PhRMA 革新薬めぐる負担、米国並みに引上げを 米・トランプ施策睨み「米国政府の緊急行動」を要請
公開日時 2025/05/19 04:50
米国研究製薬工業協会(PhRMA)は5月16日、「日本は、革新的医薬品に費やす一人当たりのGDPの割合で、米国と同等に貢献すべき」との提言を公表した。米国ではトランプ大統領が薬価引下げの大統領令に署名。「米国は世界人口の5%未満だが、世界の製薬企業の利益の約75%を賄っている」として、内外価格差の是正に取り組む姿勢を示している。PhRMAは、日本の政策が「結果的に米国の貿易赤字を人為的に悪化させている」と指摘。米国政府に対し、日米貿易交渉に優先的に革新的医薬品を含めるよう、「米国政府の緊急の行動が必要」と要請した。具体的には、革新的医薬品に対する毎年の薬価引き下げの廃止、費用対効果評価の拡大に反対の姿勢を改めて示し、「特許期間中の医薬品の薬価を維持するべき」と主張している。
PhRMAが公表したのは、「日本との革新的医薬品における公平かつ互恵的な貿易の実現に向けて」と題したステートメント。
◎厳しい薬価統制で「米国のイノベーションを著しく低く評価」 貿易赤字を人為的に悪化
「日本は、特許医薬品の発売時に薬価を設定し、特許期間中に薬価を引き下げるという厳しい薬価統制により、米国の革新的医薬品のイノベーションを著しく低く評価している」と指摘。「こうした日本政府による薬価統制は非関税障壁であり、日本が米国の革新的医薬品のイノベーションに対する負担を負わず、それらの医薬品の開発の恩恵を享受することを招いてしまっている。日本の政策は、公平な条件での米国の開発者や労働者の競争力と輸出力を否定するものであり、米国が知的財産保護で得るべき利益を損なう結果となっている」と指摘。さらに、「日本は、米国がリードする新しい治療法や治癒法の開発の成果を利用する一方で、日本での支払いを不適切に低下させており、結果的に米国の貿易赤字を人為的に悪化させている」と続けた。
世界銀行の推計を引き合いに、日本で販売されている全製品の平均価格は米国より34%低く、特許期間中の医薬品の平均各派は米国より約63%低いと指摘。日本は革新的医薬品に対して一人当たりGDPの約0.4%を費やしているのに対し、米国では0.8%を費やしているとして、「日本の行動、政策および慣行は、革新的医薬品の薬価を公平な市場価値以下に押し下げることになっている」とした。
◎米国並みに引き上げで米国は「対日貿易赤字全体の10%を解消」
日本の特許期間中の医薬品の薬価を米国が革新的医薬品に費やしている一人当たりGDPの割合と同等に引き上げることで、「米国の革新的医薬品の対日輸出は65億ドルから110億ドル以上に増加し、対日貿易赤字全体の10%を解消することができる」と説明。「日本により好ましい政策環境が整えば、現在発売されていない米国の革新的医薬品が日本に市場投入され、米国の革新的医薬品の対日輸出の価値はさらに増加する可能性がある」とした。なお、PhRMAによると、現在革新的医薬品の割合は米国では87%ですが、日本では50%という。
◎日米貿易交渉で革新的医薬品を優先的な取り扱いを
米国政府に対しては、「不公平で非互恵的な貿易慣行を排除するため、日本との貿易交渉に革新的医薬品を含め、優先的に取り扱うよう求めている」と説明。「近年、日本は薬価引き下げの頻度と規模を不透明な方法で歯止めなく広げ、特許期間中の医薬品にまで拡大してきました。日本における医薬品は社会保障支出全体のごく一部(10%)に過ぎないが、18年以降の全体的な予算削減の大部分(70%)は薬価引き下げによるもの」などと説明。「PhRMAは、日本が米国製の革新的医薬品の価値を認識し、新しい治療法や治癒法の研究開発について公平に負担するよう、米国政府に求めている。米国の患者が世界の革新的医薬品の研究開発費を不均衡に負担することのないよう、米国政府の緊急の行動が必要だ」と主張を繰り広げた。
そのうえで、「日本は、革新的医薬品に費やす一人当たりのGDPの割合で、米国と同等に貢献すべき。その第一歩として、日本はこれらの医薬品に対する毎年の薬価引き下げを廃止し、費用対効果評価制度などの他の薬価引き下げルールの拡大をとりやめることで、特許期間中の医薬品の薬価を維持するべき」としている。