「失敗を恐れず挑戦を」、「一人ひとりの主体的な行動が原動力に」―。新年度を迎えた4月1日、製薬各社では入社式が行われた。経営トップのメッセージには、世界情勢の変化やAIの革新など複雑化する世の中で初心を大切にし、各社の原動力になってほしいという期待とエールの声が相次いだ。
◎第一三共・奥澤社長 アカウンタブル マインドセットで「主体的な行動を」

第一三共には、国内のグループ会社を含め320人が入社した。奥澤宏幸代表取締役社長兼CEOは入社式で、「私たちはいま、かつて経験したことのない成長とグローバル化のただなかにある」と説明。同社のリクシアナやエンハーツ、ダトロウェイなどのグローバルにおける急成長を背景に、2021年度で約1兆円だった売上収益が、25年度には2兆円を超える見通しだと語った。さらなる成長を支えるのは「人」だと強調。「すべての社員が、世界中でさまざまな課題に取り組みながら、いきいきと働くことができる企業文化のあり方」のための「One DS Culture」について、「自分のものにしてほしい」と述べた。
奥澤社長はまた、大事にしている言葉として「アカウンタブル マインドセット」を紹介した。「現状を打破し求める結果を達成するまで、自分自身も目の前にある問題の一部である、その当事者であると考え、主体的に行動しようとする意識のこと」と説明し、「皆さん一人ひとりの主体的な行動が第一三共の未来を創る原動力になる。私たちの医薬品を待つ世界中の人々のために、皆さんとともに働けることを心から嬉しく思う。これから一緒に未来を創っていきましょう」と呼び掛けた。
◎大塚HD・井上社長 「これから経験する全てを栄養に」
大塚グループは3月30日に大塚国際美術館(徳島県鳴門市)でグループ全体の入社イベントを開催し、キャリア入社を含めた新入社員568人が出席した。大塚ホールディングス井上眞代表取締役社長兼CEOは、同社の企業文化において重要な言葉として、▽自ら汗を流して実践することで物事の本質をつかむ「流汗悟道」、▽物事は成し遂げて初めて真理となる「実証」、▽ものまねをしないという「創造性」―の3語を説明。「これらは全てつながっており、物事の本質を掴むことで唯一無二のアイディアが生まれ、それを実現・実証することでイノベーションが生み出される」と語った。
また、「大塚グループの仲間になる皆さん一人ひとりの可能性は無限大だ。これから経験する全てを栄養にし、共に世界を目指して羽ばたいてほしい。皆さんの潜在能力に期待している」とエールを送った。
◎エーザイ・内藤CEO Fail first, Success late「まずは失敗して、成功を」
エーザイの入社式には、新卒入社80人・キャリア入社28人、合わせて108人が出席した。内藤晴夫代表執行役CEOは同社の使命を、「人々の健康憂慮の解消と医療較差の是正という社会善を効率的に実現するとともに、他産業との連携によるhhcエコシステムを通じて、日常と医療の領域で生活する人々の“生ききるを支える”こと」だと訴えた。そのため、製薬にとどまらず「創薬バリューサイクルと新領域バリューサイクルの双方を具備していかなければいけない」と指摘した。
さらに、イノベーションのためには「セレンディピティが必要だ」とし、「異なるグループが同じ目的のもとに連結して生み出す“集合知”から思わぬシナジーが生じることでセレンディピティに繋がる」と考えを述べた。最後に、「Fail first, Success late」(失敗から成功を掴み取れ)の精神を挙げ、「失敗は成功に向けた重要な知の獲得だ。まずは失敗して、そのあとから成功を掴み取ってほしい」と力を込めた。
◎中外製薬・奥田社長 「患者中心の価値観を心に刻み、自身の役割に誇りを」
中外製薬では、グループ全体で221人の新人が入社した。奥田修代表取締役社長CEOは、同社の原点について、「関東大震災の混乱の中、薬不足で多くの人々が苦しむ姿を目の当たりにした創業者・上野十藏の“世の中の役に立つくすりをつくる”という決意のもと、中外製薬を創業した。私たちは、この強い想いを中外製薬のDNAとして脈々と受け継いできた」と語った。さらに近年の、「地政学リスクの高まりやAIの技術革新など、社会や医療を取り巻く環境は急速に変化し複雑化している。こうした変化の中にあっても、真に必要とされるニーズを見極め、社会や患者さんに必要とされるイノベーションを生み出し続けることが、私たちには求められている」と訴えた。
そのうえで、「私たちだからこそ生み出せるイノベーションを通じて、世界の医療と人々の健康に貢献することが、中外製薬の存在意義だ。ぜひ“患者中心”という価値観を心に刻み、自身の役割に誇りを持って挑戦してほしい」と激励した。
