製薬協・宮柱会長 「医療DXタスクフォース」で価値定量化に挑む 合意形成と意思決定に産業界から共創
公開日時 2026/04/24 04:53

日本製薬工業協会(製薬協)の宮柱明日香会長は4月23日、東京ビッグサイトで開催されたCPHIセミナーに登壇し、「医療DXによる価値の定量化」に取り組む考えを表明した。製薬協は4月に事業戦略本部を設置し、その中に「医療DXタスクフォース」を立ち上げた。宮柱会長は、医療DXタスクフォースを中心に、医療DXの価値定量化に向けた政策提言の策定や、ステークホルダーとの協働などに取り組む姿勢を表明。「限られた医療資源の最適配分に投資し、持続可能な社会保障の実現と日本型の医療DXモデルの発信につなげていきたい」と語り、健康・医療全体のDX加速に産業界として協働する考えを表明した。
◎医療介護、産業、健康分野全体を見据えた「横断的DXによる全体最適」が求められる
宮柱会長は日本の医療が抱える課題として、医療費増大、生産年齢人口減少の同時進行により、医療提供体制のあり方そのものの見直しが迫られているとの認識を示した。その上で、限られた医療資源を効率的・効果的に最適配分する基盤として、医療・介護現場、医療関連産業、健康・医療分野全体を見据えた「横断的DXによる全体最適」が求められると主張。「医療の質と持続可能性を両立させるために日本における医療DXを加速させていくことが重要だ」と訴えた。
一方で製薬業界の現状について、「個社レベルでAIを導入し、創薬や製造現場、コマーシャルなどあらゆる業務に活用している。エコシステムの一部分を担っていると十分認識している」と説明。積極的なAI活用によって制度面や法整備などに前進が見られる一方で、「いざそこから何を見出そうとしているかを製薬業界として自問自答しているところ」と分析した。
◎医療DXタスクフォース 「医療DXの価値評価を定量化して国民・患者さんに発信」
宮柱会長は、製薬協が「医療DXタスクフォース」を新設する意義に言及。医療DXの価値を共通理解するための取り組みとして、「医療DXの価値評価を定量化した形で国民の皆様や患者さんにまずは発信していきたい」と述べた。続けて、「エコシステムを構成する様々なステークホルダーの皆さんと、未来の日本の医療のあるべき姿について議論を深めていきたい」と語り、「医療DXは個社で進めるものではなく、コ・クリエーション(共創)を行うことで、次のステージへと進む取り組みだ」と述べ、連携の必要性を呼び掛けた。
◎地域包括エコシステム構築へ DXやAIがまとめ役に

社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院(石川県七尾市)の理事長で全日本病院協会会長の神野正博氏は、医療を取り巻く環境が転換期にあると訴え、「過去の成功モデルにとらわれない気持ちが必要。現状投影型の議論とは決別すべきだ」と指摘した。さらに、治療を終えた後も病院が患者の生活支援に関わる必要があるとし、「地域包括エコシステム」の構築が不可欠であると強調。「医療、健康、生活支援をインテグレーションすることが必要で、それらを繋げるためにDXやAIが出てきたのではないのか」と考えを述べた。
また、能登半島に位置する同院の現状として、「386床の病院で、医師65人、看護師300人しかいない」と人材確保の難しさに言及。医療DXを推進する中で、RPA(Robotic Process Automation)活用で130体のロボットを導入することで年間1万2000時間の業務削減を生み、看護師の業務効率に直結している事例などを紹介した。「AI活用は単に道具としてではなく、人の価値を最大化するために使っていくという次のフェーズに入った」と語った。
◎松本デジタル大臣 医療DXは「点を線で結び、面になることがあるべき姿」

ビデオメッセージで登壇した松本尚デジタル大臣は、医療機関の電子化などあらゆるデータが「点になっている」と指摘。「点を線で結び、全国どこへ行っても結びついて面になるということが、医療DXのあるべき姿だ」と述べた。さらに、医療DXを広く普及させる方策として、「システムを業務に合わせるのではなく、業務をシステムに合わせる」といった大転換が医療現場に求められると強調。一方で、DX推進にはセキュリティ強化も急務と訴え、「大病院であれ、クリニックであれ、サイバー攻撃にしっかりと強い組織・施設であるべきだ」と対策を求めた。
◎医療運営モデルを書き換え、AIファーストの病院へ

日本アイ・ビー・エムでヘルスケア・ライフサイエンスサービス理事・パートナーを務める先崎心智氏は、世界的な医療費の高騰と深刻な人材不足を挙げ、30年には世界で1100万人の医療従事者が不足すると指摘。世界の医療経営者の95%が自動化に着手している現状に触れ、「AIは医療運営モデルを根本から書き換えつつある」と述べた。また、疾患候補や治療選択肢などの提案に加え、診療後の記録作成や、ITの保守運用などにもAIが使われており、今後は「AIファーストなホスピタルが実現するのではないか」との見方を示した。