参天製薬が新中計発表 29年度に売上高4000億円、コア営業利益800億円 海外売上比率は58%に
公開日時 2025/05/22 04:51

参天製薬の伊藤毅代表取締役社長兼CEOは5月21日の中期経営計画(25~29年度)説明会で、最終29年度に売上高4000億円(24年度実績比1000億円増)、コア営業利益800億円(同206億円増)を目指すと発表した。日本市場における現在の売上規模を維持しながら、海外事業(EMEA・アジア・中国)を大幅に伸ばす計画で、海外事業売上比率は24年度の44%から58%に上昇する見通し。各地域で近視進行抑制点眼剤・アトロピン硫酸塩(国内商品名:リジュセア)や眼瞼下垂治療薬・オキシメタゾリン塩酸塩が成長をけん引する見込みで、29年度のグローバル売上予想は各300億円以上、150億円以上としている。なお、ピーク時予想は各600億円、450億円。
同社は、前中計(23~25年度)で最終25年度の売上高/コア営業利益目標として2800億円/560億円を掲げていたが、23年度実績は3020億円/628億円、24年度実績は3000億円/594億円と2期連続で前倒し達成した。また、前中計で戦略の柱として掲げた、▽米州コマーシャル事業からの撤退や組織最適化など構造改革による収益改善、▽Santen Commercial Excellenceのグローバル展開による海外事業の1人当たり売上高の向上など地域事業の成長、▽アレジオンクリーム等のライフサイクルマネジメント(LCM)やリジュセアの承認取得などパイプラインの強化―を完遂した。
◎26年度以降は再び成長軌道、29年度に向けて成長加速 近視や眼瞼下垂を含む新製品に期待
25年度からスタートする中計では、今後5年間の新たな成長への道筋を示した。同社が5月13日に発表した25年度業績予想は、日本市場での主力品への後発品参入や選定療養などの影響により減収・減益を見込んでいるが、伊藤社長は中計説明会で、「26年度以降については、近視や眼瞼下垂を含む新製品やLCM製品の売上が大きく成長することで再び成長軌道に戻し、その後、29年度に向けて成長を加速していく」と語った。
29年度の売上高目標4000億円の地域別内訳は、▽日本1700億円(24年度実績比47億円増)、▽EMEA1000億円(257億円増)、▽アジア(韓国・タイ・ベトナム等)650億円(349億円増)、▽中国650億円(361億円増)―としており、主に海外地域 (EMEA・アジア・中国)におけるリーダーポジション確立により、売上成長を目指す。
このうち、EMEA市場では「主要市場であるドイツとフランスにリソースを投下して販売組織を強化し、緑内障・ドライアイの主要領域での売上拡大を図るとともに、新規領域である近視進行抑制薬で市場を創造していく」(伊藤社長)考え。欧州でアトロピン(欧州商品名:Ryjunea)は25年度、オキシメタゾリンは27年度の上市を予定している。
アジア市場では「市場自体が成長する見込みのため、現在の事業基盤をてこに今後も高い成長を目指す」とした。アトロピン、オキシメタゾリンとも27年度の上市を予定。また、 中国市場については「VBP(Volume-Based Purchasing)などの政策によって短期的には他の地域に比べるとボラティリティがある」と指摘した上で、「しかしながら、マルチチャネル戦略によってVBPの影響を分散させるとともに、中計期間の後半に上市を予定している緑内障・近視・眼瞼下垂の新製品での売上成長、さらには事業開発機会の探索により積極的に外部のアセットを獲得することで、ポートフォリオの拡充を図り、持続的な成長につなげていく」と述べた。アトロピンは28年度、オキシメタゾリンは29年度の上市を予定。
◎日本市場「マザーマーケットとして収益基盤を維持」 米国市場は売上織り込まず
また、日本市場については「主力製品の特許切れに伴う後発品参入や薬価改定もあるが、新製品の上市などにより、その影響を最小化することでマザーマーケットとして引き続き収益基盤として維持していく。特に近視・眼瞼下垂については、これまで培ってきた事業基盤を最大限活用しながら市場を立ち上げることで、現在の売上規模を維持していくことができると考えている」と述べた。
日本では、25年度にリジュセアを上市したのに続き、申請中の緑内障・高眼圧症治療点眼剤・セペタプロストを上市予定。26年度にオキシメタゾリンと、開放隅角緑内障・高眼圧症治療点眼剤・ネタルスジルメシル酸塩(海外商品名:Rhopressa)、28年度に開放隅角緑内障・高眼圧症治療点眼剤・ネタルスジル/ラタノプロスト(Rocklatan)の上市を予定している。
伊藤社長は、米国市場への取り組みについて「少なくとも29年度までの中計の中では、米国における売上は織り込んでいない。一方で、開発パイプラインの中には、うまくいけば米国でもかなり有望な製品はある。今後、開発を進めていく中で、米国市場の患者さんにどうその製品を役立てていくか検討を進めていきたい」とし、自販の可能性ついては「勢いでそういう風に流れないように慎重にちゃんと考えていきたい」とコメントした。
中計5年間の事業開発投資は1500億円以上を計画。「海外市場のリーディングポジションの強化に資する既に市場に出ている製品や、開発後期品など今中計期間中のトップラインの成長に貢献する製品、2030年度以降の成長に貢献するような開発品の獲得に積極的に投資していく」と述べた。