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中医協総会 C肝薬ハーボニーの高薬価で算定方式に各側から疑義

公開日時 2015/08/27 03:51

中医協総会は8月26日開かれ、新薬10品目の薬価収載について了承したが、C型肝炎治療薬・ハーボニー配合錠(一般名:レジパスビル/ソホスブビル)が高薬価であることをめぐり、診療側・支払側双方から疑義が示された。診療側の中川俊男氏(日本医師会副会長)は、算定根拠となった類似薬効比較方式の「ルールを早急に見直すということを決めてほしい」と求めた。これに対し、厚生労働省保険局医療課の中井清人薬剤管理官は、「次期薬価制度改革の中で検討したい」と述べた。また、市場拡大再算定の見直しも改めて検討する方針も示された。


ハーボニー配合錠の1日薬価は、8万171.30円。同剤は、ダクルインザ錠60mg(1日薬価:9186.00円)とソバルディ錠400mg(6万1799.30円)を比較薬に、類似薬効比較方式Ⅰで算定されている。抗がん剤などと同様、「一定期間の使用が設定されている医薬品」とみなされ、1日薬価ではなく、1クールをベースにすることに算定される。つまり、1クールあたりのハーボニー配合錠の薬価と、ダクルインザ錠とソバルディ錠を足し合わせた薬価を合わせ、これをもとに1日薬価を算定することになる。今回のケースでは、投与期間がダクルインザ錠で24週、ソバルディ錠で12週であることから、投与期間が12週のハーボニー配合錠の1日薬価は結果として、ソバルディの1日薬価に、ダクルインザ錠の1日薬価を2倍にして足し合わせたように見える。


中川委員は、「比較薬としてダクルインザがあるが、投与期間が12週ですむのに倍の薬価がついている。非常に不明瞭な形で薬価がついていることについては、明確な説明責任がある」と厚労省側に説明を要求した。これに対し、厚労省は1982年の「新医薬品の薬価算定に関する懇談会報告書」に根拠があると説明。薬価算定組織の清野精彦委員長は、「決して新しいルールではないが、こうした算定をしているということはご理解いただかないといけない。患者さんが非常に多いと思うので、検討していただきたい」と述べた。


これに対し、中川委員は、「透明性は、非常に高くない。患者さんが待ち望んでいるから早く承認しないといけないという空気を感じる。長い目で見ると、きちんと決めないと禍根を残すと思う」と指摘。1日薬価をベースとした薬価算定ルールへの変更を検討するよう求めた。診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)も、「30年前と同じルールを適合するのは時代遅れ。事務局として早急に案をまとめていただいて、性急に提案いただきたい」と述べた。


収載の見送りも提案されたが、支払側の花井十伍委員は、「次の機会というのを賛同しがたいくらい、患者が待っている。遅らせたという十字架がきつい」と述べ、薬価収載を求めた。厚労省の保険局医療課の宮嵜雅則課長は、「現在適用されているルールで算定している。これを否定することは、薬価に基づくルール算定そのものを否定することになる。いまのルールで算定しているものを変えるということは制度そのものを否定することになる」と再度理解を求め、議論は収束。最終的に薬価収載が承認されることとなった。


高額薬剤であることから、市場の拡大、薬剤費増加の懸念も示されたが、厚労省側は、薬価改定時に市場拡大再算定のルールがあると説明。市場拡大再算定をめぐっては、現行ルールでは、原価計算方式で算定された医薬品で市場が原則2倍以上となった場合に限定されており、ハーボニー配合錠は対象外となる。ただ、薬価算定組織からは類似薬効比較方式まで拡大する見直しも提案されているところ。同日開かれた薬価専門部会では、製薬業界側から市場拡大再算定の見直しに反対する声が圧倒的だったが、薬価算定組織の清野精彦委員長は、「市場拡大再算定については検討していかないといけない。中医協の先生方にもご検討いただきたい」と改めて意見を表明した。


そのほか、同剤のピーク時の予想投与患者数が約1万8000人とされたことについて、規模が小さいのではないかとの指摘もあったが、すでにダクルインザが市場にあること、他剤の上市も予想されることなどから、この推計となったと説明された。



◎ 日米欧製薬団体 新薬創出加算の継続求める PhRMA、EFPIAは市場拡大再算定の撤廃求める


薬価専門部会は26日開催され、新薬創出加算や先駆導入加算、基礎的な医薬品の安定供給など、次期薬価制度改革に向けた論点について、日本製薬団体連合会(日薬連)、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、日本製薬工業協会(製薬協)からヒアリングを行った。


新薬創出加算をめぐっては、日薬連、PhRMA、EFPIAの日米欧3団体が、それぞれの立場から現行ルールでの維持・継続を求めた。日薬連の野木森雅郁氏(アステラス製薬会長)は、後発医薬品(GE)80%を見据え、長期収載品のシェアの大幅な減少すると見通し、「特許期間中の新薬から研究開発原資が確実に確保できる仕組みと新薬評価の拡充が重要」と述べた。PhRMAのトニー・アルバレズ在日執行委員会委員長は、新薬創出加算の導入後にドラッグ・ラグが短縮されたことや、アンメット・メディカルニーズの高い医薬品をはじめとした国内申請品目の増加を示し、「新薬創出加算は真に医療に貢献する新薬の研究開発投資を促進する効果を上げている」と主張した。EFPIAのカーステン ブルン会長は、「日本が魅力的な市場であるためには、イノベーションの評価が大事」と述べた。その上で、現在の試行的導入という状況が不安感を招く可能性を指摘し、新薬創出加算の継続を早期にシグナルとして発信することで、「ますます日本にイノベーション、外国の投資を引きつけることにつながる」と述べた。


これまで新薬創出加算の制度化を求めてきた経緯があり、“継続・維持”へと主張が変化したことについて、日薬連の野木森会長は「わたくしどもの気持ちは制度化していただきたいということには変わりはない。制度化が試行との違いは、将来をちゃんと予測できる。安心材料というのは言い過ぎかもしれないが、そういう要素もある。ただ、そのほかの要望もあり、優先順位から控えめ。今回は少なくとも継続で臨みたい」と述べた。
 

先駆導入加算については、日薬連が加算要件の見直しと加算率の拡大を要望したほか、EFPIAからは先駆け審査指定制度の品目が確実に加算対象となることへの要望が出された。


市場拡大再算定をめぐっては、PhRMAが「革新的で成功した新薬に対するペナルティにほかならず、強く反対する」と意見表明。「このルールはそもそも撤廃されるべき。少なくとも類似薬効比較方式で算定された医薬品について適用されるべきではないと考える」と主張した。同様に、EFPIAも市場拡大再算定の廃止を求めた。


基礎的医薬品については、日薬連が薬価を維持するルールの導入を要望。基礎的医薬品のイメージを質され、「日常診療で、確実に頻回に使われている薬。処方件数が多いということが非常に大事」との見方を示した。


そのほか、2017年度の消費税増税に伴う薬価改定については、3団体すべてから反対の姿勢が示された。「増税分を一定の調整を加えた上で現行薬価に上乗せした1989年と同様の対応を求める。消費税増税対応という趣旨の範囲内での限定的な薬価対応とする必要がある」(PhRMA)などの意見が出された。
 

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