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シコニア・藤本CEO 企業のノウハウ活用で「世界目指せるスタートアップを育成」 エコシステム活性化

公開日時 2025/04/14 06:30
シコニア・バイオベンチャーズの藤本利夫代表取締役は4月11日、CPHI Japan(国際医薬品開発展)で講演し、日本での創薬エコシステム構築に向けて、「私たちがいま取り組まなければならないのは、世界を目指せるスタートアップを育成していくこと。そうした期待を醸成していくことが最も必要ではないか」と熱く語った。日本のスタートアップのシーズが製品化に至らない背景として、インキュベーション機能が不足していると指摘。シコニア・バイオベンチャーズに出資する武田薬品とアステラス製薬を中心に、製薬企業のノウハウを開発早期から活かした目利きと検証試験を行うことで、「再現性が高まる」と説明。製品化につながる確率があがることで、ベンチャーキャピタル(VC)などからの投資を呼び込む好循環につながるとして、「創薬エコシステムの活性化」にアクセルを踏む姿勢を示した。

◎創薬エコシステムは“場”と“ソフト”両面の取組みが必要

世界的に創薬の主体がスタートアップへとシフトするなかで、日本のスタートアップは成功例がほとんどない。製品化には、早期非臨床試験から後期非臨床試験、IND、臨床試験とフェーズを辿るが、「アカデミアで生まれた技術を企業、もしくはVCが投資するレベルまで育て上げていくという、インキュベーション機能がいま足りていないギャップだと感じている」と話す。

藤本代表取締役は、こうしたギャップを解消するためには、産官学が一堂に集う“場“と、インキュベーション機能を有する“ソフト”の両面からの取組みが必要との考えを示す。場としては、湘南アイパークを通じてオープンイノベーションを加速化させている。ただ、「場があってもソフトがなければ動かない」と述べ、インキュベーション機能を発揮するソフト面の取組みとしてシコニア・バイオベンチャーズを立ち上げた背景を説明した。

◎企業のノウハウで再現性確認、成功確率が向上 米国市場見据えた製品開発進める

シコニア・バイオベンチャーズは、武⽥薬品、アステラス製薬、三井住友銀⾏が出資する合弁会社として、2024年8月に設立。今年3月にスタッフを固め、事業展開を本格化させている。目指すのは、「日本発の革新的な創薬アイデアのグローバル展開」だ。

藤本代表取締役は、「グローバル製品を開発できる質の高い早期スタートアップを数多く創出し、その成長を加速させるためには、早期から企業目線を入れていく、スタートアップに早くから出口目線を入れていくことに尽きる」と話す。

スタートアップのシーズが製品化に至るまでの大きなハードルの一つとして「再現性」があることが知られている。特にアカデミアでは論文化などのためにチャンピオンデータが強調されることが多いことも指摘されるところだ。こうしたハードルを克服するために藤本代表取締役は、企業の専門家が研究計画や事業化行け区の策定などシーズとデータの作りこみについて伴走支援を行い、早期から製薬企業のノウハウを組み込む必要性を指摘する。

具体的には、アカデミアやスタートアップ、企業のスピンアウトや戦略から外れたシーズをシコニア・バイオベンチャーズが引き受け、目利きを行う。選別されたシーズについて、価値を決定づけるような実験を行い、データに基づき、“Go、No、Go”を決定。創薬シーズを創出するスタートアップの立ち上げまで視野に入れる。藤本代表取締役は、「私たちが目利きをして検証試験を行い、再現性を確かめられれば、製品になる確率が上がる。そこに投資してくるVCが必ず現れてくると思っている」と説明。グローバル展開するVCを巻き込み、米国市場を見据えた製品開発を進めることを見据える。

一方で、「おそらく半分ぐらいはデータを取得した段階で再現ができない、もしくは私たちの設定したクライテリアを満たすことができない」と見通す。この場合はスタートアップにシーズを返すことになるとした。ただ、この場合でもスタートアップは「新たなデータを得ることはできる」とメリットを強調した。

シーズを実用化に進めるスタートアップが生まれた時点で、VCに主導権を渡す考えも示し、「私たちが絡むのはIND(新薬臨床試験開始申請)くらいまでで、シリーズA(スタートアップ企業が本格的な事業拡大を目指す際に資金調達を行う投資ラウンド)くらいまでのスコープで引き返していきたい」とも話した。こうしたサイクルを経験することで、起業家人材の育成につながることも視野に入れる。

◎グローバルのエキスパートからのアドバイスも 「もう1社」の出資企業も募る

武田薬品とアステラス製薬が出資しているなかで、「どういった形でこの製品開発を進めたらいいのか、アドバイスを大手グローバル製薬企業のエキスパートたちからいただくことを一つの特徴にしている」とも説明した。今後は、さらに「もう1社」ほどの出資企業を募る考えで、「現在、交渉している」と明かした。

◎40社100以上のシーズを評価 最初の実験開始の投資判断も 「年に4~5個の実験を」

すでにアカデミアやスタートアップなど40社以上のオリジネーター、100以上のシーズについて評価を進めているという。「先日、最初の実験を開始する投資判断をした」といい、事業を加速化させる。

現段階では、予算を踏まえてモダリティは低分子や核酸、抗体薬が優先というが、疾患領域については、「全く問わない」と強調。ただ、「武田薬品とアステラスのエキスパートがいるので、専門領域が、やはり中心にはなってくる」と見通した。2~3年以内に開発化合物の創出が見込めるHit to LeadやLead Optimization(リード最適化)の段階にあるシーズで、コンセプト検証に足る試験が実施されており、「バイオロジーが確かなもの」(藤本代表取締役)が対象。藤本代表取締役は、「年に4~5個の実験を行い、定常状態で2社程度の会社を作っていければ」と意気込んだ。

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