【検証・2026年度薬価改定】 長期収載品依存ビジネスモデルからの脱却迫るも 「転換進む」企業は3割に
公開日時 2026/04/01 04:54
長期収載品の適正化に重点が置かれた2026年度薬価改定。G1の適用前倒しやAG・バイオAGの薬価見直しを盛り込み、長期収載品に依存するビジネスモデルからの脱却を迫った。革新的新薬薬価維持制度(PMP)の累積額控除額もヒット商品であればあるほど各社の経営に響くことも26年度薬価改定から見て取れた。新薬メーカーの退路を断ち、継続的な革新的新薬創出へと舵を切る決断を迫ったと言えそうだ。一方で、ミクス編集部が製薬各社に行った調査では、26年度薬価改定を踏まえ、ビジネスモデルの「転換が進む」と回答した企業は3割にとどまった。長期収載品の適正化の厳しさと裏腹にイノベーション推進のメッセージが薄い26年度改定に対する製薬各社の戸惑いが浮かび上がっている。
(ミクス編集部デスク 望月 英梨)
“イノベーション推進”を強く打ち出した24年度薬価改定。それから2年を経て、製薬各社の行動変容は起きたのか。ミクス編集部が製薬各社に協力を求めて行った調査結果から浮かび上がるのは、むしろ減退する製薬各社の意欲だ。
◎浮かび上がる行動変容減退 世界に先駆け新薬開発は29ポイント減、国内試験20ポイント減
創薬力強化に向けて、次回改定までの行動変容を尋ねた結果を経時的(24年度調査と26年度調査の対比)にみてみたい。「世界に先駆けた新薬の開発(品目数)」は29ポイント減(24年度回答46%、26年度回答17%)。「国内試験(日本を含む国際共同試験含む、実施数、PhaseII以降)」は23ポイント減(24年度回答65%、26年度回答42%)。「新薬収載実績(収載成分数)」、「革新性のある新薬の収載実績(収載成分数)」もそれぞれ9ポイント減(両設問とも24年度回答42%、26年度回答33%)となった。
26年度薬価改定では、業界の悲願だった市場拡大再算定・持続可能性特例価格調整の共連れ廃止が実現した。市場性加算(Ⅰ)と小児加算の併加算を可能とされた意義も大きい。「より革新的あるいは希少疾患や小児を対象とした開発品のポートフォリオの充実に努めていきたい」(内資)と歓迎する声も寄せられた。
改定時加算として、「市販後に国内の標準的治療法となった既収載品」を追加。市販後に、診療ガイドラインの記載から国内の標準的治療法になったと薬価算定組織が認めた場合加算が取得できることも盛り込んだ。ビロイ点滴静注用300mg(アステラス製薬)が加算の適用を初めて受け、2.5%の引上げを受けた。長期収載品の適正化はイノベーション推進とは表裏一体の関係でもある。
しかし、製薬各社の受け止めは少し異なるようだ。「24年度は新薬のイノベーションをより評価するポジティブな改定だったのに対し、26年度は再度ネガティブな改定に戻った印象」(外資)、「24年度薬価制度改革におけるイノベーションを評価する方向性が引き継がれず、非常に残念な改定内容」(外資)、「これ以上、他国から遅れを取らない国の基幹産業に対する政策を明示することを要望する」(外資)など、外資系企業を中心に厳しい言葉が並ぶ。
◎外資系企業は全社がビジネス転換 「進まない」と回答
実際、26年度薬価改定を踏まえて、高い創薬力を有するビジネスモデルへの転換が「進む」と回答した企業は27.6%(内資8社)にとどまった。回答した外資系企業9社はすべて「進まない」と回答した。
「進む」と回答した企業からは、「イノベーション評価の見直しや加算制度の改善などは、企業が革新的新薬の創出に注力する動機づけとなり得る。希少疾患や難病領域における創薬を通じて、持続的に価値を提供できる体制の強化に取り組んでいく」(内資)、「24年度薬価制度改革からの流れを汲み、取り組んでいる。パイプライン数や上市品目数の目標値を引き上げた上で経営計画にも具体的に落とし込んでおり、今後3年間は従来の約5倍のスピード感での新薬上市を予定している」(内資)と意気込む企業もあった。「長期収載品の締め付けだけでなく新薬のイノベーションの評価も充実していただきたい」(内資)との声もあった。
一方で、「進まない」と回答した企業からは、「イノベーション評価がまだ不十分で、前向きにビジネスモデルを転換する理由とならない」(内資)、「市場拡大再算定の実施は継続されること、業界として廃止を要望している中間年改定の実施が骨子に明記されたことはイノベーション評価と逆行する」(外資)などの声が寄せられた。
◎ドラッグ・ラグ/ロスの解消「悪化」が4割 持続可能性特例価格調整、中間年改定背景
26年度薬価改定のドラッグ・ラグ/ロス、創薬力強化への影響も聞いた。ドラッグ・ラグ/ロスの解消は「変化なし」が50.0%(回答24社中12社)と最多。「悪化する」が37.5%(9社)にのぼり、「解消に向けて動く」は12.5%(3社)にとどまった。
「解消するほどの影響力はない」(内資)など「変化なし」との回答が半数を占めたが、「持続可能性特例価格調整への名称変更や費用対効果評価制度の厳格化などが非常にネガティブなメッセージになる」(内資)、「米国の最恵国待遇価格政策(MFN)による日本の薬価へのプレッシャーが高まっている中、外国平均価格調整でドイツでの価格交渉後の価格を参照する制度改定は、ドラッグ・ラグ/ロスの解消の実現を目指して実施された24年薬価制度改革に逆行する」(外資)、「中間年改定を実施したことにより、海外本社の受け止めとして日本政府が医薬品産業振興に取り組んでいると認識していない」(外資)と批判が集中。少数ながら、「市場性加算(Ⅰ)と小児加算の併加算が可能になる等、特に小児開発のインセンティブが強化されており、より小児医薬品のドラッグ・ラグ/ロスの解消につながるのではないか」(内資)との見方もあった。