日医 25年病院緊急経営調査 経常利益の赤字額4倍増 施設あたり△1億640万円 危機的状況を訴え
公開日時 2025/10/23 04:50
日本医師会は10月22日の定例会見で、「2025年 病院の緊急経営調査結果」を公表し、病院全体の医業利益率は前年度マイナス5.2%からマイナス5.4%に、経常利益率はマイナス0.6%からマイナス2.6%にそれぞれ悪化したと報告した。近年の急激な物価高騰・人件費上昇、医業費用の伸びが医業収益の伸びを上回ったことが要因。城守国斗常任理事は会見で、9月17日に発表した診療所の経営状況(減収減益)を含めて、「多くの病院や診療所は立ち行かなくなる」と指摘。早期の補助金ならびに期中改定、コスト増に見合った診療報酬上の評価、入院料の手当てなど、医療機関の経営安定化に必要な施策の実行を国に対し求めた。
調査は、日本医師会A1会員の病院管理者(院長)を対象に6月21日~7月31日の日程でWebおよび郵送で行った。回答数は1318、有効回答は1211(25.1%)だった。
調査結果のうち、医業利益率、経常利益率ともに23年度に比べて24年度は悪化しており、経常利益の赤字額は前年度の4倍増となる1施設あたりマイナス1億640万円となっていた。また、医業利益の赤字割合は66.7%から69.5%に増加、経常利益の赤字割合は48.8%から62.2%に大幅に増加した。城守常任理事は、「赤字割合の増加は、24年4月のコロナ補助金等の廃止によるものであろうと推察される」と指摘。「そもそも補助金がない状態だと現状の診療報酬では病院経営が成り立たないということになる」とも強調した。
◎医業費用 給与費2.5%増、材料費4.8%増、委託費3.9%増
開設主体別にみると病院の医業利益率はいずれもマイナス。24年度の医業利益の赤字割合は、国立92.5%、公立96.6%、医療法人も63.9%が赤字で、公私とも極めて厳しい状況がうかがえる。医業費用の費目別増減率(全体)は、給与費は対前年度2.5%増、材料費4.8%増、委託費3.9%増、経費4.1%増で、特に、給与費、材料費の増額が経営をさらに圧迫している。このほか委託費(人材紹介手数料)の手数料は、23年度の654.8万円から24年度は706.6万円に増加(+7.9%)しており、特に医療法人での負担は大きく、24年度の100床当たり平均843.5万円だった。
◎城守常任理事「物価高騰、人件費の上昇に加えてコロナ関連補助金等の廃止の影響」
城守常任理事は、「物価高騰、人件費の上昇に加えてコロナ関連補助金等の廃止の影響によって極めて厳しい経営状況となった」と指摘。続けて、「診療所も経営が大幅に悪化しており、このままの状態だと多くの病院、診療所が立ち行かなくなり、患者さんを守る地域、医療の崩壊ということにつながる」と危機感を表明。「我が国の医療を守るため、医療機関の経営安定化に向けて、これを国に強く求めたい」と述べ、新政権への期待感も滲ませた。