エーザイ・内藤CEO オーガニックビジネスで利益構造を変革「緒に就いた」 レケンビなど"3L"が牽引
公開日時 2025/11/06 04:53

エーザイの内藤晴夫代表執行役CEOは11月5日、2025年度第2四半期(中間期)決算説明会に臨み、「フロントラインビジネスの医薬品事業が順調に伸長し、それを中心とする利益構造により増収増益を達成したことが一番のポイントだ」と強調した。特に、レケンビ、レンビマ、デエビゴの「3L」が前年同期比15%増の2368億円を達成。医薬事業全体でみても前年同期比5%増の3933億円になったと報告した。一方で、通期業績について内藤CEOは、次世代重点開発品への積極資源投入や欧州(EMEA)での構造改革費用の発生が見込まれると明かしながら、「現時点で通期の業績予想の変更は行わなかった」と述べた。
上期の売上収益をみると、レケンビが前年同期比153%増の411億円、レンビマが1%増の1665億円、デエビゴが15%増の291億円と、主力3製品(3L)が医薬品事業の増収を牽引した。特にレケンビについては、米国(アメリカス)で84%増の193億円、日本は177%増の117億円、中国は442%増の79億円と大幅伸長している。一方、利益面でみると、研究開発費は売上総利益に対し、18.9%と20%(前年同期21.4%)を下回った。内藤CEOは、「レケンビの試験費用がピークを過ぎて減少したため」と説明。また、販売管理費は3.6%増えたが、「レンビマの業績好調によりメルク社への利益折半費用が増えたことによるものと、レケンビへの積極的な費用投入のフェイズにあるため上昇した」と述べ、上期の営業利益は344億円で23.6%の大幅な増益になったとした。
通期営業利益545億円について内藤CEOは、「医薬品事業によって(利益を)あげていく。言ってみればエーザイの利益構造は、よりオーガニックビジネスに依存して利益を計上する。そういう利益構造の“変革が著に就いた”上期であり本年度だと思って欲しい」と表現した。
◎レケンビ皮下注製剤(IQLIK) 保険償還について「大きな心配はしていない」
レケンビについて内藤CEOは、米国で皮下注製剤(IQLIK)が10月6日に上市されたと報告。これにより当事者やケアパートナーが自宅にいながら平均15秒で同剤を投与できるため、通院が不要になるほか、医療従事者も点滴静注のための準備や看護師によるモニタリングなどを削減できると述べた。また、民間保険会社が保険償還する「レケンビ コンパニオン」プログラムをスタートさせたと説明。メディケアパートDのフォーミュラリに正式に掲載される2027年1月までの間は、「Medical Exception Process」を使って保険の申請をすると償還できると述べ、内藤CEOは「保険償還について大きな心配はしていない」と強調した。なお、IQLIKは、発売後4週間で全米34施設に初回納入を完了、341施設に投薬トレーニング用デモキットを提供した。
◎CMSがBBMの新たなNational payment rate決定 1検査128ドル 26年1月施行
さらに、BBM(血液バイオマーカー)についても「重要な進展があった」と内藤CEOは強調する。米国アルツハイマー協会がBBMのClinical Practice Guidelineを発出し、感度と特異度が90%以上あればBBM検査がAβ確定診断として使用推奨されたと説明した。また、メディケアのCMSでは、BBMの新たなNational payment rateを決定し、2026年1月から施行することになったと明かした。1回あたり検査費用128ドルで受けられるというもので、内藤CEOは、「BBMが使われる追い風になる」と期待感を込めた。
◎トランプ大統領の最恵国価格制度 「どのプライスレベルを捉えるかが非常に重要」
内藤CEOは米トランプ大統領の最恵国価格(MFN)制度について、「価格といっても“定価”なのか“仕入れ価格”なのかによって大きく違ってくる。政府機関によって強制的に決められる価格の場合、企業に自由度はない」と指摘。製薬企業は、「(国や地域の)患者さんに安定的に医薬品を届けることが根源的な使命であり、その使命を果たさなければいけない」と強調。「どのプライスレベルを捉えるかが非常に重要になってくる。それによっては極めて厳しい意思決定を行わなければいけないというような状況になることは大変心配していると」と述べた。
【連結業績 (前年同期比)通期予想(前期比)】
売上高 4000億1300万円(3.9%増)7900億円(0.1%増)
営業利益 344億1800万円(23.6%増)545億円(0.2%増)
親会社所有者帰属純利益 246億3000万円(13.5%増)415億円(10.6%減)
【グローバル主力製品売上高 (前年同期実績)通期予想、億円】
レンビマ 1665(1649)3120
日本 70(69)130
アメリカス 1144(1159)2175
中国 127(131)250
EMEA 231(212)410
イーストアジア・グローバルサウス 93(77)155
レケンビ 411(163)765
日本 117(42)240
アメリカス 193(105)400
中国 79(15)95
EMEA 4(1)―
イーストアジア・グローバルサウス 19(0)―
デエビゴ 291(253)580
日本 220(212)460
アメリカス 42(31)90
中国 10(1)―
EMEA 5(2)―
イーストアジア・グローバルサウス 14(7)―
フィコンパ 160(147) 315
日本 41(38)90
中国 26(22)50
EMEA 81(75)155
イーストアジア・グローバルサウス 11(10)20
【国内主要製品売上高(前年同期実績)通期予想、億円】
デエビゴ 220(212)460
レケンビ 117(42)240
ジセレカ 87(72)—
レンビマ 70(69)130
グーフィス 43(39)85 ※
メチコバール 41(43)86
モビコール 41(37)76※
フィコンパ 41(38)90
エレンタール 35(37)65※
リーバクト 35(30)60※
エクフィナ 34(32)67
ハラヴェン 16(38)―
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