東邦HD・馬田COO 仕切価率上昇で「どこまで価格転嫁できるかは今後の顧客との交渉」
公開日時 2024/05/16 04:50
東邦ホールディングスの馬田明専務取締役COO(東邦薬品社長)は5月15日の決算説明会で、仕切価率が上昇傾向であるとして、「一部の製品については、仕切価の位置が薬価に近くなっている現状もあり、どこまで価格転嫁ができるかは、今後のお得意先さまとの交渉になるかと考えている」と述べた。流通改善を重視する姿勢も強調。改訂流通改善ガイドラインで不採算品再算定を含む医療上の必要性が高い品目については、安定供給を確保する観点から、「価格交渉の段階から別枠」とすることが明記された。馬田COOは、「業界特有の取引慣行や過度な薬価差を是正する動きが高まっていると捉えている。昨年以上に流通改善への意識を高めた取り組みが必要と感じている」と述べた。
◎仕切価率 23年度の「0.2%強」からさらに上昇
仕切価率は、23年度は「0.2%強」だったが、「今年度は昨年度以上に上昇している状況で今年度が大幅に上昇しているということではなく、毎年徐々に上がっているという印象」と馬田COOは話す。仕切価率が上昇する要因としては、製造コストの上昇や不採算品目の増加などをあげ、「カテゴリー別に見ると、上昇幅は後発品メーカーの方が大きい傾向だが、こちらも今年度に限ったことではない」と指摘した。価格転嫁のあり方については、「基本スタンスとしては単品ごとの仕入れ価格に対して、当社の流通コストを踏まえた価格提示を原則とはさせていただきたいと思うが、一部の製品については、仕切価の位置が薬価に近くなっている現状もあり、どこまで価格転嫁ができるかは、今後のお得意先さまとの交渉になるかと考えている」と話した。
◎「流通改善に逆行することないよう進める」
流通改善に注力する姿勢も強調。馬田COOは「今年度も引き続き製品ごとの価値に見合った単品単価での交渉を進めていきたい」と話した。改訂流通改善ガイドラインで年間契約での妥結が盛り込まれたことも「ポイントの一つ」として、「単品単価交渉とあわせて進めてまいりたい」と述べた。医療機関や薬局のバイイングパワーによる薬価引下げについても触れ、「私達が取り扱う製品の構成も大きく変わり、仕切価も上がっている状況にある。ご要望される価格にお答えできない状況になっているのが実情」と説明。「一次売差マイナスという過去から続く商習慣からの脱却が、流通改善を進めていくことでとても重要だと思っている。単品ごとの価値や流通コストを踏まえた価格について、お得意先様に丁寧にご説明させていただき、流通改善に逆行することないよう、進めてまいりたい」と話した。
◎24年度も複数の事業所の統廃合を検討「地域の実状に即した最適な事業体制を構築」
プロモーション体制にも言及。リアル面談だけでなく、リモートディテーリングが増加しており、製薬メーカーからのプロモーションについての要望も増加してきているという。動画作成や医療機関向けの全国Webセミナーの開催などのプロモーションも行っているとした。
事業所の統廃合については、2次医療圏に即した組織再編とあわせ、老朽化した事業所の建て替えや移転など、職場環境の改善や組織風土の活性化、様々な資源の合理化などを目的に進めてきたと説明。23年度には6事業所、16営業所の統廃合を実現した。有働敦代表取締役CEOは、「複数の事業拠点の統廃合を検討しており、引き続き、地域事情に即した最適な事業体制を構築する」と述べた。
◎23年度決算は増収増益 取引卸限定品の売上高は23.2%増
同社の2024年3月期(23年度)決算は、医薬品卸売事業の売上高が前期比6.28%増の1兆4244億8800万円、売上総利益が前期比6.47%増の835億3700万円の増収増益となった。23年4月の薬価改定の影響を受けたものの、がん治療薬やスペシャリティ医薬品の伸長、一部製薬メーカーの流通体制の変更が増収の主な要因。取扱卸を限定した製品の売上高はコロナ治療薬を除き、前期比23.2%増の2068億円で、「引き続き拡大し、市場成長率を上回る堅調な売り上げに貢献した」という。
売上総利益については、仕切価上昇やコロナ治療薬の一般流通への移行に伴うコロナ関連製品の配送手数料などで大幅減があったものの、「個々の製品の価値と流通コストに見合った価格交渉に努めたことによる納入価の改善」が影響したとしている。