◎小野薬品・滝野社長COO 「変革の原動力に期待」
小野薬品の入社式には新入社員42人が出席した。滝野十一代表取締役社長COOは24年に米Deciphera社をグループに迎え、開発・販売の基盤を強化していると強調。「現在、世界の患者さんに価値ある製品を届け続ける“グローバルスペシャリティファーマ”を目指して、取り組みを加速させている」と述べた。
新入社員に対して意識して欲しいことでは、▽何のために小野薬品に入ったのか、製薬企業を選んだかの自身の原点である「初心」、▽仕事の先で新しい薬を待っている「患者さん」、▽何事にも挑戦しようという姿勢である「挑戦」―の3点を挙げた。挑戦に関しては、「皆さんには当社の変革の原動力になってもらいたい」と期待感を示した。そのうえで、「小野薬品がグローバルスペシャリティファーマを目指していくにあたり、近い将来、その歩みを牽引していくのは、今日ここにいる皆さんだ。これからの活躍と挑戦を大いに期待している」と呼び掛けた。
◎塩野義製薬 「違いから学び、会社が次のステージに」

SHIONOGIグループの合同入社式には、新卒採用125人、キャリア採用1人の、合わせて126人が出席した。手代木功会長兼社長 CEOは、①学び続けること、②コンプライアンスとダイバーシティ―の2点についてメッセージを送った。”学び“について手代木社長兼CEOは、「社会人として最も大事なのは学び続けることだ」とし、新しい情報にアンテナを張ることで、「自らの、チームの、SHIONOGIグループの付加価値を上げていくことが必要だ」と述べた。
手代木社長兼CEOはまた、「自分の大切な人に見られても胸を張れる行動を取ることが、SHIONOGIグループとしてのコンプライアンス順守だ。ダイバーシティは、“みんな違って、みんないい”という価値観が本質で、目的が共有できていれば、違いは価値になる。違いがあるから学ぶことができ、会社が次のステージに進化することができる」と語った。
これに対し、新入社員代表・吉田康晟氏は、「創薬型企業として新たな領域へ挑戦し続ける姿勢と、“常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供する”という理念に共感し、多くの患者様の健康に貢献したいと考え、入社を決意した。初心を忘れず努力し、患者様ならびにSHIONOGIグループを必要とするすべての方々のために、全力で挑戦し続ける」と決意を述べた。
◎住友ファーマ・木村社長 「一人ひとりが専門性を磨き、覚悟持って挑戦を」
住友ファーマには、キャリア入社も含めた32人が入社した。木村徹代表取締役社長は、「当社は2年前経営危機に陥ったが、全社一丸となりⅤ字回復を遂げた」と胸を張った。26年は、「再建フェーズから成長フェーズへ移行する重要な年だ」と強調。オンコロジー領域で開発中のenzomenibやnuvisertibに期待感を示し、「それぞれブロックバスター候補として期待されており、今年は重要なマイルストンを迎える」と語った。
さらに、同社が26年3月にiPS細胞由来の再生・細胞医薬品として世界初の承認(条件及び期限付承認)を受けたアムシェプリについては、「我々自身の目指すグローバルスペシャライズドプレーヤー(GSP)の実践例と言える」と強調。「当社では、一人ひとりが専門性を磨き、覚悟をもって挑戦すれば、未来を動かすことができるのだ」と呼び掛けた。
「我々は再建によって、選び抜いた領域に力を集中させており、強みを徹底的に磨く段階だ。だからこそ、皆さんが活躍できる場は、山のようにある」と木村社長は述べ、「これから数多くの挑戦をされ、大きく成長をされることを願っている。一緒に頑張っていきましょう」とエールを送った。
◎日本新薬・中井社長 「失敗恐れず、人とのつながりを大切に」
京都市で行われた日本新薬の入社式には、新入社員52人が出席した。中井亨代表取締役社長は、「私たちは100年以上にわたり医薬品の研究開発に挑み、新たな価値の創出に挑んできた」とし、「今迎えている変革期は皆さんの力で会社をさらに進化させていく大きなチャンスだ」と強調した。
さらに、「失敗を恐れず思い切って挑むこと、決めつけずまず動くこと、人とのつながりを大切にする姿勢が、皆さん自身の成長を後押しする。一人ひとりが自分に、相手に、社会に本気で向き合い仲間と支え合いながら、私たちと共に、新しい“生きる”を世界へ届けていきましょう」と呼び掛けた。
◎ツムラ・加藤社長 「長期ビジョン実現へ 自主自立・スピード感を」
