アステラス製薬 MIBC患者への「パドセブ+キイトルーダ併用療法」EV-303試験 治療転換の可能性も
公開日時 2025/10/27 04:50
アステラス製薬オンコロジー・デベロップメントヘッドのMoitreyee Chatterjee-Kishore氏は10月24日開催の「オンコロジーパイプライン・オンラインミーティング」に登壇し、筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者に対する抗体-薬物複合体パドセブを用いた第3相臨床試験「EV-303試験」(KEYNOTE-905)の結果を報告した。シスプラチン不適応のMIBC患者において、術前および術後の「パドセブ+キイトルーダ併用療法」は、標準治療単独と比較して、病勢進行または再発のリスクを60%、死亡リスクを50%低減すると強調。「MIBC治療のパラダイムシフトをもたらす重要なチャンス」と述べた。
◎EV-303試験 欧州臨床腫瘍学会(ESMO・ベルリン)発表 FDAも一変申請受理
EV-303試験の結果はドイツ・ベルリンで10月17日~21日に開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表された。また、同試験結果に基づき米FDAが「パドセブ+キイトルーダ併用療法」の生物学的製剤一部変更承認申請を受理し、優先審査指定の審査終了目標日を2026年4月7日と設定した。
◎シスプラチン不適応のMIBC患者 併用群、キイトルーダ単独群、手術単独群を3群比較
EV-303試験は、シスプラチンを用いた化学療法に不適応のMIBC患者、またはシスプラチンを用いた化学療法を拒否したMIBC患者を対象に、術前・術後の補助療法として「パドセブ+キイトルーダ併用療法群」、キイトルーダ単剤療法群、手術単独群を比較評価するもの。被験者は3群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、併用療法群と手術単独群を比較したEFS(無イベント生存期間)。主な副次評価項目は、併用療法群と手術単独群を比較したOSならびにpCR率(病理学的完全奏効)、およびペムブロリズマブ群と手術単独群を比較したEFS、OS、pCR率。
◎主要評価項目 併用療法群は手術単独群の比較で再発、病勢進行、死亡リスク60%減少
主要評価項目であるEFSに関して、併用療法群は手術単独群と比較して腫瘍の再発、病勢進行、死亡のリスクが60%減少(ハザード比[Hazard Ratio:HR]=0.40, 95%信頼区間[Confidence Interval:CI]:0.28-0.57; P<0.0001)。併用療法群のEFSは中央値には到達しなかった。手術単独群のEFSの中央値は15.7か月。2年後にイベントが発生しなかった割合は、併用療法群が74.7%だったのに対し、手術単独群では39.4%だった。
主要な副次評価項目であるOSに関しては、併用療法群は手術単独群と比較して死亡リスクが50%減少(HR=0.50, 95% CI:0.33-0.74; P<0.0002)。併用療法群はOSの中央値には到達しなかった。手術単独群のOSの中央値は41.7か月。2年後の生存率は、併用療法群が79.7%であったのに対し、手術単独群では63.1%だった。
併用療法群の安全性については、新たな安全性上の問題は確認されなかった。併用療法群における最も一般的な有害事象(AE)は、掻痒、脱毛、下痢、疲労、貧血。いずれも30%以上の発生率。原因を問わないグレード3以上のAEの発生率は、併用療法群が71.3%、手術単独群では45.9%だった。
◎「シスプラチン不適応のMIBC患者にとって新たな標準治療となる可能性がある」
Moitreyee Chatterjee-Kishoreヘッドは、「年齢、性別、喫煙状況、PD-L1の発現状況を含む事前に規定されたすべてのサブグループ、およびシスプラチン不適応、病期、地域に基づいて治験実施計画書で規定された層別グループにおいて、一貫したEFSおよびOSの改善がみられた」と報告。この試験結果から、「パドセブ+キイトルーダ併用療法は、シスプラチン不適応のMIBC患者にとって新たな標準治療となる可能性がある」と述べた。また、現在進行中のシスプラチン不適応のMIBC患者を対象とした「EV-304試験」の中間解析が2025年度下半期に実施されるとの見通しを明らかにした。