持田製薬・持田社長 アンドファーマへの経営参画「国産バイオシミラー供給体制の確立がシナジー」
公開日時 2025/09/26 05:00
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持田製薬の持田直幸代表取締役社長は9月25日、アンドファーマの株式取得について説明会に臨み、「当社の豊富なバイオシミラーの知見と、アンドファーマ子会社各社の製造能力を活用した、国産バイオシミラー供給体制の確立がシナジーと考えている」と強調した。同社がライセンス導入や研究開発を進め、日医工と製造面で連携して効率的な製造体制構築を目指す。「単独では実現できない規模でのバイオシミラー事業の展開を中長期的に目指していく」と力を込めた。先発メーカーとして参画し、後発品メーカーと手を組むことで、“新たな業界再編モデル”の構築を目指す。
◎先発メーカー×後発品メーカーの“新しい業界再編モデル” 持田製薬からアプローチ
「新しい業界再編のモデルとして、先発薬、後発薬、バイオシミラーを含む医薬品をより安定的に供給可能な、日本社会にとってなくてはならない医薬品企業グループを形成し、医療経済に貢献する」-。持田社長は協業後の姿をこう描いた。同社は9月22日、日医工、共和薬品工業、T’sファーマを傘下とするアンドファーマの株式20%を162億円で取得し、同社を持分法適用関連会社とすると発表した。10月1日に譲渡手続きを完了する予定だ。同社は新株主として経営に参画し、アンドファーマの取締役会へ取締役1名、日医工の取締役会へ取締役1名の派遣を予定する。医薬品企業グループの中で担うのは、「品質面を含めた製造・研究開発におけるアンドファーマ子会社との連携」だ。なお、同日アンドファーマの株式を20%取得した伊藤忠商事は原薬調達・サプライチェーン強化の支援を担うという。
株式取得に至ったいきさつについて持田社長は、「アンドファーマ子会社との提携が当社の中期経営計画、あるいは長期ビジョンの遂行に向けて意義があることから、アプローチを行ってきた。本件が指導するタイミングで、当社に正式に、声がけをいただき、取引の本格検討に至った」と話し、時期についての明言は避けたものの、同社からの声かけだったことを明かした。また、「バイオシミラーを中心に協業効果を最大化するには、技術面、人材面をはじめとして、両社の深い協業が必要で、スピードも必要だということで、資本参画の必要があると判断した」とも話した。
◎持田が研究開発、日医工と製造面で連携 BS市場「将来的に1兆円規模の成長余地」
協業による最大のシナジーとして見込むのが、「国産バイオシミラー供給体制の確立」だ。持田社長は「日本市場において当社は、薬価ベースでナンバーワンの売上を誇っている。これを今後も維持拡大をしていきたい」と意欲をみせる。バイオシミラーの市場規模としても、「将来的に、市場規模1兆円の成長余地がある」と話す。そのうえで、「バイオシミラーは、当社の実績、開発ノウハウと、アンドファーマ子会社の製造能力との掛け合わせにより、大きな協業メリットがあると見込んでおり、今後、両者で特に注力していきたい領域だ」と強調した。
協業の形としては、同社がライセンス導入や研究開発に取り組む一方、日医工などとは、主に製造面で連携することを想定する。日医工の充填ラインを活用するなどして効率的な製造を行いたい考えだ。一方で、原薬については「現時点では国内で取り組むのは、コストメリットを含めた多くの課題があると認識している」と表明。「まずは、充填工程などに両社共同で取り組み、効率的な製造体制を構築することを考えたい」と話した。原薬調達に強みを有する伊藤忠商事もアンドファーマの経営に参画するが、「原薬は特殊な製法で作られ、製造も非常に限られる。品質などを総合的に判断して、伊藤忠商事のルートで適切なものがあれば、一緒にやっていきたい」との考えを示した。
バイオシミラーの販売をめぐっては、「営業については当社が基本的に担うが、品目や分野によっては得意不得意があり、製品説明、ディテールが必要な品目もある。品目や分野によって営業形態が変わるため、今後協業しながら考えていきたい」と説明した。
◎先発メーカーの“クオリティカルチャー”実装もシナジーに
先発メーカーとして参画することでのシナジーも見込む。持田社長は、「当社が先発薬事業で培った開発力や品質管理能力と、アンドファーマ子会社各社が有する後発薬の事業基盤の融合により、効率的な製造管理体制を実現する」と強調する。
三石基代表取締役専務取締役は、「事業面でのシナジー、ガバナンス等々でのシナジーがある。共同開発や品目統合、品質管理など、事業面の貢献を想定している。資本参加をし、役員を派遣することによって、その議論が深くなり、シナジーの結果も大きい」と期待を寄せる。ガバナンス面については、「特に先発メーカーということで、いわゆる先発薬なりの品質や製造の考え方がある。こうしたクオリティカルチャーを実装していくことが、先発薬メーカー×後発薬メーカーの効率性も含めて、強くなっていく一つの方向性ではないか」と述べた。人材も含めて、品質管理に協力する考えも示した。
◎「後発薬事業の安定収益基盤を生かし、成長戦略を加速する好循環を形成」
同社は、25-27中期経営計画で重点テーマの一つとして「コア事業の収益力強化」を掲げており、今回の決定は、このうち、「後発薬・バイオシミラーによる医療経済的価値提供の具体的施策」に位置づける。持田社長は、「当社が、新薬メーカーとして、社会に新しい価値を提供する新薬に継続的に取り組むこと、及びバイオマテリアル事業や、核酸、医薬、細胞医薬といった成長事業へ、継続的に投資することに、何ら変更はない」と説明。「中長期的には、今回の施策により強化される後発薬事業の安定収益基盤を生かし、当社の成長戦略を加速していく、好循環を形成していきたい」と語った。「今回の投資は、成長投資の1つである戦略投資と位置づけている」とも説明。「研究開発費などの従来の投資計画が制限されることは想定していない」としている。