PhRMA 米国の薬価抑制策で提言 価格上昇の原因「PBMなど中間業者が多数介在していること」と批判
公開日時 2025/07/08 04:51
PhRMA(米国研究製薬工業協会)のStephen J Ubl理事長兼CEOは7月1日、米国における薬価上昇の原因や米国製薬業界の競争力の低下の原因の一つとして、340B薬価プログラムや多数のPBM(薬剤給付管理機構)など中間業者の存在があると指摘した。同理事長兼CEOは、その修正を図る必要性があるとの提言を含む声明を公表した。(緑川 労)
◎PBMの中間業者「医薬品を発明せず、患者の投与に関与せず、多額のリベートや手数料を儲けている」
Ubl理事長兼CEOは、医療用医薬品の価格上昇の原因にPBM(薬剤給付管理機構)など多数の中間業者が介在している点を指摘、中間業者は医薬品を発明せず、患者への投与に関与もせず、多額のリベートや手数料を儲けていると強調した。その上で、調査分析データを引用しながら、「PBMが主要糖尿病薬の30日処方を仮定すると、処方コストとして平均257ドルを取得しているが、同じ処方コストは英国では50ドル以下、日本では38ドル、そしてフランスでは35ドルである」と述べ、米国のPBMによる高額のコストを例示した。さらに「他の先進国で、中間業者が健康保険制度から患者に少しの価値しか提供せずこのような多額の金額を集めている国はない」と批判した。
また、米国の複雑な薬剤価格制度から利益を得ているのは、PBMばかりでなく病院、診療所、そのパートナーである営利企業は、340B病院値上げプロフラムで医薬品売り上げによる収入は650億ドルに上ると指摘、この制度は無保険患者に医薬品を供給できるように30年前に設けられたが、患者がベネフィットを享受しているというエビデンスはないと説明した。
340Bプログラムは、米国で低所得者層に医療サービスを提供する特定の医療機関が、外来患者用医薬品を割引価格で購入できる制度。当初、約100施設の病院が参加していたが、いまや3000施設に拡大、しかもこれらと契約している薬局は全米で3万3000施設を超え、膨張する一方であるとの現況を報告した。これら多くは、米国最大級のPBMであるCVSヘルス、エクスプレス・スクリプツおよびオプタムRxと財政的に連携しているとした。
Ubl理事長兼CEOは、「トランプ大統領がNATO(北大西洋条約機構)に対して防衛費の増額を求めたが、ヘルスケアにも同様のことを求めた。これによって米国人による薬剤費負担を減少させようという狙いである」と指摘。さらにUbl理事長兼CEOは、「ホワイトハウスが言及するように、他国は政府運営の保険制度は新規治療法へのアクセスを遅らせたり、否定したりして、直接的強制や間接的戦術によって価格への圧力をかけ、政権が意図的に薬価を低く保持しようとしているときに外国薬価を基準として採用するのは無意味である」と批判。、1980年代は世界の医薬品の大半が欧州発だったが、いまや米国が欧州を抜き世界一となったことを考えると競争力を阻害することは明らかである」と指摘した。
◎Ubl理事長兼CEO「イノベーションを抑制する外国薬価管理モデルを拒否しなければならない」
Ubl理事長兼CEOは、「我々はケアを制限し、イノベーションを抑制する外国薬価管理モデルを拒否しなければならない。その代わりに病院やPBMがすでに受け取っている法外な割引分を戻すよう求め、かつ豊かな国々には公正なシェアを保証してもらえば、米国の薬価は、米国のライフサイエンスの優位性を損なうことなく下落するだろう」と結論づけた。
なお、同声明は、6月26日にヘルスケア専門ウェッブサイトの「STAT+」に投稿したものを公表した。