ラインファーマ・ノグル社長 人工妊娠中絶薬メフィーゴパックの販売数量 発売2年超で累計1万箱到達へ
公開日時 2025/08/22 04:51

ラインファーマは8月21日、メディアの合同取材に応じ、人工妊娠中絶用製剤メフィーゴパックの販売数量実績が発売から2年超で累計9000箱を突破し、近く1万箱に到達するとの見通しを明らかにした。取材に応じたマーク・ノグル代表取締役社長は、「経口薬による中絶を含むリプロダクティブ・ヘルスケア(性と生殖に関する健康と権利)へのアクセス向上に取り組みたい」と強調した。また、メディアを通じたステークホルダーへの情報発信や、日本産婦人科学会・日本産婦人科医会との連携、厚労省など規制当局との話し合いの継続など、人工妊娠中絶薬のマーケットアクセスに関する多角的な情報支援に努める考えを明らかにした。
同社のメフィーゴパックは国内初の経口・人工妊娠中絶薬で、子宮内妊娠が確認された妊娠63日(9週0日)以下で使用する。ただ、同剤を処方できる医師は母体保護法指定医に限られる。また、メフィーゴパックを納品できる医療機関は、処方医のe-ラーニングの受講や母体保護法指定の確認、医師登録、有床施設の確認のステップが求められるなど、厳格な管理が必要となる。さらに、同剤は薬価基準未収載であるため、患者は自費診療となる。
◎富沢ウィメンズヘルス事業部長「医療従事者の身体的・精神的負担の軽減も期待できる」

同社ウィメンズヘルス事業部の富沢敏之事業部長(写真左)は、国内の人工妊娠中絶件数が年間12万件(23年実績)ある中で、メフィーゴパックの直近3か月(25年1~3月)シェアは4.9%になっていると明かした。一方で、同剤の発売を開始した23年5月以降の販売数量実績をみると、累計箱数は右肩上がりで推移しており、25年7月段階で9000箱を超え、1万箱に近づいているとした。富沢事業部長は、「想定よりは遅い」と述べながらも、メフィーゴパックの市場参入により「望まぬ妊娠をした全ての女性が自身にあった治療を選択できる環境を実現できた」と強調。加えて、「経口薬の登場により、手術の必要がなくなるなど、医療従事者の身体的・精神的負担の軽減も期待できる」と述べ、治療選択肢の拡大に伴う医療者側のメリットにも言及した。
◎ジェンダー平等とリプロダクティブ・ライツの実現に取り組む ノグル社長
マーク・ノグル社長はメフィーゴパックを通じて、ジェンダー平等とリプロダクティブ・ライツの実現に取り組む方針を説明。ジェンダー平等の水準の高い国では、「経口薬による人工妊娠中絶が一般的に高く活用されている」ほか、女性のエンパワメントが強くなると、「自身の健康についてより自律性が高まり、利便性やプライバシーの観点から経口薬による中絶を選考する傾向が強くなる」との見解を表明。日本国内においても、情報へのアクセスが拡大することで、「女性は自身のヘルスケア、特に中絶方法を含む選択について、十分に情報に基づいた判断を下すことが可能になる」と強調した。
一方で、社会課題を含む環境整備への取り組みについては、インターネット調査から経口薬を知らない女性が多いことを知り、女性にフォーカスした情報発信の必要性を認識したと強調。医学会・医会の専門医との情報交換やアドバイスを頂く機会などを活用しているとした。さらに、規制当局とも対話を継続する姿勢を示し、もっと早期にマーケットアクセスできる手段について議論を継続したいと意気込んだ。
このほかマーク・ノグル社長はラインファーマとしての中期的戦略として「眼科領域」への拡大も視野に入れ、リプロダクティブヘルスと眼科領域の2本柱で経営収支の早期黒字化を目指す考えも披露した。