメルト他　18.85（19.25）34.50
ユリーフ　10.87（12.00）21←修正前19
ピートル　27.70（29.51）58
コルスバ　―（―）5
ダルベポエチンアルファBS　20.90（22.29）41←修正前38
エポエチンアルファBS　12.48（16.53）23
グルベス、グルファスト　19.83（21.35）38
マリゼブ　5.49（5.59）12
サラジェン　5.09（564）10
タブネオス　21.41（2.13）50←修正前32
カログラ　5.85（2.07）14
タバリス　3.08（－）7←修正前4