欧米メガファーマの対米投資 合計18社で4000億ドル規模に拡大 トランプ大統領”公認“投資リスト公開
公開日時 2026/03/27 04:52
欧米系メガファーマによる対米投資の総額が4000億ドルを超えた。トランプ大統領は最恵国待遇制度(MFN価格)による薬価引下げに加え、対米投資と引き換えに関税障壁の猶予を製薬各社との直接交渉で迫っている。ホワイトハウスが今年3月10日に公開したトランプ大統領”公認“投資リストによると、ファイザーやアストラゼネカなどグローバルメガファーマの投資実績は18社に及び、多くが生産製造拠点および研究拠点の整備と、それに伴う雇用創出をあげた。最大の投資企業はファイザーの700億ドル、次いでジョンソン・エンド・ジョンソンの550億円となった。
◎ファイザー700億ドル、ジョンソン・エンド・ジョンソン550億ドル、AZとロシュともに500億ドル
ホワイトハウスの公開した投資リストのうち、製薬企業の対米投資をみてみたい。最高額はファイザーの700億ドル、次いでジョンソン・エンド・ジョンソンの550億ドル。3位以降は、アストラゼネカとロシュ(ジェネンテック)がともに500億ドル、ブリストルマイヤーズが400億ドル、GSKが300億ドル、イーライリリー・アンド・カンパニーが270億ドル、ノバルティスが230億ドル、サノフィが200億ドル、ギリアド・サイエンシズが110億ドルとなる。
一方、対米投資が100億ドル未満の企業では、メルクが90億ドル、UCBが50億ドル、リジェネロン・ファーマシューティカルズが30億ドル、アムジェンが22億ドル、バイオジェンが20億ドル、CSLが15億ドル、アボット・ラボラトリーズが5億ドルとなった。今回公表した投資リストにはトランプ大統領がMFN価格への合意を迫り書簡を送付した製薬企業17社以外の製薬企業も含まれている。
◎他産業の投資額は桁違い AppleとMetaがともに6000億ドル、NVIDAが5000億ドル
製薬以外の他産業をみると、1社あたりの対米投資トップはAppleとMetaの6000億ドル、次いでNVIDAが5000億ドル、Amazonが3400億ドル、IBMが1500億ドルで、いずれも製薬産業に比べて桁違いの投資額になっている。
◎日本企業 ソフトバンク、トヨタ自動車、日立、三菱。日本の製薬企業名は見当たらず
リストから日本企業を探すと、ソフトバンクと米国のOpenAIおよびOracleが主導するプロジェクト・スターゲイトは米国を拠点とする人工知能インフラに5000億ドルを民間投資する。トヨタ自動車は、今後10年間で米国への投資額を従来予想より100億ドル増やす計画を発表。米国南部5州にわたる製造工場に9億1200万ドルを投資、さらにウェストバージニア州の工場におけるハイブリッド車生産の増強に向けた8800万ドルの投資が含まれる。ただ気になるのは日本の製薬企業名が含まれていないこと。あくまでホワイトハウスが公開したリストという位置づけだが、リストの表題には「トランプ効果」と銘打っていることを踏まえると、このリストの掲載された企業こそが、トランプ大統領の公認企業という位置づけにもなる。
◎対米投資を決断した製薬企業の狙いとは
対米投資を決断した製薬各社の投資案件を見てみたい。アストラゼネカは25年7月に「2030年までに米国に500億ドルを投資する」と発表した。同社が投資の要と位置づけたのは数十億ドル規模の新たな製造施設だ。経口GLP-1やアルドステロン合成酵素阻害薬バクドロスタット、経口PCSK9および低分子化合物の複合製剤など、同社にとって革新的な体重管理および代謝関連製品ポートフォリオ向けの医薬品原料を生産する計画だ。
2月10日に英国本社で2025年通期業績説明会に臨んだパスカル・ソリオCEOは、トランプ大統領のMFN協定に合意したことを報告し、少なからず業績影響があるとの認識を示しつつも、同社の掲げる「2030年までの売上収益目標800億ドル達成」は実現可能だと力説した。
イーライリリー・アンド・カンパニーは、新たに4つの医薬品製造拠点を米国内に建設する計画を明かした。同時に、「新拠点においてエンジニア、科学者、オペレーション担当者、実験技師など、高度なスキルを持つ人材3000人以上の雇用を創出する」と見通した。ノバルティスも同様に、「主要医薬品の100%を米国内で生産できる体制を整える」としており、ノバルティス社内で約1000人の新規雇用、米国全体で約4000人の雇用を創出する計画を打ち出している。
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、今後4年間で製造、研究開発、技術に550億ドルを投資する。これにはノースカロライナ州ホリー・スプリングスにある富士フイルムの敷地内に建設する20億ドル規模の専用製造施設も含まれる。
ホワイトハウスは今回の投資リスト公表にあたり、「アメリカ産業の活性化に対するトランプ大統領の揺るぎない取り組みは、米国の製造業、生産、イノベーションへの数兆ドル規模の投資を促進しており、その数は増え続けている」と強調した。リストは今後も随時更新する方針。