サワイグループホールディングスの木村元彦専務（沢井製薬代表取締役社長）は５月13日、2024年３月期（23年度）の決算会見に臨み、24年度改定を踏まえて割戻しの圧縮に向けて、「昨年度以上にご協力いただくべく、しっかり説明をしているところだ」と述べ、引き続き、価格戦略を重視する姿勢を示した。同社は23年度に「今までとは異次元の価格政策」を行うと表明。仕切価についても、「上げる余地のあるものは、もうギリギリいっぱいまで上げる」（澤井光郎代表取締役会長兼社長）としていた。

◎「私共が考えているような線で落ち着いた」

23年度に行った価格戦略について、木村専務は「23年度、営業本部を中心に卸さんも含めて取引会社さんに状況を丁寧に説明した。その結果、私共が考えているような線で落ち着いたかなと思っている」と手応えを見せた。「設備投資に280億円以上のキャッシュを使うこともあるので、今後も、さらなる流通改善に向けて、しっかり説明し、ご了解いただきつつある。昨年度以上にご協力いただくべく、しっかり説明をしているところだ」と話した。仕切価についても、「卸さんにしっかりとご説明して、ご理解いただく。これに尽きるかなというふうに思っている」と強調した。

販社を通じた流通については、「価格のところでしっかり維持していかないと企業評価に関わる。販社にもしっかり説明して密に連絡をとり、理解を深めていきながら一緒にやらせていただく」と表明。「日本中を見たときに、販社が強い地域もある。一律の方針ではなく、エリアごとに販社さんとの関係を細かく見ていく。そういう営業戦略が非常に重要になってくる。そういう方針で進めていこうと思っている」と述べた。

◎24年度は177億錠生産体制へ　自社生産能力も26年度に220億錠に引上げを計画

供給不安が続く中で、増産に向けた取り組みを強化していることも強調した。今年７月に稼働開始を予定する第二九州工場新固形剤棟については、当初の予定を前倒しし、投資を行う。投資完了後の27年１月以降の生産能力は当初計画（30億錠）を上回る35億錠となる予定とした。

24年度にはトラストファーマテックの増産などを含め、約177億錠の生産を計画する。木村専務は、「当社は需要拡大を見据え、過去から実施してきた生産設備や人員の先行投資により、業界随一の生産能力を誇っている」と胸を張った。さらに、自社生産能力を23年度の185億錠から26年度には220億錠へと引き上げる予定であることも紹介。「引き続き、安定供給力の強化を図るとともに、国内ジェネリック市場内でのシェア拡大に取り組んでいく」と話した。

◎他社との協業・連携視野に「本社戦略部門を見直し、組織を作り取り組んでいる」

厚労省の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」の報告書案では、少量多品目生産など構造的課題が指摘される中で、適正化に向けて生産体制を含めた企業間の連携・協業の必要性が指摘されているところ。木村専務は、「本社の戦略部門を見直し、他社と話し合いをしやすくできるような組織を作り、取り組んでいる」と説明。小林化工の生産設備及び関連人員譲受して設立したトラストファーマテックを引き合いに、「生産数量ももう少し上げていく必要があるかもしれない。相手様のあることだが、トラストファーマテックでやったようなことも一つのオプションとしてあるのかなと思っている。サワイのさらなる成長、あるいはお客様にプラスとなるような取り組みがあれば積極的に考えていきたい」と話した。

◎23年度決算は8.0％増の1768億6200万円　24年度は大幅増益見込む

同社の2024年３月期（23年度）決算では売上高が前期比8.0％増の1768億6200万円、営業利益は16.0％増の186億2000万円で、日本事業は増収増益となった。一方で、米国事業の業績も含まれる純利益は28.7％減の91億5600万円となった。なお、米国事業は、Bora Pharmaceutical Holdings, Inc. への譲渡が４月１日に完了。非継続事業に分類したころから、売上高や営業利益は米国事業が含まれておらず、純利益のみ米国事業も含まれた金額となる。

2025年３月期（24年度）は売上高が前期比14.2％増の2020億円、営業利益は39.6％増の260億円、純利益は119.1％増の300億円と大幅な増益を予想する。純利益には、米国子会社売却完了に伴う為替実現益155億円が加わることが大きく影響する。増収を計画する要因については、既存品の売上数量の増加で+8.9%（23年度以降発売製品含め+9.5%）を見込んでいることに加え、流通改善による割戻しの圧縮を継続することで、利益率の改善も見込む。