日医・松本会長 高市政権発足に「スピード感持った支援を確信」と歓迎 自維連立合意書は「厳しい項目」
公開日時 2025/10/23 04:53

日本医師会の松本吉郎会長は10月22日の定例会見で、高市政権発足を受けて「医療機関の窮状を理解された上で、スピード感を持って対応し、医療を支えていただける新首相だと確信している」と歓迎した。一方で、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しなどを盛り込んだ自民・維新の連立合意書には、「非常に厳しい項目が並んでいる」と懸念を表明。今後の両党による検討状況を注視しながら「適切なタイミングで時期を逸することのないよう意見を述べていく」と強調した。
◎改定待たず経営改善・処遇改善の方向 「お願いしてきた要望と合致するものだ」
高市早苗首相は10月21日の就任会見で、医療機関や介護福祉施設の経営がひっ迫している現状に触れ、経済対策に最優先で取り組む姿勢を強調していた。松本会長は高市首相の発言に触れた上で、「現状の認識、危機感とともに共有できており、大変心強い」と言及。さらに、高市首相が診療報酬改定の時期を待たずに病院など医療機関経営の改善や処遇改善に向けて補助金を前倒しで措置する考えを示したことに対しても、「日本医師会がこれまで再三にわたりお願いしてきた要望と合致するものだ」と期待を込めた。その上で、「年を越せないほど困窮している医療機関も増えている。一刻も早く補正予算を成立していただき、しっかりと医療機関に届く支援をしていただきたい」と求めた。
◎自維連立合意書 「OTC医薬品に限らず、薬剤の自己負担については慎重にあるべきだ」
一方で、自民と維新が結んだ連立政権合意書では、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しなど日本医師会の主張と対峙する項目も並んだ。松本会長は自維連立政権への対応について、「基本的な違いはなく、私どもの主張も特に変わらない」とした上で、「OTC医薬品を保険給付から外すことには基本的に反対であり、OTC医薬品に限らず、薬剤の自己負担については慎重にあるべきだ」とくぎを刺した。
◎消費税増収分の活用求める 「税収増の恩恵を実感できていない」
さらに会見では、26年度診療報酬改定に向けて、賃金上昇や物価高騰への対応が不可欠だとするスタンスを改めて主張した。22年度と23年度の医療費の財源構成を比較し、税金でまかなう「公助」部分が金額では増加しているものの、全体に占める割合では37.9%から37.5%に減少していると訴えた。財源となる消費税増収分の活用も25年度までの3年で2兆円増加したが、社会保障の充実に対する増加分は900億円にとどまると主張。残りの大半は後代への負担のつけ回し軽減に充てられているとして、「国民は消費税による社会保障への恩恵を実感できていない。経済成長の果実である消費税収増を社会保障に活用すべきだ」(茂松茂人副会長)と強調した。
◎福田新副会長があいさつ 税制や医療機関経営などを担当

この日は、新たな副会長に就任した福田稠熊本県医師会長の紹介もあった。福田副会長は、参院選で当選した釜萢敏前副会長の辞任に伴う臨時代議員会で選任・選定された。産婦人科医の福田副会長は「産婦人科医療も含めて、我が国の医療は大変厳しい状況にある。松本会長のリーダーシップの下で果敢に乗り越えようと努力をしており、その一員として少しでも役に立っていきたい」とあいさつした。医療政策、医療保険のほか、税制や医療機関経営などの職務を担当する。