ツムラには、新卒の新入社員96人が入社した。同社の加藤照和代表取締役社長CEOは神奈川県小田原市で開催した入社式で、「初めての薬価基準収載から今年でちょうど50年を迎える」と節目を示した。企業経営の原点を「企業は人なり」と語り、「世界に手本のない“漢方・中薬”ビジネスに挑むからこそ、自ら新しい道を切り拓き、誰からも信頼される“人”の集団、“漢方薬的組織”を目指している」とした。
また、4月から医療用医薬品事業、ヘルスケア事業、中国事業をそれぞれ独立採算制とするカンパニー制を導入したことに触れ「長期経営ビジョン“TSUMURA VISION“Cho-WA”2031”の実現に向け、スピードを上げて取り組んでいく。新しく仲間になった皆さんにも、自らを革新する覚悟で、自主自立・スピード感を持って仕事に取り組むことを期待している」と激励した。
◎沢井製薬・中手社長 「医薬品をお届けする覚悟を」
沢井製薬は、グループ会社のトラストファーマテックと合同で入社式を開催。沢井製薬には新入社員189人が入社した。同日付で就任した中手利臣代表取締役社長は、「この挨拶が私の社長としての最初の仕事だ」と第一声を発し、「今の新鮮な気持ちを大切にこれから一緒に取り組んでいきましょう」と呼び掛けた。
さらに、新入社員に向け3つの「想い」を述べた。①私たちの「使命」:真心を込めた医薬品を通じ、人々の健やかな暮らしを実現する、②私たちの「挑戦」:創造性を追求し、革新と協調により社会と共に成長する、③私たちの「願い」:お役に立ちたいという心を持ち、なくてはならない存在になる―、と挙げた。「健やかな暮らしを守る使命も、付加価値を生み出す挑戦も、信頼への願いも、そのすべてが患者さんの手元に届く一錠に凝縮されている。医薬品をお届けする覚悟を忘れないでほしい」と訴えた。
最後に、「これから共に、“なによりも患者さんのために”を追求していきましょう。皆さんの活躍を心から楽しみにしています」と声援を送った。
◎東和薬品・吉田社長 「一人ひとりが研鑽を 10年後の中核人材に」
東和薬品の入社式には、新入社員118人が出席した。吉田逸郎代表取締役社長はジェネリック医薬品が「重要な社会インフラになった」と表現。同社では175億錠の生産体制を構築し、25年9月に全面的な生産が可能となった。吉田社長は「多様な観点から生産体制の構築を行っていく」とした。また、26年1月に先発医薬品企業との協業を発表し、「先発が蓄積してきた技術やノウハウが失われないよう継承していくことが大切だ」と考えを述べ、「“社会を支える基盤産業”とするために、安定供給と技術継承という二つの軸から社会に貢献していく」と決意を示した。
さらに、「みなさん一人ひとりが研鑽を行い、10年後の東和薬品グループを担う中核人材として活躍していただけることを心から楽しみにしている」と期待を示した。
◎旭化成・工藤社長「世界の人びとのいのちとくらしに貢献」
旭化成グループは348人の新入社員を迎え、宮崎、東京など国内5つの地区と製造拠点で入社式をハイブリッド開催した。工藤幸四郎代表取締役社長は、「我々が今生きているこの世界も過去に経験したことのないような不確実性の高い時代にある」と指摘。「決して見過ごしてはならないことは、数多くの罪なき市民が命を落とし、日々のくらしが脅かされているという厳然たる現実だ」としたうえで、同社のグループミッション「私たち旭化成グループは、世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します。」を改めて強調。「皆さんは、是非とも、この理念体系に込められた思いや意味をしっかりと考えていただきたい」とした。
また、仕事への向き合い方については、「担当する仕事に、焦らず、腰を据えて取り組み、全力で向き合ってほしい。会社も上司も先輩も、全力で皆さんを支援していく」と呼び掛けた。
◎帝人・内川CEO 「逃げずに目の前の仕事に向き合う」

帝人の入社式には新入社員96人が出席した。内川哲茂代表取締役社長執行役員CEOは、「自分は何のために働くのか」をテーマに挨拶。自身の入社時は「明確な夢や大きなビジョンがなく、研究、営業など自分の思い通りにならないことの連続だった。“なぜ自分がこんな役回りなのか”と思うこともあったが、“人生は、あとから意味がついてくる”」と強調。「“思っていた仕事と違う”などと感じる場面に必ず直面すると思うが、そのときに答えを出さなくて良いので、逃げずに手を抜かず、目の前の仕事に向き合って欲しい」と語った。
また、AIやデジタル技術の進歩により情報がすぐ手に入る時代だからこそ、「何を知っているかよりなぜそれをするのかを語ることができるかどうか」が重要だと語った。最後に、「皆さんの成長と挑戦を心から期待している。一緒に、未来の社会を支える会社を創っていきたい」と思いを述べた。