東邦ホールディングス（HD）は6月4日、３Dインベストメント・パートナーズ（３Ｄ社）が公開書簡で主張した、①アンダーパフォーマンス・経営課題、②ガバナンス体制の不備－などの指摘に対し、「明確に事実に反するものが含まれる。看過できない」との見解を発表した。中でも日大事件に関連して「当社がガバナンス上の問題を隠蔽しようとしている」と３D社が指摘したことに、「事実を著しく歪曲した主張だ」と反論。6月27日開催の定時株主総会で枝廣弘巳代表取締役CEO兼CFOに加えて、改選期に該当しない社外取締役の加茂谷佳明氏、小谷秀仁氏の反対行使の議決権を推奨したことに、「3氏が有するスキルと経験は中長期的な企業価値の向上に不可欠であると認識し、引き続きその知見を活かすことが重要である」と強調した。

３Ｄ社は5月27日付で東邦ＨＤ株主向けの「プレゼン資料」（公開書簡）を公開した。公開書簡では東邦HDの企業価値最大化に向けた課題として、①アンダーパフォーマンス、②経営課題、③ガバナンス・コンプライアンス（再三にわたる不祥事と日大事件への関与）、④同（日大事件に対する対応から疑われる隠ぺい体質）、⑤取引先からの信頼喪失と企業価値の不可逆的な毀損リスク、⑥ガバナンス不全への解消に向けた議決権行使方針－について見解を表明した。

◎「３D社が自らの主張を一方的に公表したことは誠に遺憾」

これに対し東邦ＨＤは、「３Ｄ社の主張は、憶測に基づいたものや、明確に事実に反するものが含まれており、株主やステークホルダーに誤解を与えかねない」と反論。「３D社との複数回にわたる面談において、３D社の質問に対する回答や指摘に対する当社見解の説明を行っていたにもかかわらず、３D社が自らの主張を一方的に公表したことは誠に遺憾であり、当社としては看過できない」と主張した。

◎アンダーパフォーマンスの指摘　「事実を正確に反映したものではない」

その上で３D社が主張するアンダーパフォーマンス・経営課題への指摘については、「事実を正確に反映したものではない」と反論。過去1年、3年、５年、10年のTSR（株主総利回り）は、「いずれも同業他社を上回っている」と説明。また、３D社が主張する「経営課題を放置し続けている」との主張も、「事実に反する」と強調した。さらに、取締役会の諮問機関として設置した「経営戦略委員会」において、資本市場の期待も踏まえた実行計画を公表しているとし、実行計画は、トランスフォーメーション推進ステアリングコミッティによるモニタリングのもと着実に推進していると説明した。

◎日大事件の批判「３D社と重ねてきた対話を曲解または無視するような部分も散見される」

日大事件に関連して３D社が、「ガバナンス上の問題を隠蔽しようとしている」と批判していることに対して、「これは事実を著しく歪曲した主張」と指摘。「３D社と重ねてきた対話を曲解または無視するような部分も散見され、当社が真摯に対応してきたことが悪意をもって切り取られているとしか思えない」と指摘。続けて、「日大事件に係る一連の事案に関しては、検察の捜査に協力するとともに、社内調査等を通じて、当社自体が違法または不正な取引を行ったものでないこと、及び当社に類似取引がないことを確認している」と説明した。

なお、日大事件に関し東邦HDは、日大関連病院との取引において、2017年に指摘のある会社とコンサルティング契約を締結したのは事実と認めながら、契約締結時点で同社が実態のない会社であるとの認識は一切なかったと説明した。また、2020年11月以降、一連の事案に対する検察の捜査に協力するとともに、社内調査や弁護士の見解を踏まえ、「当社自体が違法または不正な取引を行ったものでないことを確認している」との見解も示している。

◎枝廣氏、加茂谷氏、小谷氏の反対の議決権行使　「中長期的な企業価値の向上にとって不可欠」と反論

３D社が、ガバナンス不全への解消に向け、枝廣氏、加茂谷氏、小谷氏への反対の議決権行使を推奨したことに対しては、「当該3人のスキルと経験は、当社の中長期的な企業価値の向上にとって不可欠と認識しており、引き続きその知見を活かしていくことが重要であると考えている」と強調した。