久留米大・福本教授 PAH治療薬・エアウィン「有効性と副作用のバランスを見ながら中・高リスク患者に投与」
公開日時 2025/09/03 04:50

久留米大学医学部内科学講座心臓・血管内科部門の福本義弘主任教授は9月2日、MSD主催の肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬・エアウィン(一般名:ソタテルセプト(遺伝子組み換え))のメディアセミナーで講演し、「有効性と副作用のバランスを見ながら、リスク評価において中リスク、高リスクとされる患者には投与していきたい。特に50代くらいまでの若い方には積極的に使われると思う」と述べた。エアウィンは肺血管リモデリング(細胞増殖)を標的とした新規作用機序を持つ治療薬。福本教授は動物実験において肺血管リモデリングの進展抑制作用が確認された点に着目し、人に対しても同様に「投与により、細胞の肥大を一時的に止めているものと考えられる」との認識を示した。
エアウィンの効能・効果は「肺動脈性肺高血圧症」。細胞増殖を促進するアクチビンシグナル伝達を阻害することで、シグナル伝達のバランスを改善し、肺血管平滑筋細胞の増殖を抑制し血行動態を改善する。標準的なバックグラウンド治療を受けているPAH成人患者(WHO機能分類Ⅱ度またはⅢ)を対象とした海外第3相試験(STELLAR試験)および国内第3相試験(020試験)では、肺血管抵抗(PVR)値や6分間歩行距離、平均肺動脈圧(mPAP)などでベースラインからの改善がみられた。主な副作用として、血小板減少症やヘモグロビン増加、毛細血管拡張症などがあった。
◎PAH本態の肺血管リモデリング(細胞増殖)が標的 新規作用機序が特徴
エアウィンは血管収縮を標的とする既存の治療薬とは異なり、PAHの本態である肺血管リモデリングを標的とする。福本教授は講演で、血管収縮から次第に肺血管リモデリングの影響が大きくなるPAHの疾患進行を説明。その上で「最初は血管拡張薬で効くはずだが、次第に細胞増殖を抑えるエアウィンが必要になる。フォローアップ時のリスク評価で中リスク以上の場合はエアウィンを積極的に追加しようと現場では考えられているのではないか」と説明した。
PAHは肺高血圧症の一種で、肺血管を構成する細胞が異常に増殖して血管壁が厚くなる肺血管リモデリングなどが生じることで肺血管が狭くなることで発症する。肺高血圧症は心臓から肺に血液を送る肺動脈の血液の流れが悪くなることで肺動脈の血圧が高くなる疾患。肺動脈の血圧が高くなると、心臓の右心室に負担がかかり、やがて右心不全に至る。国の指定難病で、認定患者は2023年度で4682人。