第一三共の奥澤宏幸代表取締役社長兼CEOは10月31日の2025年度第2四半期（中間期）決算説明会で、日米での抗TROP2 ADC・ダトロウェイや米国での抗HER2 ADC・エンハーツの大幅な売上拡大を見込み、通期売上予想を1000億円上方修正し、2兆1000億円（前期比11.3％増）とすると発表した。ただ、コア営業利益予想については、上期に新型コロナワクチン・ダイチロナおよび規格外製品等の棚卸資産評価損を売上原価に計上したことや、エンハーツの開発マイルストン収入の一部（早期乳がんを対象としたDESTINY-Breast（DB）05試験、DB11試験）が26年度にずれ込むことを要因に、期初予想の3500億円（11.9％増）を据え置いた。

◎中計最終年度　売上２兆円、がん領域売上9000億円、ROE16％、DOE8.5％は達成へ

奥澤社長は、今回の修正により、第5期中計の最終年度となる25年度の５つの数値目標のうち、▽売上高（2兆円）、▽がん領域売上高（9000億円）、▽ROE（16％以上）、▽DOE（8.5%以上）―の４つの達成に自信を示した。残るR&D費控除前コア営業利益率（40％）については、「若干未達となる見込み。引き続き改善を図っていく」と述べた。

また、奥澤社長は、検討中の第6期中計に言及。「インハウスのグロースエンジンに引き続き大きな期待を寄せているものの、一方で外部資源の獲得も併せて強化していくことが一つのポイントになる」と強調。「オンコロジー領域が中心になると思う」としながらも、「それに限定しているわけでもない。5DXd ADCsを中心に非常に分厚いレイトステージの臨床開発プログラムを持っているので、もう少しアーリーステージのアセットをじっくりと次の5年間で育てて、2030年度以降の“次の次”の中計あたりで後期の臨床開発、あるいは上市につなげていけるようなものを獲得する方向になるのではないか」と語った。

◎25年度中間期の連結業績　売上高10.5%増　2桁増収を達成

25年度中間期の連結業績は、売上高が10.5%増の9754億円と2桁増収を達成した。ただ、コア営業利益は、ダイチロナ及び規格外製品等の棚卸資産評価損の売上原価への計上を要因に原価率が悪化したため、4.8%減の1586億円となった。小川晃司専務執行役員 CFO   は「エンハーツに関して、製造ロットのところで出荷不適合のロットが発生したこともあり、その部分は在庫処分の見込み。原因の特定、再発防止策など対応済みであり、供給計画に影響はない。ダイチロナの方は接種率の大幅な低下で原材料で評価損を計上している。エンハーツで50億円ぐらい、ダイチロナで50億円ぐらいの規模感だ」と説明した。

中間期の営業利益については、25年5月に米国で承認申請を取り下げた抗HER3 ADC（パトリツマブ デルクステカン）の上市時期変更に伴う医薬品製造受託機関（CMO）への損失補償（127億円）など185億円を一過性費用として計上したことなどから、22.8%減の1442億円となった。

◎中間期・グローバル製品　エンハーツは21.9%増　

中間期のグローバル製品の売上を見ると、エンハーツは21.9%増の3184億円となった。通期では6942億円（前期比25.6%増）を見込んでおり、期初予想を321億円引き上げた。24年12月に日本、25年1月に米国、4月に欧州でHR陽性HER2陰性乳がんの適応で承認を取得したダトロウェイの中間期売上は157億円となった。米国では、25年6月にEGFR変異非小細胞肺がんの効能追加承認を取得しており、奥澤社長は「6月にプロモーションを開始した後、わずか3カ月で既に乳がんと同程度の新規患者数を獲得しており、非常に力強く売上が立ち上がっている」とコメントした。ダトロウェイの通期予想は378億円で、7月の前回予想を162億円引き上げた。

◎国内業績　リクシアナ、タリージェなど伸長　ベルソムラ97億円

国内医療用医薬品・ワクチン事業で構成するジャパンビジネスユニットの売上は4.3%増の2499億円。24年10月にMSDから販売移管された不眠症治療薬・ベルソムラが97億円寄与したほか、抗凝固剤・リクシアナ、疼痛治療剤・タリージェなどの伸びが目立つ。通期の同ユニットの売上予想は0.4%減の4748億円。25年８月に後発品が承認された抗てんかん剤・ビムパットや同年9月にバイオ後続品（BS）が承認された、がん骨転移による骨病変治療剤・ランマークは減収予想となっている。

【連結業績（前年同期比）25年度予想（前期比）】
売上高  9753億5300万円（10.5％増）2兆1000億円（11.3％増）←修正前２兆円
コア営業利益　1585億6300万円（4.8％減）3500億円（11.9％増）←修正前3500億円
営業利益　1442億3700万円（22.8％減）3350億円（0.2％減）←修正前3500億円
親会社帰属当期利益　1308億1400万円（10.8％減）2880億円（2.6％減）←修正前3000億円

【グローバル主要製品売上（前年同期実績）25年度予想、億円】
エンハーツ　3184（2613）6942←修正前6621
うち日本　179（155）390←修正前412
米国　1745（1401）3850←修正前3541
欧州　816（705）1732←修正前1678
ASCA（アジア／中南米）444（351）971←修正前990

ダトロウェイ　157（－）378←修正前216（7月予想）←47（期初予想）
うち日本　56（－）100←修正前67（7月予想）←５（期初予想）
米国　97（－）266←修正前140（7月予想）←33（期初予想）
欧州　４（－）11←修正前５
ASCA（アジア／中南米）　0（－）0←修正前４

エドキサバン　1860（1741）3571←修正前3394
うち日本　732（679）1392←修正前1350
米国　７（18）12←修正前12
欧州　968（906）1853←修正前1733
ASCA（アジア／中南米）153（138）315←修正前299

【国内主要製品売上（前年同期実績）25年度予想、億円】
ジャパンビジネスユニット　2499（2397）4748←修正前4635
リクシアナ 732（679）1392←修正前1350
タリージェ　322（278）644←修正前622
プラリア　226（211）447←修正前428
エンハーツ　179（155）390←修正前412
エフィエント　180（157）335←修正前336
ビムパット　168（155）262←修正前261
ベルソムラ　97（-）189←修正前220
ランマーク　100（104）188←修正前165
カナリア　77（81）147←修正前151
ミネブロ　53（48）115←修正前120
ロキソニン　59（68）111←修正前114
エムガルティ　63（51）124←修正前107
ダトロウェイ　56（-）100←修正前67
イナビル　0（２）0←修正前0
ワクチン事業　66（127）84←修正前153

第一三共ヘルスケアユニット　459（425）915←修正前915